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第六章)立ちはだかる壁 魔王来る

フラウ編がもう少し続きます。

ほぼ消化試合ですが、全体のストーリー進行上、もうしばらくお付き合い下さい。


※本日はハロウィン企画と二つの投稿しています

■闇重ね①


「戻れたのね。あら、久しぶりですね魔王様。」

「ウ、ウォルティシア?どうしてこんなところに。」


「ちょっと、あなた!ラク様から離れなさい!」

「ふん、身も心もラケイン様に捧げた私の前に立つとはいい度胸ね。」


「あ、あの小娘、年寄りになんちゅう暴力を。」

「ち、ちょっと、あなたたち。フラウ様の前よ。」


 なんだこの混沌とした状況は。

呆気に取られているのは、僕だけではないらしい。

フラウもまた、こめかみをピクピクさせながら引きつった笑顔をしている。

 それはそうだろう。

ここまで本音をさらけ出して、いい感じにまとめようとした所で部下がこの有様なのだ。

「あなた達。いったい何してるのよぉーっ!」

争いが終わり、静けさを取り戻した荒野に、雷ならぬ火柱が立ち上った。

まぁ、こちらのメンバーも状態は変わりない。

なんだか……。

どっと疲れた。




「改めて、私がフラウ=クリムゾンローズ。かつての勇者パーティの魔法使い。そして、『黒薔薇』の魔王よ。」

 フラウは腕を組み、精一杯余裕がある素振りで、そう自己紹介する。

後ろで四人の部下達が黒焦げになっているのを見ると申し訳ない気持ちになるが。


「フラウ、一応これであなたとのわだかまりはなくなったと思ってもいいのかな?」

「ええ、結構よ。さっきも言った通り、ここにいるロゼリアは私の分身。そもそもが同じ意識から生まれた存在だし、一度融合すれば記憶も共有できる。あなたとの決着は着いたわ。」

 晴れ晴れとした表情のフラウに対して、ロゼリアは少し悔しそうだ。

同じ意識の分身体とはいえ、受け取り方は違うのだろう。

フラウとしては、単純に過去との決着が着き満足だが、ロザリアとしては負けた勝負だということなのだ。


 実際には、勝てたのはほぼ運だったとしか言いようがない。

実力的には、今の僕ではまだまだ追いつけてはいない。

流石は、人類最強の魔法使いだが、それを言ったところでフラウもロゼリアも喜ばないだろう。


「だとしたら、ここへ僕達を呼んだわけを、あなたが小魔王となったわけを、聞かせてもらえるかな。」

 そうだ。

単純に僕との決着を着けるだけなら、ギルド経由での呼び出しなんて手を使わなくてもいい。

合理的にものを考えるフラウだ。

反逆者(リベリオン)として呼びつけたのなら、その理由があるはずだ。


「うん、そろそろ時間ね。」

 フラウは僕の質問に答えずあさっての方向を見ている。

「フラウ、」

「質問には答えるわ。但し、雑魚を燃やしてからね。言葉で説明するより、見てもらう方が早いわ。」

こちらの台詞を遮り、何も無い空間を注視する。


─ピシリ。

 フラウが見つめていた方向の空間が歪む。

不意に景色がかすみ、その向こうに別の景色が映り込む。

「これからかませ犬がのこのこやって来るけど、あなた達は絶対に何もしないで。動かず、戦わず、喋ってもだめ。いいこと?」

厳しい表情で歪む空間を見つめる。

その表情からは、これからやってくるという相手が、けしてかませ犬だという言葉通りの実力ではないことを思わせる。


 景色が重なる向こう側から、大柄な男とその手勢と思われる集団が現れる。

豚魔人(オーク)猪魔人(ハイオーク)岩醜人(トロール)

およそ百体の魔物。

多くはDからCランクの魔物だが、数人はAランク級と思われる魔族が見える。


「グババババ。魔王の気配を辿ってみれば、こんなガキが魔王だとはな。」

 現れた大男。

突き出た腹にたるんだ皮膚。

しかし、その皮下にあるのはただの贅肉ではなく、固い筋肉のようだ。

それが証拠に、フラウの胴回りより太い上腕から首周りには、まるで古い巨木を思わせる固い筋肉のコブが見て取れる。

そして、この男もまた、黄色(・・)のコート“暗星の神衣(ノワ・ルーナ)”を纏っている。


「ふん、我ら魔王にとって見かけなど、いくらの価値も無いことは承知の上でしょうに。さそちらこそ見かけ通りに知能が足りないようね。」

 フラウもまた、大男を挑発し返す。

“我ら魔王”と言った。

やはり、あの大男も小魔王の一人か。

どうやら噂に聞く魔王同士の衝突に巻き込まれたようだ。

「グババババ。生意気なガキめ。見れば貴様の部下は10人だけか。それも魔人じゃないな。人間のガキまでいやがるとは。それとも部下じゃなくて玩具だったか?」

大男は下卑た目付きでこちらを舐めまわすように見つめる。

フラウの警告通り、こちらは何も言い返さない。

全てフラウ達にまかせ、成り行きを見守る。


「眷属の数を増やした様だけど、そんな雑魚ばかりいても何の役にも立たないわ。この人間はただの奴隷よ。お前の相手はうちの四人がするわ。」

 ロゼリアを始め四人の部下達が前に出る。

「グババババ。笑わせるな。俺の魔力で強化された魔王軍をたった四人で相手にするだと。女が二人にガキにジジイじゃないか。舐めるのもいい加減にしろよ。」


 大男の雰囲気が変わる。

部下の魔物達も目がぎらりと光る。

確かに、数の上では多勢に無勢だ。

思わずぴくりと剣を握るが、途端にフラウから射殺すように鋭く睨まれる。

死にたくなければ手を出すな。

そう、言われたようだ。


「ふん、笑わせないでちょうだい。言うに事欠いて魔王軍?それこそ、たった百体余りの魔人が群れただけで軍だなんて。話にもならないわ。」

「グババババ。誰が俺の部下がこれだけだと言った?」

 そう言うと、高位魔人と思われる一体が、呪文を唱え始める。

周囲に巨大な魔法陣が出現し、現れたのは千体を超える魔族や魔物の群れ。

この荒野を埋め尽くす程の軍勢だ。


「グババババ。まさに話にもならんな。大人しく“魔王の核”を渡すなら苦しませずに殺してやるぞ?」

 大男は、もはや勝負は決まったとばかりに高らかに笑う。

しかし、新しい言葉が出てきたな。

魔王の核とは、一体なんだ?


「そうね、まったく話にもならないわ。おかげでそちらの底も知れた。あとは捻り潰すだけよ。」

 フラウはそう言って、右手をすっと前に降る。

それを行けとの指示と受け取った四人は、静かに歩を進めた。


「さて、折角の“闇重(やみがさ)ね”なのだから、きちんと名乗りくらいはしましょうか。《「黒薔薇」の魔王》フラウ。華麗に殲滅しましょう。」

 フラウが口角を歪めニヤリと不敵に笑う。

その姿は、正しく人間のイメージする魔王そのものだった。


「グババババ。面白い。その人数で何が出来るのか、見せてもらおう。この《「撃鉄」の魔王》グバーハが無残に殲滅してくれるわ。」

 そして、蹂躙が始まる。

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