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米国が2008年に導入したシステムを1970年代に完成させていたソ連

2008年。

米国がISSに持ち込んだものがある。

「通称WRS」ことWater Recovery System。


つまり水の再生装置である。

スペースシャトルにて試験的に搭載されて実験されていた代物で、宇宙飛行士の尿やら何やらを再利用する一連の装置である。


ちなみにコレはスペースシャトルに搭載するにあたり日本人が開発したことは有名。

ただし開発されてスペースシャトルに搭載したのも1990年代に入ってからである。


それまでのISSではどうしていたのか?

ISSのロシア側の装置を使っていた。


1970年代。

米国がソユーズだと思っていた20t級の宇宙船ことサリュートもしくはアルマースの時点でこの一連のシステムは試験が行われていた。


元より宇宙飛行の真の目標が「地球脱出」にあるソ連においては水の問題がすぐさま直面した問題だった。


「いかに補給機会を減らすか」というのは本当に重要で、補給が0に近づけば近づくほど太陽系における移動を考えただけでも有利になる。


実は現段階におけるWRSよりもロシアの水再生システムの方が遥かに勝っているということは全く知られてない。

新聞記事などでは「コレまではロシアのシステム使っていたようだが」という風にしか語られていないが、ISS自体は2002年にはほぼ重要な区画は出揃って運用が始まってたというのに。


では両者の性能をまず箇条書きにて比較してみる。


WRSが可能なこと。

1.尿の水再生(トイレと一体型のシステム)


ソ連式の水再生装置にて可能なこと

1.尿の再生

2.便からの水分の再生

3.船内の湿気や水分を吸収して水を精製

4.船内に水を循環させ、機械などの冷却(これはアポロでもやっていたが、一連のシステムとして組み込まれている)

5.水耕栽培等へのブロックへ水を供給

6.ロシア側宇宙船全体での水の循環(これもアポロではやっていたが、プログレスなどからはパイプを通して水を補給)

7.船外から氷などを採取して清涼水などとして再生(地球圏にはそういったものはないが、火星などへ向かった際の実験施設として組み込んでいる)

8.冷蔵庫などへの利用


ようはソ連式の水再生装置というのは浄水施設なのであって、単純な水再生システムではないのだ。

ソ連から言わせると「なんで米国の宇宙船は船外投機なんて勿体無いことをしているんだ!?」ということがアポロ時代から思われていた。


ただこれはアポロが「燃料電池」を搭載していた事をソ連が知らず、アポロにおいては衛星面の影響と重量の影響から、再生装置を搭載するよりも燃料電池によって供給される水の方が優れているので尿などの不純物を船外廃棄していた。(その影響でアポロ13号では水の供給が滞り、ラヴェル船長らは船体に付着し、結露した氷などを摂取していた)


スペースシャトルもほぼ同様であったが、アポロと比較すると船内のコンピューターなどに冷却するなどといった循環システムなどは搭載されておらず劣化していた。

これらはフォン・ブラウンが考案して米国メーカーに作らさせたものなのだが、前述した通り、フォン・ブラウン系技術をかき消そうとしたためにスペースシャトルでは様々な部分で劣化が生じている。


一方でソ連の場合は政治的な争いもあったものの、共産主義という国家の影響でこういった一連のシステムはソユーズにもサリュートでも少しずつ実験されていき、ミールの時点では完全に完成していた。


ミールの場合は船体全体で水が循環しており、つまりは「上下水道」とも言うべきものが出来上がっていたのである。

ISSにおいても当初はこれを用いていたのだが、ロシアから「いつまで我々のシステムに頼っているつもりだ?」と指摘され、米国が導入したものこそWRSだった。


未だにトイレ1つまともに作れないどころか水関係のシステムを作れない米国に流石に苛立った様子である。


ロシアから言わせるとこういった一連のシステム無くして火星への有人飛行は不可能と考えているのだが、火星への有人宇宙飛行は国際協力などを用いてと考えている関係上、そこでも重要は役割を果たす米国がお金を払うだけのスネ夫君では困るのだが、どうも米国は表では強気で「火星がどうたら」とかいってるものの、ロシアほど本腰を入れて宇宙関係の開発を行っていない様子がある。


かつては熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた米露であるが、ロシアから言わせると「目的地に辿り着くことしか考えていないからこうなる」と近年の逆転現象は米国によるゴリ押しの影響が多分にあるということを何度か公の場で指摘していた。


火星関係など、2週間程度では終わらない関係の有人宇宙飛行が全くもって滞っている原因がこういった長期運用可能なために必須なシステムが開発されなかったことに起因しており、ようはゲームで言えば超特化型のプロゲーマーだけが使えるようなピーキー過ぎて一般人には不可能なものを用いて月などへ向かっていたが、それは流石に火星などのラスボスの1歩手前クラスなどでは全く通用しないという状況によって発生している。


ソ連時代からロシアはそういった事は考えておらず、モジュール式宇宙船という存在においてもモジュール全体で水を循環させるなど、様々な面で冗長性を保たせ、例えばロシアの場合はどのモジュールにおいても水が飲めるようになっているなど、緊急時に居住ブロックが封鎖されてもある程度の生存が別のブロックで行えるようになっていたりするのだ。


