表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

27話:若葉 対 紅葉 3

若葉ちゃん視点

「聞こえなかったのかしら」

 「こんばんは若葉さん」

 「紅葉先輩なんですか?」


 ニコリと笑いながら少女が肯定する。

 二人の距離は10m程だろうか、ゆっくりと紅葉が近づいてくる。

 若葉はゆっくりと近づいてくる紅葉に対して半歩後ろに後退る。


 「そんなに怯えないでよ」

 「そりょあ怯えもしますよ」

 先程まで死闘をしていたのだから警戒するなと言う方が無理がある。


 「ああ、あれは警備員みたいなモノなのこの町って今物騒でしょ、だからね」

 「ほとんどの厄介事はアレで片付くんだけどね」

 紅葉は指先をくるくる回すと辺りの影から先程、若葉と死闘を演じた強敵が、7~8体若葉を取り囲む様に現れた。

 「で、一応ね、数体で襲わせようかと思ったけど」

 「吸収されていくのもアレだからね、直接来ちゃった」


 「ちょっっちょと待てくだささいよ」

 「どうしたの若葉さん」

 「どうしたのじゃ無いですよ、なんで殺気から出会ってすぐバトルなんですか?」

 「ポケモントレナーなんですか」

 「話合うって凄く大事ですよ武力じゃなにも生まれませんよ」


 「分裂体とは言ってもアレを倒した若葉さんに少しばかり敬意を表して話合いをしてもいいですよ」

 「それと紅葉先輩なんなんですか、先程からなんかちょっと喋り方変ですよ」

 紅葉がちょっと気恥ずかしそうにしながら

 「いやだって、、、わかるでしょ」

 「わかるかー」

 「お前、せっかくのラストバトルの雰囲気を台無しにする発言連発やめろまじで」

 「なにが、ラストバトルだゲームでもやってるつもりなんですかー」


 「敬意を表してキリ、話合いをしてもいいですよってドヤ顔で言われましても」

 「あなただって、結構ノリノリでそう言う事いってたよね」

 「例えば、この力の事が解ってきた  とか言ってなかった」

 「なにも解ってないのにね」


 「紅葉先輩すいません、謝りますから辞めませんかこの会話」

 「・・・そうね」


 と言いつつこんなやり取りが数分続いたが、途中でお互いに飽きてきたのか、


 「本題に入りましょうか」

 「了解です、先輩」


 「まず、お互いの目的をはっきりしましょう」

 「そうですね、先輩」


 「私の目的は、ユウキ先輩を元気にする事です、その為にユウキ先輩のお姉さんをこの力を使って探し出して連れ戻すのが私の目的です」


 「私の目的もユウキちゃんを元気にする事よ」

 若葉はなにか言い知れない不安が過る。

 「でもね。若葉ちゃん、なんでトモエさんを連れ戻すの?」

 「ユウキ先輩が元気が無いのはトモエさんが目の前から消えたからですよね」

 若葉は紅葉がなにを言いたいのか、良く解らなかった。

 そう言えば、事件後トモエの事を覚えている人がドンドン居なくなっていった。

なぜ、そうなってしまっているのかは解らなかったのだが、先程の紅葉のセリフが引っかかる。 


 「トモエさんは危険だと思わない」

 「だって私たちのこの力だって彼女の力の一欠片に過ぎないのよ」


 「えっそうなんですか」

 「あらあら、この力が解ってきた(キリ)若葉さん(笑)」


 「脹れ面も可愛いね若葉ちゃんは」

 

 「まぁ、私も最初はこの力を使ってトモエさんを探し出して連れ戻すって言う想いに突き動かされていたのと同時にこの影?みたいな力を集めることをしていたのだけど」

 「途中でふと疑問に思ったのだけれども、()()()()()()()()()()()()()()」 


 「だってそうでしょ、若葉ちゃん、彼女を探し出して連れ戻すのとこの力の関係性に疑問を覚えなかった違和感に気付いてからは私は」

 「怖くて怖くて怖くて堪らなく怖くて仕方がなかった彼女の事が」


 「紅葉先輩何を言ってるんですか」

 若葉の言葉は紅葉には届いてるのか不安であった。

 焦点が合っていない虚ろな目で紅葉はツラツラと語り出す。


 「この力の持ち主を考えると怖くて怖くて、だってそうでしょ」

 紅葉が手を軽く回すと先程、若葉と死闘を演じた、化物が数体生み出された。

若葉を取り囲んだその化物は一斉にすっと腕を動かすと若葉の周囲の道路は抉れ、壁は切断され、街灯はバラバラになって崩れた。


 「その気になれば町の人を数時間もあれば皆殺しに出来る様な力が」

 「彼女の力の一部に過ぎないのだから」

 「そんな強大な力を持った彼女が怖いと思うのは普通の事でしょ」


 それは、私たちも一緒なのでは無いだろうかと若葉は思う。

先ほどの探偵達も自分を化物として見ていただろうし、正直私から見ても

紅葉は化物しか見えないのだから・・・


 「だから、私はトモエさんが帰って来れないように色々としたの」

 《・・・・》

 「・・・・」


 「でもね、それだと駄目なの、このままでは駄目なの、ユウキちゃんの姉に対する想いだけは消す事が出来ないの、色々試してみたのだけれどもね。これだけは駄目なの」


 「だからね仕方なかったの、こうしてあげないとユウキちゃんを救う事ができなかったの」


 「あなたは一体なにを言ってるの」


 ユウキ先輩が、小走りでやって来るのが見えた。


 「()()()、食事中に急に飛び出してどうしたの」

 紅葉の裾を掴みながら、ユウキ先輩がとても穏やかな笑顔で

 「急に居なくなって心配したんだよ家に帰ろう」

 「ごめんね、ユウキちゃんちょっとアイスが食べたくなっちゃってね」


 先程まで荒れ果てていた道路や壁は気付くと直っている、化物も消えている。


 そんな姿を見て呆然としている若葉にユウキは話し掛ける

 「あれ、どうしたのかな、また迷子になっちゃたのかな若葉ちゃん」

 屈んで目線を揃えて若葉を見ている。


 若葉はその場から逃げ出す様に走り出した。


 今回はユウキ先輩は追いかけて来てくれなかったが、若葉はその場に居ることが出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