第18話 健一と香織の状況
「自分と香織は、倒壊しそうな家を見て回ってたんです。倒壊しそうなら、周りに影響が出る前に、倒さないといけなくて。・・・公会堂近くで亡くなった田代さん家が最後で、そこを確認している時「家に隠れろ!」と声が聞こえて、周囲がざわざわとしました。」
公会堂の話し合いの際、村長達にお願いした事だ。
「何かよく分からなかったので、確認しに行こうとしましたが、香織が不安がっていましたので、一緒に隠れる事にしました。田代さんの台所が無事だったので、そこに二人でしばらく隠れていましたら、今度は周りから悲鳴や怒鳴り声が聞こえてきて・・・。その家に床下の収納スペースがあったので、そこから漬物とかを出して、いざという時に隠れられる様にしました。」
健一君は、水を一気に飲み干した。
「はあ・・・冷蔵庫があり、ペットボトルの水と食べられそう食料が残っていたので、少しの間なら、大丈夫だろうと思っていました。物音がしたら、二人で床下に隠れたりしながら、2日ほど、そこで過ごしました。・・・周りの声が無くなったんですけど、今度は動物の声がし始めました。しっかりとした建物に入ろうという事になり、図書館の方に、隠れながら向かいました。」
健一君がまた、泣きそうなつらい顔をして俯く。
「・・・別の所に行ってれば!・・・」
自分も幸樹も何も言わない。
「すみません・・・図書館に何とかついたんですが、そこに男がいて、・・・隣町の奴で高橋って言ってました。通勤でこの村に通りかかったら、よく分からない事になって、図書館の鍵のかかる部屋で隠れてたそうです。初めて会った時は終始おどおどしてたんですが・・・時が経つに連れ、おかしくなっていってる様子でした。・・・香織とはすぐここを離れようと話していたのですが、中々踏ん切りがつかなくて・・・高橋と自分が別々に食料を探しに行ったんですが・・・戻ったら、血だらけの香織にアイツがレイプしようとしてました。」
自分の膝がガンガンと叩く健一君。
「それで!・・それで俺は!・・・アイツを・・・殺しました。」
健一君の話しを聞いて、こんなクソみたいな世界に落とされて、最愛の人が死にかけて、殺しの後悔まで背負わせてしまうなんて、やりきれない気持ちでいっぱいになる。
・・・
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幸樹はアリーサを手伝いに行き、自分と健一君は長い時間、言葉を交わさなかった。
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急いで、幸樹が入ってくる。
「おいっ!何とか助かりそうだぞ!」
自分は、顔をあげて立ち上がる健一の肩を抱いて喜んだ。




