壷職人のお願い
壷職人の女が、城へとデストロを訪ねて来た。
「やあ」
「おや師匠。珍しいですな」
「あんたに見せたい物があってね」
壷職人の女は、持っていた箱から壷を取り出した。
「うお! これはすごい!」
一目見て感動したデストロが、手を伸ばし、壷を持ち上げようとした。
「あんた、いきなり割る気かい?」
「おっとっとー! ヌハハハハ、止めて頂き感謝致します」
「ふん、昨日完成してね。アタシの今作れる最高傑作だ。あんたにやるよ」
「⋯⋯えっ? ええええええええっ!」
「こら、破壊神だからって、アタシの鼓膜を破ろうとするんじゃないよ」
「いや、嬉しいですが、本当にいいのですか?」
「いいよ。その代わり、剣を一本くれやしないかね」
「良いですとも! 一本と言わず全部でも構いませんぞ!」
「アタシゃ一本しか振れないし、遠慮しとくよ」
デストロが持っている中で一番の剣を用意すると、壷職人の女は試しに振ってみた。
「うん、いい剣だね。こんなもの良いのかい?」
「ヌハハハハ、この壷に比べれば対したものではありませんぞ!」
「なら遠慮なく」
壷職人の女は剣を受け取り立ち去ろうとしたが、途中で振り返った。
「デストロ⋯⋯様」
「なんですか? 改まって」
「いや⋯⋯剣ありがとう、じゃあ」
そのまま壷職人の女が立ち去り、入れ代わりの来客があった。
「おお、エナではないか」
「あ、デストロ様⋯⋯」
「なんだ、今日はあまり元気がないな」
「う、うん」
「何か気になる事でもあるのか」
「本当は、言っちゃダメなのかも知れないけど」
「もしダメなら、余はちゃんと秘密にしよう」
「うん⋯⋯さっきすれ違った女の人何だけど」
「おお、あれは余の師匠だ」
「あの人⋯⋯もうすぐ死んじゃう」
「何だと!」
エナは余命が見える少女だ。
デストロは慌てて追いかけたが、壷職人の女は見つからなかった。