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精霊に捧ぐ  作者: 春生カタパル子
暗中模索
8/25

第八話 遭遇

  1


 道を歩きながら、誰かとすれ違うことを期待した。

 夜道を照らすよう規則的に植えられた花が、道を遠くまで照らしているから、雷以外誰もいないことが否応なしに理解できた。


 雷は何度も夢想する。

 すこし先を歩いたら、きっとそこにはやさしいひとがいて、火を使い暖をとっている。雷の姿に見かねて同情し、その火を囲ませてくれるのだ。

 雷の五日間の経験を話したら、がんばったよくやったとねぎらってくれる。

 そうして明るい火にあたり、冷えた体を芯からあたためる。それは、どんなに幸せなことだろうか。


 結局雷が見つけることができたのは、青いスライムと緑色のスライムだった。

 期待はずれも甚だしい。

 雷は大きく肩を落とした。

 いつ終わるとも知れぬ孤独がしくしくと心身を苛む。ひとと出会えるかもしれないという希望を下手に持ってしまっただけに、それが叶わないままでいるのは最初からそれがなかったときよりも辛いかもしれない。


(でも、五日前よりは進んでる。道すがらにひとと会えなくても、この道の先は人が住む場所につながっているはずだ)


 言い聞かせて、暗い気持ちをむりに散らした。


 落ち込むのは後回しにして、見つけたスライムに集中した。

 道から少し離れたところに子供が落としたおもちゃのように転がっている。

 緑色のスライムは、青スライムと比べてどろっとしている。ホウ砂とのりで作れるおもちゃのやわらかいスライムのようだった。子供のころ、施設の友達といっしょに学校の自由研究であれと似たものを作った気がする。

 相変わらず青いスライムはスーパーボールのように跳ねていた。

 雷を見つけて積極的にぶつかってくる。昼頃までは嬉々として潰していたが、今の雷はいささか苛立っていた。八つ当たりのように青スライムを潰す。

 緑色のスライムは、歪な球をつくるところころと雷に向かって転がってきた。いっそ虫のふん転がしの方が勢いがいいだろう。雷にあたると、そのまま止まる。どうやら、それが攻撃手段であるらしい。


 これは生き物として、どうなのだろう。


 青スライムも大概だが、それ以上に生きていくのは困難ではなかろうか。

 スライムとはまったく関係のないひとの身であるが、その弱さには同情とことばにできない虚しさが沸いた。行き場のない怒りが少しだけ和らいだ。こんな知能があるのかもわからない単細胞生物も、生きることに必死なのだ。感心し、邪心がはらわれる心地がした。

 それとこれとは別で、レベルアップの経験値にはなってもらうのだけれど。

 足下に転がった緑スライムを潰す。手帳を見てみる。経験値は青スライムと変わらない。

 これで、経験値を四十稼いだ。


(ちょっとずつ、ちょっとずつだけど、ちゃんと前へ進んでる。だから、俺は大丈夫だ)


 雷は自身をなぐさめる。

 きっと、助かる。気休めではないはずなのだ。

 げんにこうやって人の痕跡を感じる道を進んでいる。

 諦めて立ち止まっても、誰も雷を助けてくれないのは、確かなのだ。だから、自らのために歩まなければならない。進むことを諦めて、緩慢な死を迎える勇気だってない。もとより、自分の命が何よりも惜しいのだから、諦める気なんて毛頭ない。

 あと少し進めば、雷は求めるものの一欠片くらいは手に入れられるかもしれない。

 

(腹が、減ったな……)


 道を見つけたことに興奮して、夕方から飯を食わずに歩き詰めだった。

 一度自覚したらこらえきれそうになかった。

 この孤独を癒したい。

 でも、今切実に欲しいのはおにぎりだろうか。


 2


 道から離れすぎないように森の中に分け入った。

 森はランプの花に照らされていて、相変わらず夜だと思えないほど明るい。

 ギラギラと光るネオンのような下品さのない穏やかな灯りは、森を幽玄にライトアップしている。


 光の下で薬草を見つけたので、苦味を我慢して嚥下した。

 どこにでも生えているやたら酸っぱい赤い実をむせそうになりながらも無理に飲み込む。

 食事とは決して言えない、その場凌ぎの生命維持をなんとか終えたので雷は道に戻る。


 今日はまだ眠る気になれない。

 もしかしたら、という思いが胸を突いてやまない。

 そこから一時間ほど歩き続けただろうか。

 夜空に溶けていく白い影を見つけた。


 ーー煙だ。


 理解した雷は反射的に駆けていた。

 息急ききって向かった先には大人の背丈ほどの石造りの塔と、犬小屋のような建物が建っていた。


(ああ、キャンプポイントだ!)


