腹を割って話しましょう
――バサッ。
「この写真に見覚えは?」
女の声に、男は机の上に散らばった写真に視線を送る。
「……ッ!」
叫び出しそうな声を押し殺す。心臓が跳ねあがった。
「私に似ているね。だけど別人だよ。こんな時間にこんな場所へ行くわけないじゃないか」
声だけ聞けば平然とした受け応えだった。表情が引き攣っていなければ、だ。
その写真には右下に日付と時間が表示されている。
「こちらはどう?」
先程の写真の駅前から、しばらく歩いた場所にあるホテルへ入ろうとする後ろ姿が写っている。顔は隣を向いていた。
「……ま、まさかぁ。ピンボケでこれじゃあ誰だか判別できないじゃないか」
尋問している女はその言葉を予想していたかのように次の写真を机の上へと投げた。
「これはそれを画像処理で鮮明にしたもので、あなたの顔との一致度も99%を超えているわ」
証拠を積み上げる女。
「その日は出張だったのにあり得ないだろッ! 濡れ衣だ! それにそれ、防犯カメラの映像だろ。素人がそんなもの入手できるわけないッ!」
男は虚勢を張る。
「そうかもね。でも今ここにあるのよ。それで、あなたの宿泊場所の行動記録から当日は料金だけ先払いで戻ってきていないことは確認済みよ」
女は別の資料を提示しながら淡々と話す。
最早顔面蒼白の男。
「取引先で時間が掛かったんだったかなぁ、あはは……」
白を切り通すつもりのようだ。
「相手の方にはもう腹を割って話しは済んで隣にいるわ」
「えっ!?」
信じられないようなものを見る目を向ける。そういえば鉄臭さが鼻を衝いていた。
女は小包を持ってきて開梱する。
「これテレビでやっていた、まな板まで切る包丁よ。切れ味が良さそうだから欲しかったの。だから取り寄せたのよ」
「……」
ゴクリと男の咽喉が鳴った。冷汗が出る。額の汗を拭こうとしたが、腕が動かず身動ぎしただけだった。
「あなた、腹を割って話しましょ」
女は眩しいほどの笑顔だ。
「わたし、セックスレスになってからボクササイズのジムに通ってね。いつ見せようかと迷っていたけど、この通りよ」
「……腹筋ッ!」
女が服を捲って見せたのは見事に割れたシックスパックだった。
「……ねぇ、あなた。…………どちらで割る?」




