第67話 副官のベルケルが戻る
ナインズは、ベルクマンの死を見届けた後、遺体の調査を終了し、リンジの花の捜索も終了させた。
それにしても、今までは、ベルケルが拷問し、自分に報告するという流れだったが、いざ自分で拷問するとなると、中々に・・・来るものがあるな。
戦場で戦っていた方が遥かにマシだと思った。
今回の件で、解決しなかったものもある。あの死体の右足と体内にあった石だ。研究者とヴァイスを呼び、調査の打ち切りを告げると、ヴァイスは不満そうな顔をしていた。研究者を下がらせ、ヴァイスを残した。
「結局、分からなかったな。」
「はい、あの石が何なのか、分からないままで・・・心残りがあります。」
確かにあの石、何か・・・気になるな。
「ヴァイス、直属の部下にならんか?」
「・・・え」
こいつは中々に使えそうだ。
「石に関して、私も気になっている。お前には、引き続き調査出来る環境をくれてやる。どうだ。」
「戦う事は出来ませんが、宜しいのでしょうか?」
「安心しろ。それは期待していない。」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします。」
「それと、お前には、もう一つ頼みたい事がある。」
無くなった右足の代わりについている義足を見る。
「もう少しマシな物を作ってもらいたい。」
「かしこまりした。今回の研究で、人体について詳しくなった部分もあります。そちらも、完成次第、お渡しさせて頂きます。」
「期待している。」
ヴァイスは、日本人の技術を、偏見がなく見る事が出来るシュミール人だ。優秀な男になるだろう。
ルーはベルクマンの姿が見えない事で悟った。殺されたと。調査が終わったかどうかはまだ分からないが、ベルクマンが言っていた計画の通りに事が進んでいれば、こちらに目を向けられる事も無くなると思う。活動家軍でも、忠誠心が高く、優秀な男だった。心の中で冥福を祈り、必ず「奴隷解放を成し遂げる」と改めて、誓った。
「只今、戻りました。」
「ご苦労。」
ベルケルが、オーガとの戦争から、戻ってきた。ガイウスが愛用している剣も持ってきたとの事。
フォージ家には、二本の剣が家宝として受け継がれている。一本が「当主の剣」。フォージ家当主を示す剣であり、現在はカイルが所持している。もう一本はガイウスが所持していたが、現在は自分の手元にある「武神の剣」だった。どちらも、天才魔導士、シュヒールヒ=ライス作と言われている。
家宝である「武神の剣」を眺める。代々、フォージ家では、最も剣に優れた者へ授与する剣であり、叔父からガイウスへと受け継いだ。
「それで、お前の望みを聞こうか。」
「はっ」
当初の予定通り、当主から除外していたムーロを当主候補に入れて欲しいとの事だった。
「分かった。ただ、カイルから剣を取り上げる事はしないが、それでも良いか?」
「かしこまりました。」
当主候補として、第一がカイル、第二がムーロとなった。ガイウスに関して、今回の事もあり、当主候補から外した。
「もう一つ、カイル様の事でご報告ですが・・・」
カイルに関して、副官ナードが死んだ事による精神的に不安定な様子を見せているという。新しい副官を置いてはどうかとの提案だった。考えるが、当てはまる人物はいない。しいて言うなら、ベルケルなのだが、こいつを置くのは・・・。「考えておこう。」と、一先ず、保留にした。
首都ココに戻り、改めて問題を解決する事にした。