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前世聖女は手を抜きたい よきよき  作者: 彩戸ゆめ
エレメンティアード
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118話 魔法紋の製作

 エレメンティアードに向けてのリッグルに騎乗する練習がしばらくできないということで、属性魔法の時間はそれぞれ違う授業を行うことになった。


 他のクラスは的に正確に魔法を放つ練習をしているが、風魔法クラスの生徒たちは、的に当てるだけならば全員がマスターしているので、自由に課題を選ぶことになった。


「じゃあ私、魔法紋を刻む授業がいいです!」


 エルマ・バートが元気よく手を挙げる。


 エルマの家は魔石を扱う商家なので、完璧に魔法紋を刻むようにできれば、家の手助けになる。

 それにエルマは魔石に魔法紋を刻むのが好きだった。


 エルマは平民だ。そして平民の多くは魔力を持たない。


 けれども魔力を含んだ魔石に、魔法紋を刻むと、その魔法紋に設定されている魔法が発動する。


 魔力を持たなくても、魔法紋を刻んだ魔石さえあれば、その恩恵にあずかることができるのだ。


 だが高性能の魔法を発動する魔法紋が必要とする魔力は大きく、魔法紋を刻む魔石も大きくなってしまう。


 当然、高価だ。


 だからエルマは小さくて便利で、平民にも気軽に手に入れられるような、そんな魔法紋を開発したいと思っている。


「それより、もっとデカい魔法を使えるようになりたいぜ」


 椅子に浅く腰かけてだらしなく座っているのは、エリック・ハメットだ。

 さすがに机に足を乗せるのはやめたようだが、あまり良い態度とはいえない。


「私も大きい魔法の練習には賛成ですわね。エレメンティアードでも役に立つでしょうし、他のクラスも魔法の練習をしていると思います」


 ローズ・マイヤーもエリックに同意した。


「それなら精度を高めたほうがいいんじゃないか? 的の中心に当てないと高得点にはならないだろう」


 ランスの提案に、エリックとローズも頷く。


 エレメンティアードの的は、丸い円になっているのだが、その円は中心に近づくにつれて小さくなる。

 その中心に狭い範囲で魔法を当てた方が高得点になるのだ。


 一通り生徒たちの意見を聞いたポール先生は、黙ったままのマリー・ウィルキンソンとレナリアにも意見を聞いた。


「マリーさんとレナリアさんはどんな授業をしたいかな?」


 名指しされたマリーとレナリアは顔を見合わせた。

 マリーは引っ込み思案で、レナリアは目立ちたくなくて、発言をしていなかった。


 だからいきなり注目を浴びたマリーは、目に見えてうろたえ始めた。


「ええっと、あの……私は……その……」


 視線を泳がせるマリーと目が合ったレナリアは、ひとまず先に自分が意見を言うことにした。

 それまでにはマリーも言いたいことをまとめられるだろう。


「エルマさんとランスくんの両方の意見を取り入れてはどうでしょうか」


「魔法紋の製作と、魔法の精度を兼ねた授業ということだね。確かに複雑な魔法紋を正確に刻むことによって、精度は上がるけれど……まだそこまで授業が進んでいないから、どうだろう」


 ポール先生は顎に手を当てて考えこんだ。


 生徒たちにはまだ簡単な魔法紋しか教えていない。

 いきなり複雑な魔法紋を教えても、すぐには刻めるようにならないだろう。


「いえ、複雑な魔法紋でなくても、小さな魔石に魔法紋を刻む練習をすればいいのではないかと思いました」


 魔法紋を刻む時に、魔力をこめすぎると魔石が耐えきれずに割れてしまう。


 だからある程度の魔石を使って魔法紋を刻むのだが、小さい魔石を使って練習をすれば、魔力を放出する精度が高くなる可能性は高い。


 ポール先生は、レナリアの発想に感心した。


「それはいいね。ではどんな魔法紋を刻もうか」

「あの、実は作ってみたいものがあるんですけど……」


 遠慮がちにレナリアが小さく手を挙げる。


「うん。どんなものかな?」


「ペンなんですけど、私の手には大きくて。だから小さくできれば使いやすいと思います。小さい魔石を何個か使ってそれが連動できるようにすれば、今よりもペンを小さくできるのではないでしょうか」


 ペンの先端には魔石がついていて、そこに内蔵されたインクが適切な量でペン先に届くように調整する魔法陣が刻まれているのだが、小指ほどの大きさがあって重い。


 もっと小さな魔石にすれば軽くなるのだろうが、そうすると魔力が足りなくなって魔法陣が発動しないのだ。


「連動か……。それは難しいかもしれない」

「軸に、トレントの枝を使ってみればどうでしょう」


 レナリアがオリエンテーリングでトレントと遭遇した時に思いついたアイデアだが、この機会に挑戦してみたいと提案してみる。


「なるほど……」


 そこへエルマが勢いよく手を挙げる。


「はいはいはいはい! 先生、良かったらうちの商会でペンを用意できます! もしなんだったら魔石も用意できます!」


 貴族用のペンはカルダーウッド商会がほぼ独占しているが、女性用の軽いペンをエルマの実家のバート商会が開発できれば、きっと大人気になるに違いない。


 根っからの商売人であるエルマは、実家の商会を発展させるチャンスだと張りきった。








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【マンガがうがう】にてコミカライズ連載してます
『前世聖女は手を抜きたい よきよき』
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