第3話 何かあったの?
<地震発生から20分後>
父は「役場に行く」と慌てて、出かけて行った。地震の影響はあまりないと思っていたが、復旧まで、少しかかるかも知れない。せっかく休みになったのに、ゲーム出来ないなんて。くそー。
窓を開けて、空気の入れ替えをしながら、床に落ちた漫画を棚にしまってると、外から声が聞こえる。
「・・・るくん」
「・・・たるくん」
「んっ」
窓の方から声がする。真司の声か?
窓から外をのぞきこむと、向かいの家の2階から真司が手を振っている。あいつは鈴木真司。自分の一歳下で、高校に行かず、アルバイトしながら、大学を目指している。というか、学校行かなくなったのって、中2の時からだったかな。むかつく同級生を殴って、止めようとした教師を条件反射で巴投げするという、面白い奴だ。今も柔道はやっているとも言ってたな。
「おうっ真司、おはよう!」
「渉くん、揺れたけど、地震?テレビつかねぇんだけど。スマホも無理だし。」
「真司!それだけじゃねぇ。水も火もつかねぇぽいぞ。」
「まじか!・・・今日、バイトなんだけど、どうすっかなー。・・・んっそっちは学校行かなかった?」
あー制服を着たままだからか。まあいいや。それにしても、こいつの神経図太いな。水もでねぇと言ったのに動じる様子はない。
真司と大声で話していると、近所の騒ぐ声が聞こえる。
「・・・何もねぇ・・・!」
「・・・どういう事・・・!」
近所のおっちゃん達が騒いで、役場と逆の方に向かってるな。あっそう言えば、茂吉のじいさん(吾郎の屋号は茂吉)の様子を見てきてくれって言ってたっけ。じいさん家、向こうだから、ついでに見に行こうか。
「真司!何かあったぽいな。茂吉のじいさん所に行くついでに見てくるけど、一緒に行くか!」
「うぇい!何もやる事ねぇし、行く!」
茂吉のじいさんの所へ向かう為、外に出ると近所のおじさん連中は、皆、どこかへ出かけた様だった。喜平のおばさんが、近所の人達と立ち話ししながら、役場の逆方向へ向かっていた。
「おばさん!どうしたのっ」
渉の姿を見た喜平のおばさんは、
「わたるちゃん!何もないの!」
「?」
「茂吉さんの辺りから、何も!」
「??」
そう言うと、おばさん達は、急いで向かっていった。
わけが分からない。・・と思っていたら、真司が来た。
「・・んっ渉くん、どうした?」
「・・・訳が分かんねぇけど、何かおかしな事が・・・。とりあえず、じいさんの所に行くぞ!」
二人は、茂吉のじいさん宅へ自転車で向かう。