はじまり
今日の天気は曇り、雨が降りそうだ
雨は嫌いだ、気持ちを憂鬱なモノにするから
雨は嫌いだ、身体が濡れて寒くなるから
雨は嫌いだ、見すぼらしい姿が余計に見すぼらしくなるから
そんな俺の気持ちに関係なく今曇っていた空から雨がポツポツと降り出した。
あぁ〜憂鬱だ、こんな理不尽な世界には神様なんていないんだろうな
そんな事を今日も考えながら1日食うためのノルマをこなし腹も満たされ路地裏の寝床につくといつもは治安の悪さから滅多に人が通らないこの路地に1人の男が通りかかった。
髭面で目に傷の入ってる隻眼のオッサン
こんな人気のない所じゃすらないし大人しくしとくか、けどオッサンの服装を見た所そこそこ裕福そうだしまた何処かでスレるかも知れないから顔だけは覚えておこう。
とオッサンの顔を伺っているとオッサンが急に立ち止まりこちらに顔を向け話しかけてきた。
「おい小僧なんだその目つきは?」
「あぁ?なんだよオッサン
別に普通の目つきだろうがよ」
「いや、普通の目つきじゃねぇな
この世で1番不幸ですよってツラしてやがる気に食わねぇな、俺はそんな目をしてる奴は嫌いなんだよ、特に子供がそんな目をしてるのがな」
別に1番不幸とは思っていない
まぁだけどよく考えることはある
俺ぐらいの子供には普通なら親がいて愛を注がれながら生活をしているんだろうなと憧れもしたし羨ましかった。
でも現実は甘くないからスリの技術を子供ながら磨いて今まで生きてきた。
オッサンの言うように目つきが悪くてもこんな生活を送ってたら仕方がないと思う。
そんな物思いに耽っているとオッサンが近づいてきて俺の手を掴んできた。
「おい小僧コッチに来い」
「痛、なんだよオッサン何処に連れてく気だ!!」
急に腕を掴まれ引き摺られながら何処かに連れて行かされそうになり、その場に精一杯踏ん張りをきかすが子供の力ではどうする事も出来ず強引に連れて行かれる。
「あぁん!?俺の仕事場だよ
お前を雇ってやる、キリキリ働きやがれ」
「な、なんで俺がスリだと分かって...」
「こんな所でガキが1人でいるならそれは十中八九スリだろう普通の孤児なら孤児院にいるからな
そんな事はどうでもいい真っ当な生活を送れ
俺が色々教えてやる」
(真っ当な生活を送れるのか...もうスリなんてしなくていいのか...)
今まで望んでいた人としての真っ当な生き方を出来ることに喜びを感じていると目の前が涙で霞んできた。
(あぁ、嬉しくても涙って出るんだな)
「あ、ありがとう...ありがとう」
俺が泣きながらお礼を言うとオッサンはニコっと笑いながら空いていた手で俺を頭を撫でてくれた。初めて頭を撫でられてまた嬉しくなり涙が溢れる、俺は泣きながら手を引かれてオッサンの仕事場に向かった。
路地を出ていつものスリ場にしている市場を抜けたその先に周りの建物より一際大きな建物がそこに建っていた。縦横が左右の建物二個分の大きさがあるその建物に何か字が書かれてる、たぶんそれがこの建物の名前なのだろうが字が読めないので意味不明だ。
「オッサン、あの建物の字なんて書いてあるんだ?」
「字が読めないのか、いや当然の事か
あと俺の名前はオッサンじゃなくてバルトってんだ覚えとけよ
あの字はな冒険者ギルドって読むんだ」
冒険者ギルド、聞いた事はあるな何でも街の外にいる魔物って奴を倒して金を貰ってる奴らだ、気配に敏感で全然スレない奴らで嫌いだったな。
「おーい、帰ったぞ!!」
何故か正面から入らず裏に回って建物に入ったバルトがそう叫ぶと奥から1人の赤髪の女がコッチに向かってきた。
「おかえりなさい
あら?どうしたんですかその子?
涙の跡もあるし、もしかして子供好きが悪化してとうとう拉致してきたんですか!?」
「バッカかお前は!いくら俺が子供好きでも拉致なんてするわけねぇだろ!
