第七話
悠―――
な…んで、悠と蓮が?
信じられない光景に、頭が真っ白になる。
蓮―――
嘘だろ―――?
訳の分からない嫌な衝動が湧き上がる。
(蓮―――)
(悠―――)
嫌だ。
そんなの見たくない……っ
黒い感情が心を蝕んでいく。
冷静に考えられなかった。
「おっ、斗真、偉いじゃーん。ちゃんと来てたんだな」
響が斗真に声を掛けたが、もはや聞こえてなどいなかった。
「れ…ん、はるか…っ」
「っておい斗真!?」
響の声を振り切って、斗真は全速力で駆け抜けた。
「蓮!悠!」
斗真は2人に駆け寄ると、必死で2人の名前を呼んだ。
斗真に気が付いた蓮と悠は、驚いた表情をして声の方へと視線をやる。
腕を振り払おうとしている蓮を無視して、悠はすぐに優艶な笑みを浮かべた。
「あぁ、おこちゃま斗真クン。僕たちに何か用?」
「悠。やめろ」
侮蔑を含んだ声色で斗真に話しかける悠を蓮が諫めた。
「僕は…」
何を言ったらいいのかわからない。
今朝まで考えていたことなんて全部頭から吹っ飛んでいる。
だけど。
「今更、蓮が惜しくなったの?返せって言われても困るけどね」
「悠」
例えもう遅かったとしても。
「あぁ、蓮じゃなくて、この僕?今頃僕の魅力に気付くなんて、遅すぎじゃない?」
「悠!」
僕は。
「もう、あんたウルサイ!ちょっとは黙っ…うわっ」
「っ!?」
斗真はぎゅううぅ〜と力いっぱい2人に飛びついた。
突然の斗真の行動に、2人は驚愕する。
「やだ。」
ぽつり、と呟いた。
「…こんなのヤダ」
「ヤダって言われても…困るんだけど?」
悠は子供を宥めるような口調で言う。
我侭を言うんじゃありません、と叱るように。
「斗真…」
1週間振りに向けられる、漆黒の瞳。
たった1週間なのに、ものすごく久しぶりな感じがした。
懐かしくて―――暖かい。
「僕は、蓮が好きだよ。でも、悠も大切なんだ。2人がいなきゃ嫌なんだよ!」
蓮が好きで―――悠も大切で。
どちらも失いたくない。
「悠が蓮を好きでも。蓮が悠と付き合ってても」
それでも2人とも手にしていたい。
「僕は、2人とも欲しい」
―――それが、答えだった。
「蓮がいないとドキドキしないし、悠がいないと毎日楽しくないんだ」
だから。
「蓮も悠も、僕のそばに居て下さい」
もう一度、2人をぎゅっと抱きしめた。