疫病騒ぎ③
医者は「うーん」と唸ったのち、ポイゾナへと話した。
「実は、病気とは目に見えない小さな生き物がかかわっておるとの研究があるのです。
あなたはそれだけを殺す毒は作れますかな?」
「は、はい。魔神ゆえ、その生き物に名前をつけていただければ、自然とその生き物を殺す毒が作れます」
「なんと! すごい力だ。ではその生き物には『ネズミ菌」と命名しましょう」
「ネズミ菌ですね。⋯⋯はい、頭の中に浮かびました、少々お待ちを」
空の小さな壺にポイゾナが指を入れると、毒液で満たされた。
「これで大丈夫だと思います」
「おお、ではさっそくこれを患者に飲ませよう」
しかし、病気で苦しんでいるとはいえ、毒液であることを恐れ、口にする者はなかなか現れなかった。
しばらくして、ひとりの男が手を上げた。
「俺が飲もう」
「狩人様、私を信用して頂けるのですか」
「はい、私はあなたを誰よりも信頼しております」
狩人の男が毒液を口にすると、表情を変えた。
「うっ、こ、これは!」
「狩人様、大丈夫ですか?」
「いやあ、なんて甘くて美味しいのだ」
「は、はい。その方が、飲みやすいと思いまして」
「ははは、あなたは本当に誰よりも優しいですな」




