第83話 ローガーの軍
活動家軍基地の指令室、ローガーに付き添いのレナ、フレデリクセンが座っていた。
指令室の部屋と言っても、質素であり、贅沢な調度品はない。自分も質素倹約を心に決めており、好感が持てる部屋だった。
「ローガー様、この様な部屋で大変申し訳ございません。」
「いや、そんな事はないぞ。」
二人でお茶を飲んでいるが、レナはいつでも動ける様に座らず、自分のそばで立ち、護衛をしてくれている。自分の様な、継承権を剥奪された者に・・・有難い事だ。
「フレデリクセン殿、それでは今後の事を話したいのだが。」
「すみませんローガー様、その前に一ついいですか?」
「何かな。」
「このたびは、お越し頂き、誠に、あり難き幸せにございます。そして、今回の決断、有難うございます。」
「何、貴殿から話しがあった時から、この日まで、心待ちにしてたよ。」
「ローガー様、お願いしたい事があります。」
「ああ。」
「私共をローガー様の軍に加えて頂けませんでしょうか?」
「・・・」
「活動家軍に所属する者、全てがローガー様の元で戦える事を希望しております。」
彼らは、軍の中心となる柱として、自分を希望しているのだろう。王家の血筋、境遇、考え方など、悪く言えば、都合が良い存在なのだ。ただ、差別が蔓延をしているあの国を今のまま放っておいて、いい訳がない。
覚悟を決める必要があるのだろう・・・が、覚悟はあの日から決まっている。
「分かった。フレデリクセン、頼りにしているぞ。」
「有難うございます。一同、お世話になります。」
「うん。」
「お願いしたい事が、もう一つありまして・・・すみませんが、ラース殿を呼んできますので、失礼します。」
フレデリクセンが部屋から出ていった。
その様子をレナが目で追う。フレデリクセンが外に出るとレナは自分に話しかけた。
「ローガー様、失礼ながら、担ぎ上げられたという事は分かっておられますか?」
「分かってるよ。でも・・・覚悟は前から決まってたんだから、いいんじゃないかな。戦う力も手に入ったからね。」
「でも、活動家軍に、シュミール国を打倒する程の力は・・・。」
「真正面から戦えばね。この軍が優れているのは、どこだと思う?」
「うーん、何でしょうか?攪乱が得意という所以外は・・・。」
「まぁ、半分正解かな。この軍が優れているのは、密偵部隊と情報伝達の速さが、シュミール国と比べ、はるかに優れている所だね。だから、攪乱も上手くいくんだ。」
「それが優れている点ですか?」
「そういう力は、簡単には手に入らないからね。っと、戻ってきたかな。」
フレデリクセンがラースとエルフの従者を連れてきた。ラースは杖をつき、足を引きずりながら歩いていた。顔半分は、布で隠しており、半身に大きな怪我をしたと思われる。自分の前に来ると、頭を下げた。
「エルフの長、ラースと申します。他種族連合軍のリーダーも務めさせて頂いております。」
「いや、ご高名なラース殿にお会いでき、こちらこそ光栄です。ローガーと申します。それよりも、お座りになって下さい。」
「申し訳ございません、こんな身体で。失礼します。」
「いや、気にしないで下さい。」
ラース殿とフレデリクセンは席につき、従者は横に立つ。レナは、ラース、従者から目を離さない。それはそうだ、二人からとんでもない威圧感を感じる。いや、強者の雰囲気というか。
ラースが話しを切りだした。
「フレデリクセン殿から話しは聞いています。単刀直入で申し訳ございませんが、私共、他種族連合軍も加えて頂ければと。」
「・・・あなた方は、様々な種族が在籍されており、考え方も違うと思います。納得しない者もいるでしょう。」
「いえ、他種族にも話しは通ってあります。問題ございません。皆、喜んで従うでしょう。」
「・・・そうですか。・・・分かった。すまんが、力を貸してくれ。」
「有難うございます。何分、この身体ですので、エルフ族に関しては、ここに居る私の副官を務めるピケが代理を、他種族連合軍の統括は、リザートマンのクリシア女王にお願いしてあります。改めまして、一同、宜しくお願い申し上げます。ローガー様。」
「ああ、こちらこそ、頼む。」
中と外の中核が軍に加わった。後は、どれだけ戦力を増やせるか、だな。