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17 わだかまりの日

今日の予約投稿分で完結しますので、最後までよろしくお願いします!

 あれから、私とグラード様の関係は特に変わらなかった。


 いつも通り何人かでランチをとり、放課後は一緒に勉強して、適当な人の少ない時間に帰っている。


 少しだけ変わったのは、私がよく笑うようになったことだろうか。何か分からないけれど、見た目の美醜よりも、私が笑わないことを正当に……というと変かもしれないけれど、評価してくれたのが嬉しかった。


 そして、今日。一年で一番憂鬱な日がきた。……私の誕生日だ。


 普通に学園に通うが、逆に家でも学園でも気が抜けない日である。なんというか、綺麗、と言われることに対して一定の気合を入れて壁を作らなければ耐えられない日なのだ。


 普段は笑って受け流せる言葉が、それも出来なくなるほど心に刺さる日だ。


 制服でダイニングに降りていくと、家族はもう皆食卓についていた。


「ルシアナ、誕生日おめでとう。17歳だと成人だなぁ……もうこんな日がくるなんて早いものだ」


「本当にねぇ……。ちゃんと、大人になってくれて嬉しいわ、ルシアナ」


「私は血のつながりは無いが……ルシアナが頑張ってきたのは、ちゃんと見ていたぞ。誕生日おめでとう」


 私は食卓に座ったまま、目を真ん丸にしてしまった。今日は絶対に綺麗、という言葉を浴びることになるだろうと覚悟していたのだが、一切そこには触れない。


 私があの意思表示をしたからかもしれない。それでも、私の見た目だけじゃなく、本当に成人したことを喜んで、これまで頑張ってきたことを見ていてくれたという言葉は、何とも言えず胸の奥がじんと熱くなるものがあった。


「ルシアナ……お前は聞きたくないだろうが、これだけは言っておく」


「はい、お父様」


「これから社交界に出れば、嫌でもお前は綺麗だと褒めそやされる。だが、ルシアナの綺麗は、努力があってこそだ。その外見の中に、たくさんの努力の裏付けがあってこそ、お前は綺麗と言われる。所作一つ、ダンス一つとっても、お前は何も恥じることはない、一流の淑女だ。最近はよく笑うようになったしな」


「そうね、ルシアナは作り笑いじゃなく笑えるようになって嬉しいわ。それは、絶対に貴女を守ってくれる武器になるのだから、社交界に出ても腐らずに笑って過ごすのよ」


「……変な男の所に嫁に出す気は無いからな。ルシアナ、絶対にいい男の……いいか、見た目に目が眩むような馬鹿じゃない男の元に嫁ぐんだぞ」


 私はなんだか、朝からこらえきれなくなってしまって、テーブルナプキンで涙をそっと拭った。


 グラード様がやり方を教えてくれたから、私は家族に自分の意思を伝えることができた。


 そして、今、本当に嬉しい言葉で誕生日を祝われ、成人する私の背を押して貰えている。


「ありがとうございます。こんなに嬉しい誕生日は……初めてです」


 私の笑顔は、もう作らなくても自然に出て来るようになった。


 グラード様も、今ならブスとは言わないかしら? そう思いながら朝食を食べて、学園に向かった。


 そして、私は何故か校門でグラード様の馬車に捕まり、誘拐されている所である。

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