第71話 ローガーは王になる為、立つ
ヤンとは、活動家軍を結成した時分に、再び再会した。ヤンのベルガー商会は、父親とヤンの努力もあり、大きな商会になり、王家の御用達になっていたが、二人の性格は変わらず、温かく迎えてくれた。さらに、活動家軍に金銭、物品を裏で支援してくれて、支えてくれた。ヤンは第三王子であるシュミール=ローガー様を紹介してくれて、自分と手紙のやり取りをする様にもなった。
そのシュミール=ローガー様は、自分の逆境に負けない、聡明なお方だった。生まれた時から両足が動かず、王家からは、継承権を剥奪され、離れの小さな屋敷に閉じ込められ、その中だけが、ローガー様の世界になった。
家族は寄り付かず、ローガー様は乳母に育てられた。乳母の娘のレナ様と共に育ち、持ち前の頭の良さで様々な知識を身につけていったが、王宮では疎まれ、存在自体、居ない事にされていた。ローガー様は、様々な差別をするシュミール国を変えようと思い始めていた時、活動家軍と出会い、賛同してくれた。
自分達としては、ローガー様にシュミール国を統治してもらいたいと思っていた。
差別のない国を作ってくれるお方だと。
ローガー様にその事を伝えたら「その時は力を尽くす」と言ってくれた。活動家軍に、大きな柱が出来た瞬間だった。
今回、ローバー様には、新シュミール国を樹立して頂きたいとお願いした。リンデン国のシュミール人達を説得し、その後、新シュミール国の後ろ盾になってもらい、戦場に参加してもらう為だった。その為には、ローガー様の新シュミール国の樹立は、奴隷解放と同様に大事な事だった。
ローガーは自分が生まれ育った屋敷のエントランスに、皆を集めた。
門番も含め、10人もいなかった。皆、家族の様な存在だ。車いすに乗った自分を皆が見ている。
「皆、私はここを出る。皆はどうする?」
「「「私達も連れてってください。」」」
皆が連れて行って欲しいと懇願した。
ヤンが変わりに話しをする。
「皆さんが乗る馬車も用意しました。安心して下さい。」
皆が安堵している。
「ヤンはどうするんだ?」
「私は、ベルガー商会で戦います。戦争には、金も物も必要ですから。」
また再会を約束して、握手した。
これから、ばれない様に首都ココを脱出し、活動家軍へと向かう。自分が中心になるとは思わなかったが、この時の為に生まれたんだと思う事にした。
「ローガー様、安心して下さい。レナがそばに居ますから。」
レナとは、血の繋がった姉、弟の様に育った。一番、信頼できる存在だった。
「頼むよ、レナ。」
レナは「はいっ」と嬉しそうにうなずいた。