第54話 暴走するガイウス
ガイウスは目覚めた。俺は生きているのか、左腕は繋がっており、動く確認した。あの一騎討ちを思い出す。俺が力尽き、あいつは俺を殺そうとすると、矢が・・・思い出した・・・ベルケル!殺す。
こんな事をするのは、ベルケルだけだ。どこだ、俺の邪魔をしやがって。あのオーガとは、戦いをとおして、心が通じ合った気がした。まぁ俺が勝手に思っている事だが。戦友との戦いを汚したベルケルを殺す事にした。そうしなければ、俺の怒りが収まらない。
ベルケルを探し、見つけた。
「ベルケル!」
「これは、ガイウス様。お目覚めになられましたか?」
ガイウスは、ベルケルに近づこうとすると、マーカスが前に出る。
「どけ。」
「ガイウス様、どうされました?」
「分かるだろ。」
「えー何でしょうか?」
「分かれよ、じじい。一騎討ち邪魔したのをお前だろ。」
「邪魔ではありませんよ、助けたのです。」
「あぁ!」
「あのままでは殺されていました。・・・それにしても、ククッ」
「おい、何笑ってやがる。」
「いやー、オーガ族は噂通りの強さでしたね。あなたが手も足も出なかったとは。」
「・・・」
次、口を開いたら、切る。
「口ほどにもないですな。」
ガイウスが剣を抜き、ベルケルに切りかかる。マーカスが剣を抜き、受け止めた。
「てめえ、さっきから。」
「・・・」
マーカスは、両手で剣を握っていたが、ガイウスの力は強く、剣を上に弾かれた。
「邪魔だ」
ガイウスは、マーカスの両腕を切り落とした。
マーカスの剣が地面に落ちる。その剣には、切られた両腕が握ったままだった。
「ぐうぅぅぅぅ」
マーカスは地面に蹲る。
「次はてめえだ」
ガイウスは、ベルケルに近づいていく。そこへカイルが騒ぎを聞きつけてきた。
「ガイウス、やめろ!」
「邪魔しないでくれ。」
「ガイウス!」
「だから言ってんだろ!」
カイルはベルケルの前に立ち塞がる。カイルの側近達もガイウスの周りを取り囲む。
「やめろ!お前はイカレてる。しばらく、マーフで蟄居しろ。」
ガイウスは、ベルケルに指を差して言う。
「こいつが一騎討ちを邪魔したんだろ!兄上も分かるだろ、俺の気持ちが。」
「分からん。おとなしくしろ。お前を捕まえる。」
「おい!」
カイルはガイウスに近づいてくる。
さすがに兄を切るわけに行かない。怒りは収まらないが、剣を降ろすと、カイルは自分の右腕を掴んできた。幼い頃、よく遊びに連れて行ってくれた手だった。その手が大人になり、今は自分を捕まえようとしている。なんでだよ。
カイルは剣を持った右腕を掴み、自分から剣を取り上げると、カイルの側近達が、ガイウスを取り囲み、野営地に連れていく。
その後、マーカスの両腕の治療も無事に済み、何とか死者は出なかった。
ベルケルは、自分の理想通りの展開となった事に、心の中で笑った。




