第8話 俺は生きているのか?
俺はまだ死んでいない・・・のか。
意識が朦朧として良く状況が分からない。何か乗物に乗っている感触がする。だとしたら、そのまま、捕まったのか知れない。
渉大丈夫か?会えるまで、生きていられるか・・・。
だめだ、意識が途切れる。今度こそ最後だ。
・・・
・・・
・・・
また意識を取り戻した。まだ生きているか。
目を開けると、天井が見える。
下半身の感覚自体がなく、痛みもない。麻酔が効いている様な感じだ。
あいつらが、治療を?
だったら、何で俺の足を・・・
渉、無事でいてくれ。
あいつら皆殺しにして、絶対助けてやる!
コツ、コツ・・・
足音が聞こえる。
そちらの方を向くと、日本人らしき男が近づいてきた。ぼさぼさの長髪で髭の生えた不精という雰囲気だ。
「*********(おー、目覚め・・あ)」
あーという感じで、言い直す。
「目、覚めたか?」
やっぱり、日本人か。口をパクパク動かすが、口が乾きうまく言葉が出ない。
「これっ飲めるか?」
よく分からない金色の液体が入っているペットボトルを差し出してくる。尿に近い色で躊躇するが、まあ、いいや、と首を縦にふる。
体にすっと入ってくる。なんかこれ凄いな。栄養ドリンクの何十倍も効果がある様な気がする。
「ははっすげえだろ。俺の奥さんの特製薬だ。」
「ああ」
「よしっ、えーと、おっさん、まず何から聞きたい?」
「お前もおっさんだろ。」
どうみても40代に見える。
不精な男は、顔を撫で「ああ、そうか」と言い、
「まずは俺の方から話しするか。それより、名前は?」
「佐藤公彦」
「俺は、矢島幸樹。まあ、宜しく。」
自分の手を引っ張り、強引に握手する。
「公彦、お前は今の世界どう思っている?」
考えこむ。変な動物・おかしな恰好のやつら・魔法、やっぱりそうだよな。
「ここは・・・違う世界だろ。俺達はこの世界に・・・」
「正解。俺も連れてこられた。もう・・・こっちで10年以上だ。正直、何年たったかよう分からん。」
「いや、そんな事より、息子は!渉は!村の皆は!」
「俺の10年以上がそんな事って」とつぶやいている幸樹。
「あー、多分あいつらに連れて行かれたと思う。」
「あのクソどもか」
「あぁ、あのクソどもは、シュミール人という種族で人間に近い。まあ、寿命も同じぐらいだし、この世界の人間枠みたいなもんだ。」
幸樹の服のそでを掴み、
「で・・・どこに、そのシュミール人が居る?渉はそこに居るのか?」
幸樹は、その手を払い
「ん、足ないのに?どうやって行く?」
幸樹の言葉は、絶望的であり、的確だった。
「まずは俺の話しを聞け!遮んな!」
「・・・」
「続けるぞ、で、そのシュミール人というのは、200年以上前は、普通に弱くて、他の種族から奴隷狩りとかされてたんだと。それが、シュヒーなんたらという奴が出てきて、シュミール人が魔法を連発する様になるわ、魔法がついた武器を使うわで、軍事力が増大!・・・天才が出て、まるっと変わったという感じだ。」
「・・・」
「他の種族も追い詰めはじめて、シュミール人対他種族軍と抗争が勃発!ただ・・・戦争中、原因は分からんが、シュミール人に伝染病が蔓延。その影響で子供が産めなくなったんだ。まぁ、シュミール人の強みの一つ、大量の兵隊を生む出産率でもあって、動揺も含め、徐々に戦況も押されはじめ、戦争は引き分け。・・・ここまではいいか?」
公彦はうなずく。
「で、さっき言った天才が、どうやら異世界から生き物を拉致ってくる方法を残していたらしい。それを使って、シュミール人は異世界を調査し、ついに子供を作れる生き物を発見。それが・・・俺達、日本人だ。」
幸樹はテーブルをがんっと叩く。
「むかつく話しだろ。」
「・・・ああ」
「話し変わるけど、お前の息子はいくつぐらいだ?」
「17」
「そっか・・・、もしかしたら、それぐらいだと兵士に配属されるかもな。」
「兵士?嘘だろ!」
なんで、渉があいつらの為に命をかけなくちゃならない!
「あいつらのやり方は、男女含め、出産に経験がある人間は、シュミール人との・・・まぁ言わなくても分かるだろ?子供達は兵隊で、高齢者は・・・奴隷として扱われるか・・・」
幸樹は、その先を言い淀んでいる。
「・・・」
「家畜の餌にされる。」
ああああっ!クソが!
村の人達の顔が思い浮かぶ。
あいつら、全員殺してやる!