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父と息子の異世界漂流  作者: 佐藤 学
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第13話 攫われた渉

(地震発生から一ヵ月後。)


シュミール国南にある第二の都市ソロー。国境付近にあり、前線基地としても機能している。ソローの軍事施設にある牢屋内で、ドワーフのヒューゴは横になっていた。それを見つめながら、佐藤渉さとうわたるは、ぼーとしながら、連れてこられてから、今までの事を考えていた。


最初は、シュミール国の首都ココに連れてこられた。


身ぐるみを剥がされ、皆と同じ奴隷の服に着替えさせられた。その時、真司しんじや村の皆も、同様に着替えさせられていた。その後、こちらの言語と常識を、脳に直接インストールする魔法を施された。脳が信じられないほど痛み気絶したが、その後は、こちらの言葉と異世界に転移され、奴隷として捕まえられた事が分かった。そして、自分が今後、どういう人生を歩んで行くも分かって、死にたくなった。


兵士として使い潰され、生き残っても奴隷として、こいつらに死ぬまで、こき使われ続けると思われる。それに、真司しんじから父ちゃんの事を聞いたが、恐らく生きてはいないだろう。


でも・・・死にたくない。


次にソローまで送られた。自分や真司しんじの他に、中学生ぐらいまでの攫われた人間は兵士として、それ以下の年齢は兵士予備軍として使われる事になる。まだ、何も出来ない位の年齢の子供は、まとめて、施設に入れられる。攫われた他の種族も一緒だった。


ソローに着くと、四人一組の牢屋へ押し込めれた。そこには、すでに日本人とドワーフが居て、自分と獣人族が入った。インストールされたこちらの言葉で、話す事が出来、意思疎通は問題ない。その日本人は柿沼かきぬまさんと言って、2012年に攫われてきたそうだ。10年以上もこの生活を、耐え抜いてきた歴戦の猛者の様な人で、色々な事を教えてくれた。柿沼かきぬまさんより後から入ったドワーフのヒューゴも自分の事を助けてくれた。正直、柿沼かきぬまさん達が居なかったら、すぐに死んでいたかも知れない。自分と一緒に来た獣人族の様に。彼は話しもほとんど出来ない程に絶望していて、次の日の訓練初日に逃げ出して、捕まり殺された。他の皆への見せしめの為、首が腐るまで晒され、その光景と匂いで、来たばかりの兵士達は、皆が吐いた。いや、正確には一緒に来た真司しんじだけは、より一層覚悟を決めた様に晒し首を見ていた。


真司しんじの両親は、看護師と介護士。転移した日、夜勤で隣町にいて、こちらには転移しなかった様だ。叔父の達夫たつおさんは、目の前で殺されたと泣きながら言っていた。自分もつらくて涙が出た。その他、達臣たつおみさんと奥さんには子供が居たので、シュミール人の御付き奴隷として連れて行かれたそうだ。鈴木建築の子供が居る社員も同様だった。御付き奴隷とは、夜のお供もする奴隷、クソみたいな話しだ!


日々、訓練の他に食料確保の為、魔獣を討伐している。まだ参加していないが、他種族の村を攻めて、奴隷を確保する事もあるらしい。シュミール人は自分達の事を神だと思っているのだろうか?おぞましい。


昨日も魔獣の討伐に駆り出され、自分・柿沼さん・ヒューゴが駆り出された。その時、異常にでかいイノシシの魔獣が出て、柿沼かきぬまさん含め・・・8人が死んだ。自分ももう少し突進がずれていたら、死んでいた。あれだけ強かった柿沼かきぬまさんが死ぬなんて・・・簡単に死ぬ世界だと改めて思った。

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