第21話 初めての戦闘・村の探索
村へ行く途中、何度か魔獣と遭遇。軽トラで逃げられない敵がいた場合、戦闘になったが、幸樹は問題なく倒していた。あいかわらず、平和な日本人なのになんでそんなに強いんだ、あいつは。
以前、その事を幸樹に聞いたら、魔法を使って、身体能力をあげているのであって、魔法を使える様になった自分も出来ると言われた。渉を助ける為には力が必要であり、訓練して欲しい旨を告げ、魔法をなんとなく使える様になった。今はまだ高圧洗浄機魔法だが・・・ただ、アリーサの話しでは、すぐに魔法が使える様になったのは、驚異的らしい。息子という目標があればこそだ。
今回の道中、たまたま出会ったでかいネズミの様な魔獣と戦わされた。こちらの武器として、槍とボウガンを渡されている。戦闘は、魔法で身体能力をあげ、槍で戦えとの事だった。
このネズミだが、幸樹の話しによると、奴隷の兵士にされたら、まず最初にこいつと戦わせられるそうだ。奴隷の場合、五人一組で戦い、運が悪いと一人ぐらいかみ殺されるらしい。魔法が使えるのだから、一人で大丈夫だろうと簡単に言われた。ゲームのスライムポジションとの事。
腰に魔石はある、身体能力の底上げも不慣れながらなんとか出来ている、こんな所で負けてられない!
結論から言うと、あっさり倒した。相手が飛び掛かってきたら、槍を前に出して、グサッとあっけない幕切れになった。拍子抜けした顔をしていたら、幸樹から、普通の人間なら、槍を刺す事も出来ず、押し倒され、噛みつかれて死んでいるとの事。生物を殺した罪悪感もないほどのあっさりだった、いや、ここは殺し合いの世界だと、足を切られ、息子を攫われた時から覚悟は決まったのかも知れない。ちなみにネズミの魔獣から、豆粒より少し大きい魔石が取れるそうだが、探すのも大変なので、放置するとの事。肉も食うと腹を下すらしい。
ここまで出来るならと、村までの道中、幸樹のフォローもありながら、倒せそうな魔獣は駆逐していった。この世界にレベルはなさそうだが、レベル1からレベル5ぐらいにはアップしたなと思った時、村に到着した。ここからは、他のグループと合流し、探索をするとの事。
図書館前で犬の様な魔獣を斧で真っ二つにしていた日本人が居た。革ジャンを着て、バンドマンの様な恰好だ。持っているのは、ギターではなく、斧だが。自己紹介をされ、柿沼洋介というらしい。幸樹は、洋介の兄、柿沼心と幼馴染で、弟の洋介とも良く遊んでいたらしい。転移した時も三人で飲んでいる時だったそうだ。歳は幸樹の2つ下で、38歳になる。
「洋介、心から連絡あったかぁ」
「いーや、兄貴の情報はなんにも。危ない任務についているらしいしね。」
「まぁそーだな。」
三人は、奴隷解放時に救出され、そのまま軍に所属しているそうだ。兄の心は何処かに潜入しているらしく、連絡は取れず、どこに居るかも上層部しか分からないらしい。
「あいつ、戻ってこねぇかな。折角、俺が魔法を編み出したのによぉ」
「なー、昔みたいにこっちでもバンド出来るのに、幸ちゃんはギター、兄貴はベース、俺ボーカルで」
「まぁ、ドラムいねーけどな。」
そんな話しをしていると、公会堂の方から、剣を持った長い髪の人間の女性が来た。村の人間ではなく、洋介と一緒に来た軍所属の日本人との事。名前は田中とわ、年齢は聞かなかったが20代後半ぐらいに見える、綺麗な女性だ。
「こっちには誰もいないよ。それと、見つけた物資は車に積んどいた。」
後は、図書館近くの住宅街を回って捜索する事になった。
・・・
誰も捜索者は見つからなかった。残念ながら、何人かの遺体は発見し、村長らしき遺体もあった。・・・無念でなんとも言えない。