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17話:若葉ちゃん2

 一休という少年を覚えていますか?


 肝試しの日に後輩の若葉ちゃんから告白された陸上部の先輩ですが、

彼はどうなってしまったんでしょうかね。


 時間を少し遡ります。


 肝試しの日、いろいろな事が終わってしまったあの日。

すでに町全体を覆っていた。『よくないモノ』がおおよそ片が付いていたのです。


 若葉は小柄だが運動神経抜群の女の子だった、小学生の時からかっけこが早く鬼ごっごでは若葉が鬼ならすぐに捕まってしまうし、逆なら誰も追いつけなかった。

 4年生ぐらいまでなら男子にすら若葉より早い子は居なかったと記憶している。


 だが、小さな体躯によるハンディは年齢を重ねる毎に重く重く若葉に乗りかかっていった。

いつからだろう七夕の短冊には背が高くなりたいと書くようになったのは、、、


 「ちいさくて可愛いね」と言われて嬉しくなくなったのはいつからだろう、小学生の時から運動系の部活に所属していたので、小さい事が良かった事など一度もなかった。


 だからデカい女は嫌いだし、人の頭を肘掛けがわりにする男の拗ねには蹴りを入れてやる。

 「あれ若葉~若葉が消えたぞ」と目線を若干上にして、つまらない惚けをかます輩には腹パンだ。


 自身のコンプレックスからか、中学で最初にユウキ先輩と会った時は些細な事で口喧嘩してしまった。


 「あれ、君迷子かな大丈夫かい」

入学前に一度訪れた中学をキョロキョロしていた私に屈むようにして目線を合わせて、ユウキ先輩は声を掛けて来たのは覚えている。

 「うっさい、話し掛けるなこのウドの大木が」

 当時の自分は無性にイライラしていたのを、覚えている。

なんでそんなにイライラしていたかは、恐らく同学年の中でも小さかった私は成長期というだけで背を一段と伸ばした、中学生達にイライラしていたのだ。


 その中でも、男子と比べても見劣りしない背の高さに、整った顔立ち、サラサラのロングヘアー、ロングヘアーに関してはどうやって手入れしたらそうなるのか仲良くなってから聞いたが特になにもと言われてしまった、、、とりあえず今は同じシャンプーをつかっているが、、、


 そんな自分の欲しいモノを全て持っているユウキ先輩に初対面なのに、激しく嫉妬していたのだと想う。

 「どうしたのかなお母さんやお友達とはぐれちゃったの?」

 「ここは人が多いから疲れちゃったのかな、お姉さんがジュース買ってあげようか」

 「あっそういえばお名前はなんてゆうのかな?わたしはユウキだよ」


 突然くそ生意気な小学生に暴言を吐かれても嫌な顔一つせずに、穏やかになだめるように話かけ続けるユウキ先輩に子供扱いされていることが気に食わず。

 小さな体躯を活かして人混みをかき分け逃げようとしたが、あっさり周り込まれた時は、ぞっわとした。なにがとは言わないがぞっわとした。


 当のユウキはと言うと

(うわ~この子小さくて可愛い、小動物みたい)

(さっきから両手で自分の裾を掴んで唇震わせて「この馬鹿、、、あっち行け」って涙目になって)

(なんか、こうゾクゾクとしてきたな、なんだろこれは小さい時のお姉さんみたい)

(いや、お姉さんは今でも小さくて可愛いけど、あ、急に走って危ないな)


 「勝負よ」

ユウキを指さして若葉は言った

 「わたしが勝ったらもう二度と近づくな」

 「いや」セリフの途中でユウキはニッコリ笑いながら答えた。

 「  」若葉絶句

 「いやじゃないから、とにかく駆けっこで勝負よ、わたしが勝ったらジュースを買ってきなさい」

 とりあえず、ジュース買いに行っている間に逃げてやる。

 「うん、いいよ、じゃあ私が勝ったらお名前教えてね」

 「勝負はなんにする?ジャンケンとかぐらいなら勝てるかもよ?」

 若葉はグランドを指さして、胸を張って答える

 「勝負は50メートル走よ」



 あれから、1年以上が過ぎていた。

 中学に入り、陸上部で先輩後輩になったが、未だに若葉は一度もユウキに勝てていない。。。


 そんなかつての凜々しくも優しい先輩はある事件がきっかけで見る影も無くなってしまった。

 正直あんな状態の先輩を見るのはつらかった、一度だけお見舞いに訪れたときの事を思い出す。


 「先輩、先輩が好きなクリーム鯛焼き買って来ましたよ」

 「・・・・・」

 「えっなんですか?先輩、、、うわゴミだらけで暗い部屋に居たら病気になりますよ」

 「ヵ・・・・」

 「ゴミ袋あります、ちゃちゃと片付けちゃいますよ、カーテンも開けましょうよ」

 「・ぇ・・・」

 「先輩何日お風呂入ってないんですか、部屋のゴミも散らかってるし」

 「・・・・て」

 「先輩、、先輩、、」

 若葉は裾を掴んで唇を震わせていた

 小さくてか細い声だったが先輩が拒絶しているのが解ったから、

 本当は最初から解っていたから・・・

 明らかにゴミだけを片して、鯛焼きをユウキの手の届く所に置いて若葉は帰った。


 若葉は次の日から2週間近く学校を休んだ。親が心配するので学校にはインフルエンザと嘘を付き、学校に行く振りをしつつ2週間近く町を徘徊していた。


 この行動により若葉の物語は終わりを迎えてしまったが、それはどうしようもない物語の始まりにつながっていく。

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