見ろよこの目つきこんなちいせぇ子供のする目つきじゃねぇ、だから俺が真っ当な生活を送らしてやろうと思って連れてきたんだ」
「あぁ良かった拉致したのかと思ってビックリしましたよ
こんにちは私はアンネって言うのあなたのお名前は何かな?」
アンネと名乗った赤髪の女は俺に目線を合わせる為しゃがみこんで俺の名前を聞いてくるが俺に名前なんて無いから俯いて口ごもっているとそれを泣いてると勘違いしたアンネはあわあわと慌てていた。
「え、えっと言いたくないなら言わなくてもいいのよ?ごめんね泣かないで、ね?」
「別に泣いてないよ、俺名前ないんだ
だから言えなくて...」
俺がそう言うと2人はビックリした顔をしていた。名前が無いのがそんなに珍しいのか?普通孤児ならないもんじゃ無いのか
「そんなに名前無いのが珍しいの?」
「あぁ珍しいな孤児院にいる子でも名前はあるからな」
「そうですね何故か名前だけはありますよね
じゃあ名前が無いならココで決めませんか?」
「お?、いい考えだな
おい小僧お前はどんな名前がいい?」
「名前なんて今まで考えた事なんてないから急に言われても...」
「じゃあ俺たちが決めてやる
お前の名前は今日からユリウスだ」
「わかった
今日から俺の名前はユリウスだ」
「良かったねユリウス、名前が出来て」
その時のアンネは笑顔だったけど何故か悲しそうな目をしているように見えた。
この時は気にしてなかったけど後になってその理由を知る事になる。
「それじゃあ名前も決まった事ですし
その体の汚れ落しましょうか」
「そうだな、それが理由でわざわざ裏から入ったんだ、おいユリウス風呂行ってこい」
「風呂って何だ?」
「風呂って言うのはな体の汚れを落としてリラックスする所だ、気持ちいいぞ入ってこい」
「私が入れてきます、行こユリウス」
アンネに連れられて風呂入った。
始めはアンネも一緒に入ると言っていたが俺が断固拒否して手順だけ教わり風呂に入った。だって何か恥ずかしいだろ?
生まれて初めて入った風呂はバルトが言った通りすごく気持ちが良かった。
頭と体を何かの液体で洗うと汚れが落ちなんだかスッキリした。いかに自分が汚れていたかが分かって自分の事ながら汚いと思ってしまった。あと水溜りみたいな湯船と呼ばれるのに浸かると体がポカポカして体の力が抜けてフニャフニャになってしまった。恐るべしお風呂。
お風呂から上がり体を拭き用意されていた服を着て2人の所に向かう。
風呂から出たら来てと言われていた部屋に入るとバルトは飲み物を飲んでいてアンネは洗い物をしている所だった。
「出たよ2人とも、それとバルトが言ってたみたいに気持ちよかった」
「そうだろ、そうだろ良かった......な」
「ちゃんと頭は乾かした?濡れてるといくら温かいからって風邪引いちゃう.........よ」
2人は振り向き俺のことを見るとその場で石の様に固まってしまった。俺の見た目がそんなに固まるほど変なのか?
もしかして捨てられたのはこの見た目の際なのか?と考えていると突然アンネがキャーと叫びこちらに走って抱きついてきた。
「可愛い!何この子綺麗で可愛い!!
髪は灰色かと思ってたら銀髪で汚れを落とすと整った顔が現れてまるで天使みたい!
バルトさんこの子ウチの子にします!!」
アンネの顔はひどい有様で少しヨダレまで垂れていた、警備兵に見つかると捕まるレベルの犯罪顔だ。だけど急に抱きついてきたアンネが可愛いを連呼するので恥ずかしくなって顔を赤めるとそれが余計可愛いかったらしく抱きしめる強さが増して頬ずりをしてくる。
それを見かねたバルトが溜息を漏らしながらアンネをたしなめ止めてくれた。
「アンネそれぐらいにしておけ
それにしても本当に綺麗な顔立ちと髪だな
見違えたぞ小僧、いや本当に小僧か?もしかしてお嬢ちゃんって事は無いよな?」
「大丈夫ですバルトさん
この子はちゃんと男の子でしたから!」
「ちょっとまて何でお前がそんな事を知ってる?まさかお前風呂覗いてたんじゃ...」
「ギクっ!そ、そそそ、そんなわけないじゃないですか私が子供のお風呂を覗くように見えますか?」
いや明らかに覗いてただろその反応
この人は嘘が下手だな、ていうか俺みたいな子供の風呂なんて覗いて意味があるのか?」
「バレバレじゃねぇか、あとでお説教な
「そんなひど」とにかく!
ユリウスこれからお前はココで育てる、ココにいる大人が色々教えて行くが俺は優しく教えようとは思ってない俺が教えるのは自分の身を守る術と敵を倒す術だ
俺が教わる時だけは死にものぐるいで覚えろいいか?」
「わかった、俺、頑張るよ」
「じゃあ私は一般常識や食事のマナーを教えます、優しく教えるから心配しないでね」
「わかった、ありがとうアンネ」
「もう可愛いなユリウスは
それじゃあもう夜遅いし寝ようか」
「しっかり寝ろよ、明日から訓練だ
おやすみユリウス」
「おやすみバルト」
アンネに連れられ寝室に向かい
生まれて初めてのベットに心躍らせるもあまりの気持ち良さに眠りに落ちていった。




