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⒁『復権の作業』
⒁『復権の作業』
㈠
酩酊した夕刻の街の姿、それは、復権の作業に活気付いているように、俺には見える。狂っちまった人々も、こんな時間帯には、非常に生き様を体現するものだ。遠くの路地が、また、川の流れが急いでも、冬はやって来るのである。
㈡
訳の分からない、本質的異質よ、俺は小説や評論や詩を書くくらいしか、出来ないけれど、世間に貢献できているだろうか。自己の価値などというものは、結句、自己ではわからない、その時代の群衆が、決定権を持っているのだから。
㈢
それでも、頂きに上るには、それ相応の、意匠が必要だと、どこかに書いてあったな。俺は俺足る証拠を世間に見せることは、出来ないのだろうか。畢竟、ただの、どこかで野垂れ死ぬ、無名の小説家なのだろう。そんな俺は、復権の作業に、勤しんでいる。




