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30 錆びついた心


――た、楽しいことですって!? それってつまり、愛を分かち合うという……。まだ婚約もしていませんのに、そんな心の準備が……


 フォセカは心拍数が上がり、鼻息を荒くした。うっとりとソニアの次の一手を待っていたが、フォセカに触れ返すことはせず、淡々と話し始めた。


「パーティを開催しよう」

「……え?」


 自分が求めていたものと違い、フォセカは拍子抜けした声を出した。


「そこで二人を抹消する」

「…………」

「フォセカちゃん?」

「……まぁいいですわ。それで?」


 フォセカは椅子へ座り直し、ソニアの策略を聞くことにした。


「フォセカちゃん主宰のパーティなら、王子である僕がいても、ローズやゼラが招待されても違和感はない。そこで僕がローズに近づき、外へ連れ出す」

「番犬のゼラが常に横にいるわよ」

「そこはフォセカちゃんが止めておいてくれ。その間に僕が仕掛けるから」

「ローズがソニア様と二人きりだなんて癪だけれど……最期だものね。許してあげるわ」


 ロベリアが殺される姿を想像し、ふふふと笑みがこぼれた。


「私楽しくなってきましたわ。明日の夜にでもパーティを開催いたしましょう!」


 フォセカは使用人を呼び、パーティの準備をするよう命令した。急なことで使用人も驚いていたが、フォセカの命令は絶対だ。そして招待客も絶対参加だ。不参加は死を意味する。


「これで明日を待つだけだね。フォセカちゃん、今日は泊ってもいいかな?」

「えっ、それって……!」


 コロッと乙女モードに心変わりするフォセカ。今度こそはソニアの言葉通りだと期待したが、またもや違ったようだ。


「宮殿を視察しておかないと、思ったように動けないだろう? 実は僕の使用人も何名か今夜来るように手配している。同じ部屋で構わない」


 フォセカがローズを虐げていたこと、パーティの策に乗ること。ソニアには全て見通されていたのだ。ソニアは立ち上がり、部屋を出ようとしたが、フォセカが彼の袖を掴んだ。


「……ソニア様は私の部屋でもいいですのよ」

「……それはパーティが無事に終わったら、ね?」


 表向きの王子様姿に戻っていたソニアは、そっとフォセカの口に人差し指をあて、ウィンクをした。


「ソソソ、ソニア様っ……!」


 フォセカは地へ溶けていくように力が抜けいき、床へ座り込んだ。


 部屋を出たソニアは宿泊する客室へ案内された。部屋に入り、案内した使用人に礼を告げ下げさせる。一人になった瞬間、一目散にバスルームへと足を運び、フォセカの口へつけた指を力強く洗っていた。


「汚い汚い……! 僕の綺麗な指が台無しだ! 何度も色目を使いやがって……気持ち悪い!」


 何度も何度も石鹸で擦り、手の油分がなくなる程に洗い流す。


「アルニタク………! ピスキウム事件の犯人はお前らだと知っている。レポリスに罪を擦り付けやがったおまえらも許さない……。この地はレポリスが支配してやる!」


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