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父と息子の異世界漂流  作者: 佐藤 学
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第89話 ヘルムートの出生

ラナールと護衛は家へ招かれた。ただ、ヘルムートの母は、自分達が何の目的で来たか、分かっている様だった。


「もう、フリッツさんの名前は騙らなくていいので・・・それで、そちらの方は、リンデン国の貴族の方ですか?」

護衛が構えたので、警戒を解く様に伝え、下がらせた。どうやら、最初から、バレていた様だ。

「上手く変装出来たと思ったんですが・・・」

「そうですね、ただ、やっぱり外見を変えても、貴族か平民かの見分けはつきます。」

予想よりも母親が切れ者な様だ。注意しないといけない。

「これは失礼をしました。お名前はお伝え出来ませんが、さるお方よりの依頼で、お話しを聞きにきました。」

「申し訳ございませんが、誰から息子の事は聞きましたか?」

ヘルムートの母は、警戒している様だ。

「そうですね。・・・カマル家の使用人から聞きました。」

ヘルムートの情報は、その使用人からだった。

「彼が・・・なんで・・・」

「どうやって、情報を教えてもらったか、その方法自体はお話し出来ません。でも、拷問等、手荒な事はしておりませんよ。まあ、その方法だと、本人は拒否出来ませんし、喋った事自体、覚えていないと思いますよ。」


私は父と同じで、祖父の精神操作魔法が使えた。ただ、この魔法は、魔力を持った者には効かないという、弱点がある。この世界では、大抵の者は魔力があり、魔力を持たない日本人か、魔力が枯渇した者ぐらいにしか効かなかった。世間では、奴隷に言う事を聞かせるだけの魔法とも言われていた。


ただ、そこを解決する方法を活動家軍は編み出していた。

これは、私と父、そして、活動家軍の専属薬師であるノーム族のジャマルしか知らない事だ。


ノームはエルフに匹敵する程の、魔力に長け、薬学の知識も豊富な種族である。アリーサと共に色々な研究をしており、いくつか特殊な薬効を持つポーションを開発している。


血液補填薬。

失った血液を補填する経口薬。本人の血液の代わりとなり、体内へ浸透する。


魔力付与ポーション。

日本人などの魔力を持たない者へ、一時的に魔力を付与する効き目があり、緊急時、回復魔法が効く様にする効果がある。ただし、魔力を持った者に比べ、回復魔法の効果は少なく、緊急時の状態維持などに使われる。


体力回復ポーション。

魔力を持たない者でも、体力等を回復させる効果を持つ。


様々な種類があり、アリーサでも、体力回復ポーションしか自作は出来ず、ジャマルから、ほとんどを作成してもらっている。


ジャマルは、魔力付与ポーションを開発した際の副産物として、魔力を一時的に枯渇させるポーションも開発していた。このポーションは、形勢を逆転させる切り札として、期待されていたが、効果はほんの一時であり、戦場で相手の魔力を失わせるという使用方法は出来なかった。ただ、実験の結果、飲ませてすぐに精神操作魔法を使用すると、魔力を持った相手でも、精神を操れる事が判明した。


今回、ティモと呼ばれる使用人から情報を引き出した方法。それは、洋介ようすけ、とわ、私が姿を消した状態で、ティモを拉致。とわの魔法シャッターでガレージ内へ引き込み、薬を無理やり飲ませて、私が精神を操るという方法だった。ティモから情報を引き出した後、記憶を改ざんし、元に戻した。拉致、監禁はしたが、拷問はしていないので、まぁ嘘は言っていないかな。


「使用人のティモとあなたは、カマル家で使用人をしていた。それに、あなたはティモと恋仲であり、将来一緒に暮らす予定だったみたいですね。ある日、当主のカマルは、あなたに無理やりな肉体関係を迫り、あなたは、どうする事も出来なかった。そして、あなたは当主の子供を妊娠。立場の弱い女性を、もの扱いするクズ貴族の典型ね。虫唾が走るわ。・・・すみません、話しが逸れました。えー、その後、使用人のあなたが妊娠したと知られれば、カマル当主の妻から、殺される可能性が高く、カマル家の屋敷で執事をしているティモの父に相談。ティモの父は、あなたが不手際を働いたという事にして、解雇し、秘密裡に市井へ逃がしてくれた。そこまでは分かっています。」

「・・・」

「それで、確認したい事ですけど、ヘルムートさんの事は、ティモとティモの父親以外に誰か知っていますか?」

「・・・」

「すみません。あなたから、無理やり聞き出す事は出来ます。ただ、あなたの意思から、その事を聞きたいんです。教えてくれませんか?」

「・・・どうやら、ティモが、私を裏切ったわけではない事は安心しました。・・・私から聞き出して、何をするつもりですか?」

「あなたは聡明な方です。もう、分かってるんじゃないですか?」

「・・・息子を・・・カマル家の当主に・・・」

「そうです。あなたの息子であるヘルムートさんには、カマル家の当主になって頂きたいと私達は考えています。そして、当主になった息子さんを、あなたとティモ親子に支えて頂きたいのです。」

「そんな事は無理なんじゃ・・・」

「あなたは、私の依頼人の事、検討ついてるんじゃないですか。この国で逆らえる者は、ほぼいないぐらいの人です。」


ヘルムートの母は、一言、小さな声で「王」と口に出した。


「それ以上、口にするのはやめましょう。」

「はい・・・分かりました。・・・他に息子の事を知っているのは・・・前カマル当主であります、ギド様です。」


前カマル当主は、今の当主に比べ、世間からの評判も良く、出来た人物だと話しは入ってきている。息子と違い、野心はなかった為、カマル派は団結心は強かったが、今より、派の人数、勢いはなかったらしい。現在は、高齢であり、息子とは離れ、別の屋敷に暮らしている。


予想外のカードが出てきた。これが、切り札となるか、まだ分からない。

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