第4話 茂吉のじいさん
家の前の一本道の道路を真司と自転車で走る。道路には、近所の人が大声で話しながら、急ぎ足で移動しており、誰も乗っていない車が所々に止まっている。車が来ても、前には進めない為、降りて先を見に行く人もいる。
・こっちから先、原っぱになっていて、田んぼも何にもなくなってる。
・反対の道には森があるみてーだ。
・地震があった時、地面に光る線を見た。
聞き取れた内容だが、理解は不能。ほんとに何があったの?
Y字路になっている細い道を右に曲がると、茂吉のじいさん家に向かう方面。Y字路正面には、鈴木建築がある。真司の家の本家であり、何かと面倒を見てもらっているらしい。家の前で鈴木達夫(47)が社員に号令を出している。達夫さんは、真司の叔父にあたる人だ。
「おじさん!」
「真司!渉君!」
「・・・何があったの?って、・・・なんだあれ・・・」
Y字路の右は、途中で道は途切れ、原っぱになっており、その先に家が無くなっている。
「・・・」
達夫さんは、説明が出来ないと言った顔をしている。
茂吉のじいさんの家の辺りから、途切れており、喜平のおばさんの言っていた通りだった。
茂吉のじいさんの家辺りに人だかりが出来ており、ふらっと進もうとする渉を達夫が大声で止める。
「近寄るな!」
「えっ」
普段、近所の子供達にも優しい達夫さんが、何とも言えない表情で茂吉のじいさんの家の方を見ており、渉の肩を掴んでいる。その様子に足が前に出ない渉。
茂吉のじいさんの家から、人が出てきた。何があった?なんで首を振っている。
遠くから声が聞こえる。
「・・事・・か!」「・・・で、死ん・・・!」「・・因は・・・!」
「えっ!しん!」
肩を掴んでいる達夫さんの手は、ぎゅっと力が入り、かすかに震えていた。
呆然として、周りを見渡すと、少し遠くにある牛舎内に樹木があり、ぎょっとした。あの木、後ろ半分ほど削れていないか?それに、遠くの方、役場がなくなっている。原っぱの先は、小高い小山になっており、先は分からなかった。