25話:若葉 対 紅葉 1
若葉ちゃん視点
若葉は先ほどの会談で得た情報を咀嚼しながら考える。
自分の現在の状態は・・・若葉という少女の記憶は確かにある。
あるにはあるが、どこか朧気だったりする。
ユウキ先輩に関する記憶もあるのだが、若葉が出会うずっと前の
幼い頃の甘えてくるようなユウキ先輩の思い出がある・・・
あの悪魔のような少年を吸収したときは、全てがクリアになった様な
気がしたが、まるで夢のように少ししたら具体的には家に帰って寝たら
綺麗さっぱり忘れてしまった。
でも、ユウキ先輩を助けないといけない気がする。
そんな気持ちだけは強く強く残っている。
それに突き動かされていたら、様々な情報を得られる事が出来た。
そういえば、友達が一休先輩とはどうなったの的な事を聞いてきたが、
えっなんの事?って聞き返したら
哀しそうな目をして、購買で一番高いハムカツDXバーガーを奢ってくれた。
なんでだろう?よく解らなかった。
ユウキ先輩を助ける=お姉さんを発見することだろう
しかし、正直聞き込みをした所で、それほど捜索に関して有力な情報を得られなかった。
だけど、捜索とは逆に奇妙な違和感を覚えた。
私が、あっちこっち聞き込みをしていたら、学園で不審人物が補導されたらしい。
ユウキ先輩のお姉さんトモエさんの失踪もしかしたら誘拐事件かもしれない事が起きて
間もない事だったので、すぐにその不審人物は警察に連れて行かれたようだった。
足での聞き込み捜査の後は、自宅で少しでもトモエさんの失踪についての情報が無いか
質問板や地元のSNSのグループへの聞き込みをしたが、それほど酷い対応はされなかったが、
殆ど役に立ちそうな情報は無かった。
セクハラ紛いの酷いコメントとか、上から目線の説教とかはあったけど・・・
そんな中、探偵活動をしているという人からダイレクトメールが届いた。
そこには、今までの人たちとは違い、私もトモエさんの捜索をしている者なのですが、
お互いに情報を共有して、捜索を進めませんか?と書かれていた。
正直そういったメールでは無くても書き込みはいくつかあったが、
この文面にはあの奇妙な違和感について書かれていた。
この人はあの奇妙な違和感を知っていると言うことは、独自に調査をしている。
ただの冷やかしじゃない、もしかしたらこのトモエさんを発見出来るかもしれない。
《でも、この間まで小学生だったガキがまともに相手して貰えるかな》
なんか頭に響くこの声は
《少し驚かすぐらいの事して只のガキじゃないって見せてやらないと》
なんか、どこかで聞いた事があるような、無いような
《とりあえず、周囲の人間全員操ってみせようぜ》
えっ?そんな事どうやって出来るの?
《大丈夫、大丈夫、任せて》
なんだか頭がボーっとしてきた。
彼の声は?ハスキーな女性の声にも聞こえる声を聞いているボーッとする。
翌日、一応探偵とは会うことにした若葉は放課後に駅前の喫茶店に向かう事した。
一目で彼女には気づいた。なんかオーラ?みたいなモノを感じた様な気がしたから
そして、店内を見渡すと私とその彼女を意識している人物が奥に座っているのがわかる。
なぜか、わかってしまう。なんでだろう、私そんなに鋭い方じゃないのに。
やっぱり奥に座っている男はこの女性の関係者だった。
男はタカナスさん、女はフジさんと言った。
二人ともお似合いな感じな若い男女だったが、ヤバいヤバいよ。
大分年上な二人が、それだけなんかペースを握られちゃってるよ。
情報を共有する事自体は出来たけど、なんか解ってた問題の答え合わせみたいな感じだし。
話も佳境に入ろうかという時にフジさんから
「それであなたの目的を教えてくれないかしら」
えっと?今更?トモエさんを見つける事以外ないでしょ??
もしかしてフジさんって頭悪いのかしら
「つまり、トモエさんを探し出すと言うことね」
いやいや、そんな事いちいち確認することかな。
「若葉さん、あなたとトモエさんの接点て何かしら」
接点?特に無いけどユウキ先輩のお姉さんって位だけど。
《これは誘導尋問って奴だね、多分淡々と簡単な恣意的な質問を投げつけて
自分達の本当に答えて欲しい質問を混ぜたり隠してる事を聞き出そうとしているよ》
嘘、汚い、大人は汚い
《落ち着いて、リズムを狂わすだけでいいからソレで回避しよう》
とりあえず、相手が聞いてきた質問と似たような問い掛けをしてみようかと思ったけど
ストレートにトモエを探す目的を聞いてみたが。
つまらない答えが返ってきた、売名行為とそれによる商売を繁盛の為だと。
要約すると『金が目的だ』なんだか、こんな人と一緒に捜索するのが馬鹿らしくなってきた。
《とりあえず適当に鎌かけてみなよ、油断してるからボロだすかもよ》
「嘘は付いていないけど、本心は隠してる感じかなタカナスさん、
一度だけ警告してあげるから本心が聞きたいな」
本心と言われて、タカナスはユウキ先輩への想いを語りだした。
えっ?ユウキ先輩はスタイル良いけど中学生、この人はどう見ても20代中頃ぐらいかな
えっと、そう言えばこの人、見覚えあると思ったら練習を覗きに来てる変態じゃん。
ヤバい人だよー早くここから帰りたいよー
若葉が少し動揺していると、この不思議な力について聞かれた。
誤魔化そうとしたが、嘘だと断言された。
このままシラを切ろうかと思ったが、お兄さんの眼力にちょっとほんのちょっとだけ
ドキドキしてしまった。お兄さんぶっちゃけ顔は悪くないから真っ正面から
見つめられると心臓に悪いんだよ二重の意味でドキドキだよ。
誤魔化すのが無理そうなので正直に答えてた。
「自分自身にも良く解らないから答え様がないのだけれども、
トモエさんを探し出す為にこの力を使うのに葛藤はない」
しっかりと若葉はタカナスの目を見て言い返したのだが、次の言葉に若葉は
またしても心を揺さぶられるのだった。
「じゃあ次の質問だけど、若葉ちゃん君は何故ユウキちゃんの所に行かないんだ」
本来であれば、若葉だって真っ先にユウキの元に行きたいし、
彼女こそが最後にトモエさんと一緒に居た人物なのだ。
なぜ、そんな重要人物に直接会いに行かずに自分は周りの聞き込み調査なんていう
遠回りをしているのか・・・
《仕方ないよね、ユウキさんの隣にはアイツがいるんだから迂闊に近づけないよね》
うん・・・そうだよね、迂闊には近づけないよね・・・
まあ、でもこの情報をこの探偵二人に話してどうなるかはわからないけど
適当にそれぽっい話をして様子を見るのもいいかも知れないし。
タカナスっていう人はともかく、フジっていう女性は役に立つかも知れないし
そんな事を考えているとフジという女性から爆弾発言が飛び出した。
トモエさんを連れ戻すにはもう一刻の猶予も無い。
いつ、突然終わるかもしれない時限爆弾があることを告げられた。
こんなの迂闊には近づけないとか言ってる場合じゃないよ
《・・・・・・》
私の中から聞こえて来てた声が何か言いたそうそうだったけど、
私はユウキ先輩と一緒に居るであろう、紅葉という名の化物に逢いにいくしかないと
覚悟を決めるのであった。




