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⒇『復権の作業』

⒇『復権の作業』



何れ書こうと思っていたが、読者に頼る小説が太宰治、読者を突き放つ小説が埴谷雄高、読者の上方へと動く小説が芥川龍之介ならば、それらを読み返すことで、俺の文体の修復と発展また、形式からの脱却が、復権の作業の根本的作業だったのだろう。



今の俺は、述べた三者の、どの位置にもいない、小説を書いているという訳である。まさに、自己を重力で潰すという、自己の自己による苦痛の体現からの逃避が、この復権の作業によって、行われた、というべきなのであって、然りである。



また、自由な位置は、どの作家をも敷衍した上で、消失させ、その苦痛の部分を引きずらないということだ。自殺という言葉も、随分消え失せたと、思っている。まさに、復権の作業は、的を得た訳だから、この調子で、第二次的執筆は、今、始まったばかりだ。

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