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Always at the end



En1931623


「また屋上にいるのかよ颯天」


僕はこの言葉をこの旧友に少なくとも100回は言っている。まぁ実際は100回以上は言っていると思うが多過ぎて正確な数字は忘れた。


「ん…あぁ隆輝か。お前も俺の横に座れよ。気持ちいいぞ今の時間帯の日差しはよぉ」


「まだ授業中だから呼びに来たんだよ。へらへらしてんなよ」


「つれないなぁ。真面目君」


「いちいち皮肉を入れるな」


「まぁ行くから少しゆっくりしてけって」


全く、こいつは。だがまぁ確かに日差しは気持ちいいのは確かだし少しだけ付きやってやるか。


暫く二人は一言も話さずに日光浴をしていたが、ふと僕は颯天と話したくなったからふと聞いてみた。


「なぁ颯天」


「ん?」


「今高校3年の春だろ」


「それが?」


「颯天は進路とかどうするのかなぁーって少し気になってさ。僕は中堅大学行ってから一流か二流の企業にいこうかなって考えているけど。で、実際どうなの?」


「お前はちゃんと考えているんだな」


「当たり前だろ」


「俺はなにも考えてないけどな。今を適当に過ごして適当に時間が過ぎればいいって思ってるし」


「なんじゃそりゃ」


「いいだろ別に」


今はこう言っているが昔の颯天は、勉学とスポーツの両立がそれなりに出来ていた普通の人間だった。それが一昨年起きた交通事故で両親と一つ下の妹が死んだ事がきっかけでこんな事になってしまった。僕らはこの出来事は一切話をしないことを暗黙の了解にしている。


「何にしろ、いい加減手抜きをするなよ。これは小学校からの付き合いの僕からのアドバイスだから。というか忠告だから」


「あーはいはい次から気をつけますよぉ」


こいつ…呆れてものも言えないな。いくらあんなことがあったからって親友がダメ人間になっていく事をみすみす見過ごせるわけがない。

とはいえ今の颯天は小さい子が『お母さんあの人何してるの?』とお母さんに聞いて『見ちゃだめ!』ってお母さん言われる様な駄目人間まっしぐらだ。


「やばっ!」


なんだ急に。何がやばいのだ?もしかして自分の愚かさにきづい

バキッ………

僕は宙に浮いた。浮いたというより飛ばされた。


「グハッ」


…こいつ…気づいてたな…………


僕は飛ばされながらそう思った。


「いやー危ないところだった。まぁ隆輝は犠牲となってしまったが。いつもながらすごい蹴りだったな明香里さん」


「何が『明香里さん』よ。二人して授業さぼって光合成なんかして。ほら隆輝もいつまでも寝てないで起きなさいよ」


こうしたのは誰だよ。全く、静かにしていれば可愛いのに。


「分かったよすぐ起きるって」


蹴られた腰がまだ痛い。


「隆輝さっき明香里のパンツ見てた。」


「なっ!」


「はっ!?」


何言ってんだこいつ。


「見たの?」


「見てない見てない!ちょっと控えめなのが逆にエロく見えるショッキングピンクのパンツなんて見てない!」


おっと、自分で墓穴を掘ってしまった。僕はここで自分は嘘のつけない良い奴なのではないかと僕自身で気づく事が出来た。ありがとう明香里…。だが実際問題本当の墓穴を掘ることになるかも知れないからあまり余韻に浸ることは出来なかった。


「何で知ってんの?」


「あ…いや…その………雰囲気?」


顔が真っ赤になっていた。


「言い訳、無用っ!」


…バキッ!。


照れた顔が結構可愛かった。



僕は何とか生きていた。僕が目を覚ました時には何だかんだ三人で日向ぼっこしている様な状態だった。まぁたまには幼馴染み3人でこういう時間があってもいいと思うことにした。何しろ二人といる時間が楽しいからでもありこの時間があと一年もしないうちに無くなってしまうからだ。


「さっき颯天にも聞いたんだけど明香里は卒業後の進路は何を考えてんの?」


「卒業後?もう決まってるよ。卒業したら直道製作所に就職して女子ライフル射撃部に入るつもり」


「ああ、明香里はライフル射撃で全国行ってたんだっけ」


「ふふーん、もっと褒めてもいいんだよ」


調子がいいんだから。だけど国立競技大会の常連選手ってのは褒めるに値するよな。よし、ここは褒めておこうか。


「本当に凄いよ明香里は。誰よりも頑張ってたもんな偉いよ」


「なっ…そんなに褒められたら照れるじゃない。馬鹿!」


バキッ!!


「うっ!」


照れ隠しパンチが致命傷になってしばらく動けなかった。


「颯天は?」


「考えてない」


「何で?剣道強かったじゃん。中学生の時だって全国大会出てたのに」


「いいんだよ剣道は飽きたから」

「もったいないなぁ」


僕もそう思う。宝の持ち腐れだと思う人は僕だけではないはずだ。


キーンコーンカーンコーン


授業が終わってしまった。颯天を連れて教室に帰るつもりが一緒にサボる羽目になるとは。皆勤賞がなくなってしまったではないか。次の時間には教室に戻らなくては。


「颯天も5時間目の現国には出ろよ」


「あぁ気が向いたらな」


もう知らん。とりあえず明香里と戻ろう。


「明香里戻ろう」


「はぁ…そーだね」


キーンコーンカー……ザッ…コー…ザザッ…………………


ん、何だ?チャイムが壊れたのか?
















ギャアアアアアアアアアっ














ギャアアアアアアアアアアアっ









「嫌だ…離せっ」


ギャアアアアアアっ


「痛いっ痛い!!」


「来ないで!」


何だ?すごい悲鳴が聞こえる。

いち早く声のした方を見るため屋上のフェンスに向かった颯天が声を振るわせてぼくらのほう


「おいおい嘘だろ…隆輝!下見てみろ!」


と言って来た。


「なんだよ血相替えて。」


颯天が焦っていたようだから僕と明香里は屋上のフェンスから下を見た。

校庭では大規模な暴動が起きていて、よく見ると生徒を襲っている人は野性の肉食動物が捕らえた獲物を貪って食べるかのように腹を裂いて食べているようだった。まるでゾンビ映画でも見ているかのような地獄絵図だった。


「っ……………………!」


声にならない叫び声をあげた明香里は腰が抜けたらしく動けないでいた。


「ど…とうしようとりあえず110番通報した方がいいかな?颯天」


僕は動揺が隠せなかった。


「とりあえず明香里と一緒に、声掛けられる奴らだけでも良いから二年生のいたB棟2階に行って防火扉を閉めておけ」


さっきの颯天とは全くの別人のように的確な指示だった。というか昔の颯天に戻ったように見えた。


「わ、分かった。颯天はどうする」


「取るもん取ったらあとから行く。俺の心配はいいから急げ!間に合わなくなる」


「そうだな、行こう明香里」

「……う、うん!」


僕は錆び付いている屋上のドアを開け明香里と急いで階段を駆け下りた。

二階ほど降りたところでかなりの数の三年生が立ち往生していたので先に逃げたで今襲われているのは一年生と二年生ということが分かった。

僕と明香里は大声でB棟2階へ逃げ込むことを伝え続けた。B棟2階に到着した時集まったのは合計で4〜6人程だった。混乱時だったのでこれでもいい方だと思い、B棟の防火扉を閉めた。

紐で机の足と足を結んでバリケードを作って塞いだ。

颯天は来ていなかったが多分簡単には死なないだろう。


こうして僕、播磨隆輝の三年生としての高校生活は終わりを告げた。


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