 ダンジョンやフィールドの休憩地点だ。

 神を祀るための地蔵のようなものが小屋に設置してあるはずだ。

 この地点でコマンドを入力すると、キャンプを行いHPやMPを回復したり、条件を満たしていればアイテムの生産をしたりできる。


 それを見つけた雷は足の勢いを弱め、ゆっくりと近づく。

 近づくにつれ、人の話し声が聞こえてきた。

 どっと息が詰まりそうなくらいの安堵が、涙になって込み上げてくる。


「あ、あの……!」


 使えるという感覚に乏しいこちらの言語ではなく、とっさに使い慣れた日本語ではなしかけていた。

 興奮と急激な運動で胸の動機が激しい。

 窮状を訴えて助けを求めたいのに言葉が喉の奥でつっかえて、なんといったのものかわからなかった。


 雷の呼びかけに気づいた男のふたりぐみが、いぶかしげな顔でこちらをみやる。

 薄茶色とも金髪ともいえない色味の薄い黄色っぽい髪色の西洋風の顔立ちをした男たちだった。

 日本人とは人種が全く違うとひとめでわかる大柄な体つきに、革鎧という見慣れぬ装いをまとっている。傍には物騒そうな剣や大きな槌という獲物がある。 


 これでようやっと助かるのだーーそう息をつくのも束の間、男たちのようすに雷は肌を爪で引っかかれるような不穏を感じとる。

 彼らの人相の悪さがどうにも不安になる。

 見た目だけで人となりを推し量るのは良くないと思うが、ランプの花と火の明るさに照らされた男たちの表情は、あまりお近づきになりたい類のものではない。


 男のひとりがからみつくようなにやけ面をした。


「おや。こんなところに嬢ちゃんひとりでどうした? それにしてもひどい格好だな」


(大陸帝国語だ)


 聞いたこともない言葉なのに頭がそうだと即座に判断し、言葉の意味をなめらかに理解する。

 その異様な感覚に一瞬つよいめまいがしたが、足をしっかりと踏みしめてたえる。


「一緒にいた親とでもはぐれたか? 魔物か獣にでも襲われたのか、だいじょうぶか? そこは寒いだろう。こっちに来て火にあたるといい」


 ずっと待ち望んでいたはずの台詞であったが、雷は誘われるままそちらに行く気にはなれなかった。

 雷にかけた言葉だけなら聞こえがいいが、口に上らせた台詞と様相がまったく釣り合わず、善人ぶった態度が見るからに嘘くさい。


(大陸帝国語ってことは、ここは帝国……?)


 帝国は、ゲーム舞台となる大陸の南東部に位置する。

 自分がいるのは帝国なのだろうかとざっくりと位置を把握する。


「ひとさらいから、にげてきた」


 雷は初めて使う舌の動きに戸惑いながら嘘をついた。

 たどたどしい言葉遣いになったのはわざとではない。久しぶりの他人との会話であったうえに初めて使う言語なせいで、流暢にはなせないのだ。


 『精霊の贈り物』では、子供が誘拐された痕跡をたどって違法な奴隷商に殴り込むクエストがあった。それ以外にも治安が悪い描写が多々あるし、雷が嘘の身の上を説明しても相手に違和感をもたせないだろうと判断した。


「ここは、どこだ……ですか?」


 男たちは面白そうに笑ったあと、「それは大変だったな」とうそぶいた。

 こんなところで子供がひとり彷徨っていた説得力がある嘘だったらしい。


「とんでもない目にあったんだな、つらかっただろう。こっちにくるといい」

 

 答えを教えてくれそうにない。


「ここはどこなんですか? はやくかえりたい」

 

 演技ではあったが、真実のおもいでもあったためか声に涙がにじんだ。


(帰りたい場所には帰れない。この世界には帰る場所なんてない)


「俺たちが家にかえしてやろう。今日はもう遅いから、休むといい」


 焦れた男のひとりが強引に雷の腕を掴んで火のそばによせようとする。雷は反射的にその手を振り払った。そのとき雷のまとう臭気でも飛んだのか「臭えな」と苛立ちまじりに男が舌打ちした。


「いつかかん、もりのなかをあるき……歩きづめだったから、あたりまえだ。で、このへんはどこなのかいい加減おしえて……教えてもらえませんか?」


 雷は接近してきた男から距離をとってたずねる。

 気弱なふりでもして男たちをなるべく逆なでしない態度をとるつもりだったが、男の腕を拒絶した時点で意味のないことだろう。 

 

 全身で警戒していることをしめす。

 眉根をよせ、幼い顔をできるだけ険しくする。 

 

「怖がるこたぁないぜ、お嬢ちゃん」


(無理に決まってんだろ)