そして水の再生という状況において、ロシアが船外投棄するのは「垢や便などの老廃物」であるが、これらは一時期農業用肥料としての運用が試みられたものの、「衛生的によろしくない」ため、「内部に存在する栄養分などを水分と一緒に別途還元する」という装置が1970年代後半にて完成したことにより、実際にはサラサラでカサカサで本当に利用が不可能なものだけが投棄されている。


この投棄はISSにおいては3月~半年に1回のペースであり、それは生ビールの金属製の樽と同じ程度の大きさで人間がヒョイと持ち上げられる程度なので大人数で運用されている状況を考えると極めて少ないといえる。


最後に一連のシステムが完成したころでソ連ではこのようなものが実現化しているということを記してまとめることにする。

1つは米国側と比較すると大規模な農業用ブロック。

ISSではトマトやリンゴなどが栽培されているが、実際に食されており西側のメンバーにも食されている。

これらは冷蔵庫や冷凍庫によって冷凍されるが、ロシア側ではなんと「宇宙食」に加工することも可能。


これは別途に居住ブロックに存在する食糧生産関係の設備によるもの。


考えてみて欲しいのだが、宇宙食の基本といえば「フリーズドライ」である。

真空である宇宙においては真空による瞬間冷凍させて水分を蒸発させて精製する「フリーズドライ食品」はいくらでも作れるので、保存する際にはまるで干物を作るようにして宇宙食にして保存しているのだ。


これも長期の宇宙飛行を考えた場合は「必須」であるが、今の所本格的な運用ではなく「あまったら勿体無いので腐らせないために」といった程度の試験運用に留まる。

ただし、西側では補給でしかなされていない宇宙食の生産が可能というのは彼らが本気で「地球脱出」と「惑星間航行」というものを考えて技術開発しているということがよくわかる。


また、フリーズドライ食品だけでなく「お酒」なども作れるらしいのだが、これらは全ての情報が公開されていないためによくわかっていない。

ただ、何度か西側の飛行士により「お酒」の話題が出てくるので、多分そういう発酵食品などを作れるブロックもあるのだと思われる。


余談だが、ソ連では当初よりフリーズドライなどのチューブ系の宇宙食が用いられてきた一方で早期に野菜などの生ものが用いられるようになってきた。

宇宙飛行士から不満があったとというのが理由の1つであるが、噛むという行為が身体的ストレスを大幅に軽減し、食事という存在が非常に重要であることに気づいたのだ。

米国でもその点では早期より気づいていたが、スカイラブに至ってもまだ野菜などは持ち込まれていない。


やはり全ての状況が変わったのはアポロソユーズテスト計画やミールで、ソユーズテスト計画では酒だけでなく野菜なども振舞われたがこういったものを見た米国は飛行士達からの圧力にも近い嘆願などにより、これらを見直すようになっていく。


チューブ食品やどう見ても不味そうな宇宙食だけを食べて宇宙を飛行するスーパーマンという米国の宇宙飛行士といえども、流石に限度があったということである。(ラヴェル船長が後年ソ連の技術を非常に褒めるようになった原因も彼自身がそういうのに裏では非常に苦慮していたため)


話を戻すが、もう1は0Gにおける金属加工、金属精製などの工業ブロック。

まるでガンダムみたいな話だが、実はガンダムのルナチタニウムの設定こそサリュートやミールにて実験されていたものである。

宇宙で精製されたプラスチックは極めて優秀な性能を誇っていたが、これらも近年ロシアが技術公開していたりする(宇宙でなければ作れないから別に真似なんて出来ないというロシアによる自信の表れがあったようだが、諸外国は1G環境で0Gと同じ状況を作って優秀なプラスチックが作れてしまいロシアを驚かせたというのはまた別の話)


これらの金属加工などでは大量の水が必要となるため、ソ連の一連の水道システムや水再生システム無くして実現は不可能である。

この金属加工ブロックはソ連時代から「船外修理などのため」とされ、長期飛行で故障してもここで製造されたパーツでもって「補給に頼らない独力による修復」が行えるようにとサリュート時代から実験されていた。


宇宙戦艦ヤマトが艦内に工場をもっていて戦闘中ですら徐々にダメージを回復させていくように、サリュート、ミール、そしてISSのロシア側でもそれらを可能にさせようとしていた。


実際にサリュートでは電子部品などがこちらで作られて修理に用いられたとされているが、この工業ブロックはISSでも大活躍しており、前述した「トイレの増設工事」の際も工作機械が大量にあるこのブロックによって組立作業などが行われ、それ以外にもISSのソーラーパネルの修理などもこのブロックで行われていたりする。


インターネットのライブ中継では電子基盤を修理するシーンなどが出てきたりするのだが、NHKの特番などでこれらが紹介されることがないのは残念。


これら一連のシステムは遅くとも1975年頃には完成していたとロシアは技術公開によって発表しているが、実際に打ち上げられたサリュート、アルマースで運用試験が繰り返され、そしてミールではすでに「実用段階」となっていたので特段誇張でも嘘でもないと思われる。


ソ連はこれ無くして長距離惑星間航行は不可能と判断していたが、やはり我々日本人は「月面着陸」という存在ばかりに目が行き過ぎていたかもしれない。

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