第63話 フォージ家の当主問題が再燃するか?
ナインズの元に、死体に入っていた金属が「この世界の金属だった」という報告が入っていた。あの若者は、懸命に任務を取り組んでいる様だ。もう一つの報告に関して、同じ若者ながら、頭痛のする話しだった。副官ベルケルから早馬で報告に来たのは、オーガ族との戦争の勝利、ガイウスの暴走だった。
戦争の方法について、奴隷を犠牲にするなど、言いたい事はあるが、味方の損害は少なく、オーガ相手に勝利するという、結果を見れば最良の出来であり、文句は言えなかった。恐らく、ベルケルの策だろう。非情な策を取らせたら、シュミール国でも最も優秀であり、だからこそ、気が許せない男だ。
そんな男にガイウスが切りかかるという問題が起きた。
きっかけは、ガイウスと敵のオーガとの一騎討ちを邪魔した事により、端を発しているが、正直、裏があるのだろうと思っている。あの男なら、ガイウスを上手く転がして、有耶無耶に出来るだろう。実際、今までそうしてきたが、今回に限って、わざと怒らせた様な気がする。
あいつは、何を考えているのか・・・
カイルが、ガイウスをマーフに蟄居する許可を求めてきたので、許可を出す様、早馬を出す。今回はさすがに無罪という訳に行かないので、しばらくは、カイルの元でおとなしくしてもらう。まぁ反省はしないだろうが。ベルケルがこちらに戻り、オーガの残党は、カイルが追うそうだ。ベルケルから、改めてムーロの事で話しがあるのだろう。
ベランダに出て、外を眺める。視線の先の遠い向こうには、鉱山都市パムがあり、そこにムーロが居る。
ムーロは、シュミール国の首都ココで、文官をしているシュミール人女性、シュルツ=ヘルガとの偶然に出来た子供だった。ある日のパーティーで、意気投合し、一晩ベッドを共にしただけだったが、妊娠した。滅多にない奇跡の確率だが、自分との子供だと判明し、シュミール国では、一時期、噂になった。血筋を気にするシュミール国では、シュミール人同士の子供は、特に重要とされており、フォージ家以外からも意見を言われた。
次男のムーロを当主にしろ。
長男のカイルは、次男のムーロと比べて、気性の荒さ以外、全てが勝っている。なので、カイルに「当主の剣」を譲ったのだが、血統主義のシュミール人達による反対意見も多かった。副官のベルケルも反対しており、彼もまた、血統主義だった。
当主問題はまだ終わっておらず、ベルケルが戻ってきたら、次期当主問題は再燃しそうだ。