13話:悪魔くん1
紅葉さんの襲撃で唯一のアドバンテージを失った悪魔くんの明日はどっちだ。
《悪魔君視点》
紅葉が奇襲を掛けた時に思わず逃げ出してしまったが、出来る事ならユウキを一緒に連れ出したかったが、その場合は自分は紅葉に消されてしまうのはほぼ確実だったろうし、しょうがないと諦めた。
ユウキの姉が行方不明になった公園で今後の方針を考えてるとたまたまとは言え、悪魔の残滓を発見出来たのは幸運以外の何物でもなかった。
悪魔の能力に付いての紅葉の考察は概ね当たっていた。
1つは、存在を曖昧にする
1つは、影を操る(恐らく少し弱体化しているのでは無いだろうか)
確かに先ほどまで影を操る能力は弱くなっていたが、悪魔の残滓を吸収することによって、弱体化の部分の解消は出来たが、こちらが圧倒的に不利でありそれが時間と共に不利が拡大するのは明白だった。
ユウキ先輩を失ったのが痛すぎるというか詰みに近い、恐らくあのバケモノに勝てる唯一の道が、ユウキ先輩と一緒に悪魔の残滓を集めて戦力を整える事ぐらいだったろうに・・・
「ユウキ先輩に会いたいな~」
そのユウキ先輩を見捨てて逃げ出した自分がこんな事を思う自体最低なクソ野郎だけど。
とりあえず影の一部を使ってユウキ先輩を尾行して、悪魔の残滓との戦闘中に奇襲を掛けてあのバケモノを倒してしまおう、そして存在感を曖昧にして認識をぼかしてとりあえずもう一度ユウキ先輩と行動を共に出来るようにしようか。
ハッと気付いてしまった。あの音楽室の時にあのバケモノはなぜあんなタイミングで出てきたのかを、今自分がしようとしている事と同じ事を実際にしただけなのだと。
ということは、当然警戒はされるだろうし奇襲を防ぐような手段を考えているかもしれない。かと言って自分もユウキ先輩なしで、探知機なしで悪魔の残滓を集めるか?はっきり言ってこんな風に見つけられるなんて本当に幸運以外の何物でも無いのだ。
これだけの大物を見つけられたのも2週間ぶりぐらいなのだから・・・
あのバケモノに勝つ為には自分以外にも協力者が必要だ。ユウキ先輩を取り戻す為にも
とりあえずそんな事を考えながらも悪魔は、影を操り続けていた。複数にばらけさせた影であっちこっちと町中を悪魔の残滓を探索させる。それで発見次第捕獲出来ればいいが基本はマーキングをして、その現場に向かうのだが、同じ様に集める者が居るのかそれとも他の悪魔の残滓と融合して場所を移したのか、空振りに終わる事も少なくないし、吸収してもさっき公園で吸収したのが20ぐらいだとすると、大抵は1とか2で、3以上ならば良い方かもしれない。
そんな感じで今夜も悪魔は影であっちこっちを探索させながら悪魔の残滓を集める。なぜ集めるかは正直わからない、睡眠欲や食欲や性欲なんかの3大欲求に近いぐらいの感覚ではあるので、その先になにがあるのかはわからないけど、全ての残滓を集めるまでは止まれない。
その欲求が悪魔の残滓を集めるほどに強く、強くなっていくのだから
協力者を募っても仲間割れになるかもしれないなと思っていたら、影が小さな悪魔の残滓を見つけた。とりあえずそちらに向かう、どうか残っていて欲しいと思いながら。
悪魔が現場に着いた頃には、結論から言うと悪魔の残滓はそこには無かった。そこには一人の少女が立っていた、マーキングしていた自分の影を足で踏んづけて動けないようにしてこちらを見つめて待っていた。基本的に存在を曖昧にしている自分を完全に把握できるのは同様に能力を持つものだけだろう。
経験則からそう判断したが、正直悪魔には相手の能力や強さは実際に見てみないとわからない。向こうもどうかはわからないけれど、とりあえず交渉する所から始めてみようか。
「やあ、こんばんは良い夜ですね」
和やかに話し掛けてみた、まるで端から見たらナンパかもしれないけど
「これ、あなたの」
少女は足で影を踏みながら問いかけてくる、もう目が獲物を見る目なんですけどね。
「そうなんです、いやーなかなか戻ってこないから心配してたんですよ。出来たら足をどかしてもらえると助かるんですけど」
少女はこちらを見つめたまま足をどかそうとはしなかった。でもこの少女には見覚えがある、昨日肝試しに来ていたな、で最後の組に選ばれた。たしか名前は
「若葉ちゃんってそんな性格悪かったの引くわー」
「なんで私の名前を知っているの初対面じゃないの?」
少女の顔が一瞬強ばった。なんで自分の名前を知っているのか解らなかったのだ、その様子から悪魔は自分の方が今の所強いのだろうなと大まかに予測を立てる。
この少女、若葉がこの力を手に入れたのは肝試しの後だろうと結論付けたからだ、もしも肝試し以前から力を手にしていたら、能力者同士は逢えばおおよそ解るし、自分の様に存在感を曖昧にしていても逆に目立って記憶に残るだろう。だけどこの少女は初対面だと思っている。
これなら協力者にちょうど良い




