厩の少女
「お主が城の前で倒れていた少女、ミーシャか」
「は、はいデストロ様。是非お城でお仕事させてください」
「今まで何をやっていたのだ?」
「村では、馬の世話を⋯⋯」
「おお、ではここでも馬の世話をするとよい」
「はい」
厩。
「立派な馬ですね、デストロ様」
「うむ」
「でも、手綱が見当たりませんね」
「ヌハハハハ、余が手綱を握ると千切れてしまうのだ、余は両手で物を持つと壊してしまうからな」
「そうなのですか⋯⋯」
翌日。
「どうだ、ミーシャ」
「あ、デストロ様」
「おや、不思議な手綱がついておるな」
馬の口の左右から、本来一周後ろに回るように繋がっているはずの手綱が、右と左それぞれ右側で一周、左側で一周、髭が垂れるようになっていた。
「は、はい、左右バラバラになるように作りました。口の中では繋がってますので壊れるかも知れませんが」
「どれどれ、乗ってみよう」
パカラパカラッ。
「おお、どうやら別々の物だと判定されたようだ」
「ああ、良かったです」
パカラパカラッ。
「いやあ、嬉しいな」
「乗馬はそんなに楽しいですか」
「いや、ミーシャが余の為に考えてくれたことこそが一番である、乗馬の楽しさはその次だ。本来なら抱きしめてやりたいが、そうすると壊れてしまうな、ヌハハハハ」
「まあ、デストロ様ったら」
デストロは嬉しそうに、日が暮れるまで馬に乗った。




