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14話:悪魔くん2

トモエは困っていた。どうしようもない程に困っていた、なにしろここは何も無い空間だったのだから、本当に何も知覚出来なけいし、自身の感覚さえ全てが曖昧な訳のわからない空間。

 時間の感覚さえ曖昧で、いくら考えても考えても答えなんか出ないし、大声を出そうにも声すら出ない、自分は死んでしまったのだろうかとすら考えて、いっそ無に成れたらと気分的に目を閉じる振りだけどもしてみる、無論ここはずっと常闇な上に体の感覚が無いので何も何も変らないのだが、怖くても哀しくても泣く事も叫ぶ事も出来ないし、かと言って今の所発狂することも出来ない。


 どれだけの時間が過ぎただろう、1日も過ぎて無いのかもしれないし数年過ぎているかもしれない、言いようのない不安と恐怖が絶え間なく襲ってくるが、どうすることも出来ない。

 寂しい、寂しい、妹に会えないのがこんなにも寂しい事だったのかと、泣けるなら叫べるならどれだけ楽になれるかわからないけど、この空間ではどちらも不可能だった。


 妹に会いたい、会いたいと一心に願うようになって、どれだけの時間が過ぎたのだろうか、その想いがやがてこの空間では形を持つようになってしまった。

 この空間をそんな想いが埋め尽くしていく逢いたくて、逢いたくて、どんどんと気持ちが募っていく、そんな想いの大質量がこの空間の中を一杯にした事で、トモエにはおおよそのこの空間の範囲が解ってきた。だいたい、妹と一緒に居た公園ぐらいの広さであると自分から放出した想いの量で確認する。


 やがてその想いは人型を形作る、その人型はこの空間を自由に動けるようなので、想いの塊を利用して、この空間を出ようとし出したが、想いの集合体である自分なら出られることは解ったが、トモエを連れ出す事は不可能だった。


 だがトモエが居る内側とユウキが居る外側、両方からならトモエを引っ張りだせるかもしれないと考えて、酷く心配だったが、トモエをここに残して、外側に行くことにした。

 その際にトモエとの繋がりを強める為にトモエから名前を貰った。

 トモエの「エ」を一文字変えて「トモキ」


 ところが、出る時にトモエを連れ出す為の『想い』が拡散してしまったのだった。そして自身の事すら、拡散してしまったので、自分がトモエを連れ出す役目すらすっかり忘れてしまった。只『想いを集める』事と、『ユウキに逢いたい』という欲求だけに突き動かされていた。


 また外側に来た事の影響なのか、『想い』は力に変わった。比喩ではなく本当の特殊の能力に、なぜユウキにはこの想いの場所が解ったのかは、逆に想いの方がユウキに逢いたっかたのだ。






 悪魔ことトモキは若葉の事を観察する。

 「あんたはこのよくわかない力に付いてなにか知ってるの?今すぐ教えなさい」

 若葉の声のトーンから察するには、まだ悪魔の残滓が体に定着していないのだろう。いくら都合の良い協力者でもこのままでは2人で挑んでも1人で挑んでも、あのバケモノには何の効果も無いだろう。

 「仕方が無い、付いて来い」

 若葉は心配そうな顔をしていたが、意を決して悪魔の誘いに乗る事にした。いざとなったらこの少年になら勝てると踏んだのかもしれないのだが。


 人気の少ない公園を選び、簡単にこの能力と紅葉の危険性とあのバケモノの事を教える。

教えた上で少女の能力の練習をとことん付き合った。

 若葉はあっという間に自身の能力を使いこなせる様になっていた。


 これならあのバケモノに対して今なら上手く行けば倒す事が出来るかもしれない。あとはタイミングと時間との勝負になった。作戦を若葉に伝えていく。

 無論、若葉は良く知らない紅葉さんに恨みを一切持っていなかったが、この悪魔の残滓を集める為にはある程度は仕方ないと悪魔の作戦に乗る事にした。


 作戦自体はシンプルで恐らく明日はユウキと紅葉は悪魔の残滓集めの為に、町中を探す事になるだろうが、影を利用してそれを追跡していく、音楽室の時みたいに、強力な力の残滓に逢っても、あの二人なら難なく倒す事が出来るかもしれない。


 だが戦闘中なら多少は隙が出るかもしれない・・・そこを狙う。

恐らく、つけ回している事にも気付くかもしれないが、まるで問題はないだろう。やること自体はそれほど変わらない・・・

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