プロローグ
「どれが好みでしょうか」
両手を擦り合わせながら商人が言う
「おい、こっちを向け」
黒髪、赤目の冷めた目で見つめる男の先には檻の中のボロボロの金髪ロングでやせ細った身体の女の子
「こちらは14の成人済みになりますが」
女の子はゆっくりと男の方に振り向く
女の子の顔にうつされた表情は無
「フッ、これでいい」
男は満足気には笑い、商人の方を向く
「ありがとうございます、では印を」
商人は檻の中の女の子を引きずり出し、胸元に印を書く
「これで主従関係が成り立ち、正式にあなたのものです」
女の子はその間も無表情で床の一点を見つめていた
「そのまま持ち帰る」
男は再度女の子を見て首輪に繋がる鎖を手に取った
「かしこまりました、またお待ちしております」
商人は少し頭を下げ男を見送った
外は明かりもなく、月も雲で隠れ静寂な夜
薄汚れた街並みには路上で一夜を過ごす人が至る所にいる
その暗闇の中、鎖の音が響く
「雨が降りそうだな...」
男は鎖を持ったまま、早歩きで歩こうとすると女の子が急に止まった
「おい、歩け」
男は振り向き鎖を強く引くが女の子は動こうとしない
「そうか」
へたり込んだ女の子を見て男はそっと抱き抱えた
そして心地よいそよ風が吹くと同時に女の子を抱えた男が夜空に消えていった