「その、お嬢ちゃんてのはやめてもらえませんか。俺は男です」


 雷が不機嫌に言い放つと、男たちは虚をつかれた顔をしたあと目をあわせて嗤いあった。

 神経に直接やすりがけでもしてくるような、耳に障るわらいごえだった。

 屈辱で強く拳を握る。無駄な訴えであったろう。だが、男としての自意識が主張せずにはいられないのだ。見目が幼い少女であろうと、雷の心は男なのだから。


「何を警戒しているのかはあ知らねえが」


 いやににやつきながら男がうそぶく。火にあたっていたもうひとりがじりじりと雷と距離を詰めてきていて、雷は一歩後ずさった。


「そんな見えすいた虚勢なんて張らなくても、大丈夫だぞ。なあ?」


 かたわらにいる男に同意をもとめて、もとめられたほうはしゃあしゃあと首肯する。


「質問に答えてくれないようなやつに……」


 雷は己の浅はかさを呪った。きちんと相手の様相をたしかめてから、行動にうつすべきであった。

 ここは住み慣れた日本ではない。


 どこぞの女が盗賊に犯され、その報復をしようとした男の無駄死にだとか。

 罪のない子供が質の悪い酔っ払いに殴り殺されて、恨み募らせた母親が差し違えただとか。


 ダークファンタジーの世界観を出したいがために、そんなエピソードをおもいだしたようにたまにぶちこんでくる胸糞ゲーと似た世界なのだ。雷はこの世界の治安の悪さを念頭において、まずまっさきに話しかけるべきひとの安全性を見極めなければならなかったのだ。

 

 恐ろしいのはなにも魔物だけではない。身も守らなければならないのは、悲しいことに魔物からだけではない。

 

「大丈夫だっていわれて信用できるか!」


 雷は我が身を守るために脱兎のごとく逃げ出した。

 

 3


 視線をさえぎる茂みの中に体を突っ込んだ。

 枝や葉っぱに素肌を引っ掻かれながら右往左往走り抜け切った先で、これで一安心かと一瞬気を緩みかけた。すぐに背後から荒々しい足音が聞こえ、雷は血の気が引く。

 迷いなく自分のほうへ向かってきている。音をたてて茂みをとおるのは、かえって自分の痕跡を残してしまっただけなのかもしれない。


「くそ」


 吐き捨て、雷は息を整えるひまもないままふたたび走りだす。

 肌が粟立つ心地がする。頭の中が真っ白になる恐怖と限界まで引き絞られたような切迫感は、いじめっ子に追い立てられていたかつての記憶の比ではない。

 

 雷は森の中へ中へと道なき道を走りながら忙しくゲームのステータスに関しておもいだしていた。

 逃げた雷のことなど諦めればいいものを、男たちは追いかけてくる。

 早い段階で足音に気づいた初動と敏捷のステータスによる爆発的な瞬発力のおかげで、今のところかなり距離を取れているのが雷にとって救いだった。

 

(種族人間は、『精霊の贈り物』の中で一番のハズレ種族だった)


 メインシナリオで仲間にできるレイという少年の例外をのぞき、人間は成長値が格別に低い。

 彼らは人間にみえるし、雷のほうがステータス値が優れているはずなのだ。ゲーム通りのステータス格差が存在するのであれば、逃げ切るのはたやすいはず……レベルが同じならば、という注釈がつくが。


(さすがにレベル1なわけないよな!) 


「おいおい、どこに行くんだよ嬢ちゃん! こんな夜に森を走り回ったら危ねえぞ。おい、待ちなあ!」


 男たちが、雷のすがたを視界に捉えるところまで追いついてきた。

 雷は振り返れなかった。そんな余裕など、ありはしなかった。


「怖え魔物に食われちまうかもしんねえぞ。魔物に食われるよりももっといい思いできるとこに連れていってやるから大人しくこっちにきなあ」


「ガキが好きなじじいに可愛がってもらえる店だぞ。きっと楽しいぜ」


(見た目未成年者を娼館に売り飛ばす気かよ! そうだと思ってたけどな!)


 男たちには遊びにすぎないのか、余裕のある様子で下品に哄笑していた。

 物騒な雰囲気の男たちのレベルが、1で止まっているとはとうてい思えない。


(レベルが上のやつに、勝てるとはおもえない)


 なおかつ厄介なことにレベルアップでステータスが増加するのと他に、スキルレベルが10刻みごとにスキルに関連するステータス数値にプラス1される。

 たとえば〈剣術Lv10〉なら攻撃力に1。〈神聖魔法Lv20〉ならば魔力に2……というように。


 スキルは無制限に所有できるから、ゲームでは細々としたスキルを取得してステータスの底上げをしていた。『精霊の贈り物』はレベルがなかなか上がりにくく、戦力をあげるためにたとえ使わないスキルであろうととりあえず入手してスキルレベルを上げておくのが攻略のセオリーだった。


 ゲームから現実になったこの世界でスキルがどのように適用しているのかはわからないが「剣術などの主要スキルしか持っていない。スキルレベルのステータス反映もない」などと考えないほうがいい。

 この状況で楽観視などして状況を軽く見積もって行動するなど、愚の骨頂だ。


 男たちのステータスは、雷など手も足もでないほど上と考えたほうがいいだろう。雷はステータスを底上げしてくれるようなスキルなど持たず、装備も貧弱な初期装備。そのうえそれもぼろぼろなのだ。

 まともにやりあって勝てる相手ではない。


(動くなら、スタミナが0になる前!)


