第66話 拷問に耐える
私はこのベルクマンという男は、会った時から密偵だと思った。質問をしたが、おかしな所はなかった。が、最初から尋問で分からないなら、拷問をするつもりだった。
「お前は何者だ。活動家軍か?」
相手は答えない。さらにナイフで傷口を広げていく。
「お前は何者だ。活動家軍か?」
悲鳴を上げるが、まだ答えない。こいつ粘るな。ナイフでさらに傷口を広げ、次は、指を切り落とそうかと考えていた。
「すみません!言いますので、もう・・・勘弁を」
「そうか。本当の事を言え。次は、指を切り落とすぞ。」
ベルクマンの手の甲に刺したナイフを抜く。
「分かりました。私は・・・ボラナ帝国から来た密偵です。あの死んだ奴隷も、ボラナ帝国から連れてきました。」
何?ボラナ帝国の密偵?
シュミール国は、北にリンデン国、南はボラナ帝国に挟まれており、ボラナ帝国とは、国境付近の小競り合いで収まっていたが。
ベルクマンは、これまでの事を話した。
自分の家族が人質にされ、密偵になった事。
奴隷の日本人は、ボラナ帝国に亡命してきたが、捨て駒として利用していた事。
奴隷に利用価値がなくなったので、イノシシに突き飛ばされた時、まだ息をしていたので止めを刺した事。
止めを刺した事がばれるといけない為、リンジの花を利用して遺体の証拠隠滅を図った事。
様々な事を吐露した。奴隷の中に石、金属があった事を聞いたが、それは知らないと言っていた。
小指にナイフを突き刺し、切り落とした。
「んぐぅぅぅぅぅぅぅ」
「嘘は言ってないな。」
ベルクマンは首を縦にふる。
「他に仲間は?」
「いません!」
「嘘か?」
「本当にいません!」
ベルクマンの必死な目を見た。
「分かった。拷問は終了だ。」
ここまで何とか予定通りに進んだ。
他の仲間に危険が及ばない様、目を逸らす必要があった為、関係のないボラナ帝国からの密偵という設定をでっち上げた。何とか信じさせる事が出来た様だ。申し訳なかったのが、ボラナ帝国の密偵という設定を柿沼にも被ってもらった事だ。自分はもうすぐ殺される。あの世で柿沼に謝ろう。
「最後にお前は死ぬが、何かやりたい事はあるか?」
「いいですか?」
「なんだ?」
「それなら・・・俺、元ソロー出身なので、街が見える所に埋めてもらえませんか?」
墓から、奴隷が解放される所が見たく、そう願った。
「分かった。首だけだが、約束しよう。」
「ありがとうございます。」
背後に居た護衛が、俺の首にナイフを当てた。
ラナール様、今までお仕え出来て、本当に良かったです。あなたの事を心からお慕い申し上げておりました。あの世から、あなたの幸せを願っております。