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20話:探偵2

 変態いや探偵ことタカナスは貧乏だ。

 「貧富の格差を無くすことが、幸福への一歩だと思わないかフジ助手よ」

 フジと呼ばれた女性はソファに寝転んで昼間からスマホをいじりながら

 「ええ、そうですね」

 気のない返事をしている。


 「だが、現実はどうだ、富は上位1%が半分近くを占めている」

 「ええ、そうですね」

 「残りの半分だって均等に配分されている訳では無く

 格差はこの日本ですら年々拡がりを見せている」

 「真面目に聞いているのかねフジ助手よ」


 「ええ、一応聞くだけは聞くつもりだったんですけどね」

フジは先ほどから意味の無い冗長なタカナスの抗議を長々と聞いていたが、

あまりにも話が飛び飛びになって、真面目に聞く気が失せていたのだった。


 「私は、この大量のユウキさんの盗撮写真について弁明を求めただけなんですけど?」

フジはソファで寝転んでいた姿勢を元に戻して半眼でタカナスを睨む。

 「ある意味怒る気も失せてきましたよ」

 

 タカナスのユウキ姉妹が両親を亡くした姉妹への熱い語りから、この国の福祉の充実ぶりや、

施設の環境に馴染めない姉妹がなんとか姉のバイトと最近は妹のTVのCMなどで

また、姉妹仲良く二人暮らしを出来るようになった事なのだから、

ユウキ姉妹の魅力を延々と語りだして、貧困について語り出した所だった。


 「ちなみこの事務所だってものすご~く貧乏なんですよ」

フジが言いたい事はタカナスは耳にタコだ。


 「「こんなお金にならない事に精をだしてる暇はない」」

見事にハモってタカナスは笑うが、フジは膨れる。

 (かわいいな)


 「良いですか、改めて確認しますけど今月この探偵事務所への

 依頼は1件で先月は3件です、諸経費を含めると赤字ですよね」


 「まあ空いてる時間を利用して様々なバイトをこなしてはいますが

売れない芸人みたいな状態なんですよタカナスさん」


 「そんな売れない芸人が出されてもいない依頼で人捜しなんて」

 フジは一旦呼吸を整えてから

 「正気とは思えません」


 「ちっちっ」

 人さし指を立てて大きく左右に振りながらタカナスは、再度

 「ちっちっ」


 (ああもうこの指へし折ってやろうかな)


 「いいかい、フジちゃんこの事件を見事解決出来たらどうなると思う?」

 「解決できないと思います」

 「ズコー」

 「あのねフジちゃん夢を見ようよ、希望を持とうよ、」


 「人捜しの依頼の達成率が警察よりも探偵の方が高いのはしっていますが、

それは全国に支店を持つような大型な探偵事務所での話であって」

 「従業員2人の地方のコンビニより少ない場合は話は変わってきますし」

 「人捜しの達成率はたしか30%ぐらいでしたよねウチは」


 「過去の実績で判断すると、未来の可能性も無くなってしまうよ」

タカナスは力強くフジを説得する。


 「 それに我々には他の探偵事務所には無いアドンテージが有るでは無いか 」

 タカナスが今まで隠し撮りしていたユウキの写真が散らばる机に目を向ける

 フジは思わず目を逸らしたくなる。


 「私が、こんな時の為に地道に調べ上げたユウキさんの交友関係」

 「トモエさんの交友関係は不明だが、笹目中高一貫校の高校生で

 トモエさんと同じクラスの2―C組の生徒に対象を

 絞り聞き込み調査をしよう、1年時のクラスはB組だったが念のため

 そちらの方の調査も頼むよフジちゃん」


 「私は中学校の方を調べてみるからね」


 フジは深いため息の後に、タカナスの指示に従わずに、陸上連盟に赴くのであった。




 その日の夕方。

 笹目中学校に不振な男がいると通報があった。

 通報を受けた警察官は直ぐに連絡のあった男を確保。

 その後事情聴取の為、警察署に連行した。



 その夜に向かいに来たフジにより釈放された。。。


 「フジちゃん怖かったよーーー」

 「抱きつくなロリコン野郎が」

 フジがタカナスのほっぺを思いっきり摘まみ上げる

 「ふぁふぁ」


 フジはどや顔で、1枚の紙を見せつける。

 「陸上連盟から今回の件を依頼として取ってきましたよ」


 タカナスが中学生に付きまとっている間に、フジは今までの

 タカナスの集めた資料をまとめて、文章にして日本連盟にメールを送付したのだった。

だが、メールだけどは、無視されるのがオチなのは解りきっている。


 メールの送り先は過去にタカナスとフジに行方不明になった子供を探してもらった役員だった。

無論弱みにつけ込むとかでは無いが、大切な子供を一時とは言え無くした親御さんには、

ユウキ選手の気持ちが良くわかるだろうし、ユウキ選手という希代の天才を

このまま行方不明者を発見出来る可能性が3割程度の警察に任せて置いていいのか、

今すぐ我々に任せて欲しい。我々も独自に調査をするにも限界があるで

陸上連盟の輝く未来のスーパースターの為にも我々の為にも

陸上連盟からトモエの捜索を正式な依頼として受けたい」


 フジは真摯に役員に伝えて役員もその真摯さに心打たれ了承したのだった。


 決してフジに対して邪な想いがこみ上げて、今回の事件中にグフグフとか

では無いのだと、強く強く否定させてもらいたい。



 そうしてフジは警察に正式な依頼でありこれは調査の一環であると

警察に伝えて、警察も陸上連盟に確認を取り、無事に釈放となったのだった。


 「タカナスさん」

 「ふぇ」

 フジに抱く付くように甘えようとしたタカナスがいつに無く

マジトーンのフジに対して、これ以上はふざけない方が良いかなと思う


 「わたし、実はトモエさんのクラスメイト10人ほどに

 聞き込みをしたんですけどね、この事件ちょっと異常ですよ」


 表情は真剣そのものだったが、フジの口元は

新しいおもちゃを与えられた子供の様に笑みが零れていた。

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