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chronos  作者: 天月 琉架
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第九話


悠と響先輩はそのままカフェテリアでお茶をすることになり、斗真と蓮は2人でゆっくり話そう、と斗真の家に来ていた。


が。


「…」

「あ。」


鍵を開けてドアを引いた瞬間、しまった…と思うが遅かった。

1週間、何も手をつけられなかったせいで部屋の中はぐちゃぐちゃだったのだ。


「悪い。俺のせいだ」

「蓮は関係ないよ。僕は元々面倒がってあんまり掃除しないし。いつもとそんなに変わらないって」


あはは〜と笑って誤魔化して手早く片付ける。

幸いにも荒れているのはベッドのある部屋だけで、リビングとキッチンは比較的綺麗なままだ。


「お前、食べてないんじゃないか?少し痩せたぞ」

「え?そうかな」


ぺたぺたと顔を触るが、自分ではそんなに変わったところはない。

本人が気付いていなかったのに、良く分かったなと思う。


「蓮は心配性だよ。大丈夫だって」


安心させようと笑いかけるが、蓮の顔は曇ったままだ。


「いや、だめだ。何か作るから、お前はそれまで掃除でもしてろ」

「え〜」


掃除やだ…とは言わせてもらえず、キッチンから追い出された。

仕方なく、寝室のほうへと向かって掃除をすることにした。


斗真の部屋は独り暮らしにしては広い1LDKだ。

心配性な両親が、ワンルームだと面倒がって何もしなくなり、部屋が荒れても気にならなくなってしまうのを恐れてこの間取りにした。


広ければ、嫌でも掃除をしなければならなくなるだろう、と。


実際、実家暮らしの頃は自分の部屋だけだったので掃除なんてまったくしなかった。

けれど、家を出てからは自然とやるようになり、一つ何か掃除をするならみんなやってしまえ、

と思えるようになった。


やはり両親は自分のことを良くわかっている、と感心したものだ。


(いや、普通に普段からやれよって話なんだけどね)


独り言を言いながら片付けを始める。

脱ぎ散らかした服やパジャマ代わりのジャージ、投げ出されたままの教科書にレポート用紙。

借りっぱなしの図書館の本や飲み物の残骸、その他ゴミゴミゴミ。


ほとんど寝室(ココ)にいたのに、見事なまでに汚れている。

斗真は汚れた服やタオルをまとめて洗濯機へ入れて回す。

ついでにバルコニーに続くガラス窓を開けて換気をし、布団を干した。


今はまだお昼を過ぎたくらいなので、1時間もすれば十分に干せるだろう。

ゴミを纏めて捨てて、掃除機でも掛けようかな、と思っているとキッチンから蓮の呼ぶ声がした。


「斗真、お前普段からちゃんと食べてるのか?冷蔵庫、空っぽだったぞ。今から買い物に

行ってくるから、もうしばらく待ってろ」

「はぁーい」


もう、みんなして過保護だなぁと思うけれど、自分のことを心配してくれているだけなので甘んじて聞いておく。

蓮が出かけると、やっぱり掃除機をかけようと物置を開けた。





******




「…ま、――う…、―――斗真」

「ん…?」


優しい声がする。

いつも見る、低くて甘い、心地の良い声。


「疲れたのか?だったらそのまま眠っててもいいよ」

「うん…」


ふふふっと気持ちよさに気分が良くなって笑う。

大きくてあったかい手で頭を撫でる仕種が気持ち良い。


もっと撫でて、と甘えるように頬ずりをした。


「うん?構って欲しいのか?」

「うん…だって、最近ずっと見てなかったんだもん。蓮と会えなかった時、夢の中の蓮にも会えなくて寂しかったから」


「……」


「だから、こうしてまた見れてるってことは、蓮は一緒にいてくれてるってことだよね」


眠たい瞳をうっすらと開けて、蓮を見る。

少し困ったような、呆れたようなヘンな顔をして何も言わずに苦笑している。


あれ、なんで?


「毎朝キスして起こしていたのに様子が変わらなかったのは、ずっと夢だと思ってたから

だったんだな。俺としたことが、斗真は恥ずかしがって知らないフリをしているだけなんだと

思ってたよ」


クスっと蓮が微笑を洩らす。


…んん?

なんか話がおかしいような気が…。


「だったら、このままお前を抱いてもお前は夢だと思って許してくれるかな」


ちゅくっと耳たぶにキスを落とし、頭を撫でていた手のひらを頬に添える。

もう片方の手も寄せて両手で僕の顔を挟むと、ゆっくりと唇にもキスをした。


「斗真…お前を抱いても、いい?」

「え…?抱くって…」


繰り返し落とされるキスで頭がぼーっとする。

甘く囁いて誘惑してくる様は、いつもとは違うことに気が付いた。


「んぅ」

「抱きたい…」


舌を絡ませ、深く口付けてくる。

唇の端からは唾液が零れ、斗真はコクリと飲み込んだ。


零れ落ちたものは蓮がぺろりと舐めとり、そのまま首筋を甘く噛む。

すると、ちくっとする痛みを感じた。


「…っ」

「痛かったか?」


キスで息があがり、まともに声を出せなかったのでふるふると首を振った。


「な…に…?」


何したの、と潤んでしまった目線で訴える。


「キスマーク。俺のものって証」


それを聞いた斗真はかぁっと顔が赤くなるのを感じた。


(きっ…きすまーくってっっ。な、なにソレって感じだよっっ)


急に艶かしくなった言葉に、わたわたと慌てる。

ぴちゃり、と卑猥な音を立てて顎のラインを舐め、耳の後ろ、首筋、鎖骨、と徐々に下へと口付けていく。


(え、もしかしてコレ、夢じゃ…ない?)


時折チクリと痛む感覚が、夢ではないことを告げているようだった。

征服の跡が熱を持っているような感覚がする。


「んっ」


これ以上キスしていないところなんてない、というくらい執拗にキスの痕跡を残されていく。

それでも熱っぽく見つめられると、蓮の愛情を感じて何も言えなくなってしまう。


「れ…んっ」


はぁっと吐息が零れる。

慣れないキスと情事で呼吸が乱れる。


涙目になって上目遣いで名前を呼ばれると、蓮は自分の欲情が掻き立てられるのを感じた。


「斗真…もう我慢できない」

「え…?」


大切に、愛おしさを込めて斗真を抱きしめ、とびきり甘い声で低く囁いた。



「お前が、欲しい―――」







1000PVありがとうございます!

読んでくださっている方がいらっしゃるというだけで活力になります。


蓮のエロさを上手く表現出来たらなぁ(苦笑)

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