破壊と創造
本日四話目です
デストロはひとり、カッチンとメーラの結婚式の時に贈るため、壷職人の女の作業場で壷を作っていた。
「ヌハハハ、上手くできたな!」
満足いく出来映えに、機嫌を良くした。
「おっ、なかなか良いじゃないか」
その時、壷職人の女がちょうど買い物から帰って来た。
「ありがとうございます! 師匠には遠く及びませんが」
「そりゃそうだよ」
デストロは出来上がった壷を両手で持ち上げた。
「しかし、不思議ですな」
「何がだい?」
「いや、こうして物を持っても壊れないのは変な感じです。壊したくない、と強く念じなければなりませんが、それに⋯⋯」
「それに?」
「あの時、師匠の怪我も治してしまいました」
「うーん、私の考えだけどね」
「はい」
「おそらくアンタは、破壊と創造の魔神なんだよ」
「破壊と創造?」
「そうさ。何かを作り出すのも、何かを壊す事も、どちらも切り離せない。表裏一体なのさ」
「うーむ」
「アンタは今まで、自分が破壊神だと思いこんでいた。だからじゃないかい。自分の向き不向きなんて、意外とわからないもんさ」
「そうかも知れませんなぁ。しかし、壊してばかりの余が、何かを生み出せるなど、感慨深いですな、ヌハハハ」
「何言ってんだい、今までだっていっぱい生み出してきたじゃないか」
「えっ? 何をですか?」
「自覚がないのかい、しょうがないね⋯⋯知りたいかい?」
「是非!」
「ふーん、なら⋯⋯」
壷職人の女は、イタズラを思いついたような笑顔を浮かべた。
「もう一度抱きしめてくれたら、教えてあげようかね」
パリン。
デストロは持っていた壷を壊してしまった。
「ははははは、その程度で動揺するなんて。怖い怖い、これは答えを教えるのはしばらく先だねぇ」
「師匠! 意地が悪いですぞ!」
「ははははは」
──これは。
何もかも破壊する恐ろしい力を持ちながら、優しさを失わなかった魔神の周囲に、人々の絆と、笑顔が生み出されたお話。
─おわり─
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