第80話 これからの事
公彦と紘子が部屋から出て、屋敷のメイドに声をかけると、コーム領主様の元へ伝わった。改めて、話しをしようという事になり、次の日、盗聴防止の別室にコーム領主様と紘子が話しをする事になった。公彦は、洋介、とわと一緒に話しをしていた。
洋介が茶化してくる。
「ゆうべは、お楽しみでしたね。」
昔からあるゲームのセリフに、苦笑いをするしかない。
「やめろよ。」
「俺も混ぜてくれればいいのに。」
「・・・」
そのセリフも、やめてくれ。
「まぁ、身も心もスッキリしたんじゃないっすか?いい顔してますよ。」
二人の顔を見ると「別の意味でさらに重い事になったんだが」とは言えなかった。
「なぁ、二人共。・・・帰りたいと思うか?」
洋介と、とわはお互いの顔を見合っている。
「私は、あんまりかな。ちっちゃい頃、こっちに連れてこられて、正直、日本という所自体、良く分かってないんだよね。」
こちらで生まれた久美ちゃんと同じ様な感じか。
「妹分が、そういう事みたいなんで、俺もこっちっすかね。兄貴と幸ちゃんが一緒なら「帰ろうかな」と思うんですけど、向こうに戻った時、兄貴が死んだ事も聞かされましたし、幸ちゃんは好きな人がこっちだから帰んないだろうし。」
「お兄さんが・・・」
「まぁ、しょうがないっすよ。危険な任務に行くとも言ってましたし。覚悟はしてました。」
二人にも、町作りに協力してもらおうか。
その事を話すと二人のテンションは上がった。
「それ、すげーいいですよ。」
「うん、皆も喜ぶと思う。」
良かった。
「今の事が片付いたらになると思うけど、町が出来たら、何をしたい?」
「だったら、また、バンドやりたいっすね。幸ちゃんギターで、香織、ベースもうまそうなんで、兄貴の変わり、やってくれないかなぁ。」
「多分、香織ちゃんならやってくれるよ。」
「じゃあ、後はドラムだけど、アイツらでもいいかなぁ。」
「んっアイツらって?」
「ここじゃあ、ちょっと話せないんですけど、アイツら太鼓叩くらしくて。ドラムの代わりに。」
「いいね、それ。カッコいいよ。」
「ですよね。」
「とわちゃんは?」
「私、恥ずかしいけど・・・」
「何?」
「・・・お嫁さん」
洋介がとわの肩を掴む。
「まずはお兄さんに紹介しなさい。気に入ったら、手を出すから。」
「うざいよ、お兄様。」
とわに殴られる洋介。うん、本当の兄妹みたいだ。
そんな、たわいのない話しをしていたら、領主様と紘子の会談は終わった。今後の予定が決まった様だ。