 スタミナポイントのステータスバーが逐一確認できる状態であったならば、赤信号が灯っているくらいに残りの体力が限界に近い。

 SPが空になった瞬間、この鬼ごっこの勝敗は最悪の形で呆気なく決するだろう。

 あの極度の疲労状態におそわれたら、雷は歩くことすらままならなくなる。

 捉えられて、男たちによってろくでもない店に売られてしまう。


(人身売買なんてくそくらえだ)

 

 雷は本気で走っている。敏捷の数値自体はレベル差があっても、ティタン神族は敏捷が優秀な種族だからそう負けてはいないと思う。だが、足の長さがまったく違う。こちらが二歩足を出して必死に稼ぐ距離は、大柄の男である彼らならば一歩で詰められる。

 体力そのものの桁が違えば、消費している体力量も違うのだ。

 状況は雷が不利。

 

(逃げの一手でジリ貧になるよりは……!)


 視界のすみに毒消し草を見つける。

 雷はその草の存在をみとめると袋が破けない程度にいれておいた《停止(ストップ)》を描いた石を手に取り、立ち止まりながら素早く後ろを振り返る。


(少なくとも、魔力だけは確実に勝ってるはずだ)


 レベルやスキルの数で劣ることで、攻撃力や防御力、体力といった物理ステータスは男たちのほうが上だろう。

 しかしどれだけレベルの差があろうと、戦士系の男たちに魔力で負けているとは思えない。

 雷の初期魔力は、エルフなどには負けるとはいえ非常に優秀なのだ。

 《停止(ストップ)》が当たりさえすれば、動きが止められる。これは願望などではない。ゲームでの予備知識から導きだせる結論だ。これが間違っていたら、雷にはもはや打つ手がない。


(当たれ!)


 一縷の望みをかけて投げた石を、男たちは簡単に避けてしまう。


(くっそ。だけど、石はまだある)


「いきなりひとに石を投げるなんて危ねえなあ、お嬢ちゃん」

「あんまりやんちゃするようだったら、優しくしてもらえる店に連れてくまえに、お仕置きしてやらなきゃなるぞ」


 雷は毒消し草をいそぎむしり、噛み砕く。そくざに《浄水(クリアウォーター)》で体内の毒を消すが、口の中にいれておく以上、緩慢な舌の痺れは完全に切り離せそうにない。

 

 待ち時間(クールタイム)がおわるたび、雷は魔法をかけなおす。

 片手には石を持ち、片手には杖を持つ。


「ようやく諦めたかい。いい子だ」


 立ち止まった雷に、もはや悪辣さを隠しもせずに男たちは近寄ってくる。


「相当臭えしだいぶ汚れてはいるがなかなか小綺麗なガキだな。いい拾いもんした。こりゃ、そこそこの額になりそうだ」 

「せいぜい変態じじいどものの腹の下で可愛がってもらうんだな、嬢ちゃん」


 ふうふうと荒い息継ぎに苦しむふりをしていた雷は、男のひとりが肩に手を置いた瞬間うごいた。

 男の目元に向かって噛み砕いた毒草を勢いよく吹き付ける。


「ってぇ! なにしやがるこのクソガキぃ!」

 

 目に噛み砕いた草を吹きつけられた男は、目を抑えながら苦鳴をあげた。

 がなりたてる男に怖気付くことなく、雷は近接距離で石をぶつける。魔法は確実に発動し、男をひとり足止めした。そこにロッドで《遅滞(スロウ)》をおみまいする。

 

「こんの、ガキ! こっちが優しくしてやってんのにいい気になりやがって!」


 仲間への突然の攻撃にもうひとりの男が怒りをあらわにした。

 雷はそれに気圧されることなく、男の足に水切り投げの要領で素早く《停止(ストップ)》の刻印石を投げる。

 無事に男に当たり、雷は無駄口を叩かずに再び全速力で駆け出した。


「おい、こら、待て! てん、めえ。ぶっ、殺、して、やる! なん、で、体、が、動、かね、えんだ!?」


 わざとらしいくらいに緩慢な舌つかいで《遅滞(スロウ)》をかけられた男ががなりたてる。


「くっそ、まさか魔法か!? あんのガキ! おいこら逃げんな、まてこの!」


 背中に怒号が突き刺さる。

 雷は道から離れ、森の深いところに向かって駆けていった。


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