第四章)煌めく輝星達 第二種目・予選
すみません。昨日の投稿分から差し替えます。
四校戦も、三種目から二種目にかえさせてください。
あまりにもテンポが悪すぎる。
■四校戦⑦
二日目。
「よう、ご両人。昨日はやってくれたな。」
振り向くまでもなく、そこにはリュオが立っていた。
「リュオさん、お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
僕とラケインが挨拶する。
「よせよせ。今さら敬語だなんて。呼び捨てでいいし、もっと砕けて行こうぜ。」
リュオが目の前で手を振り、朗らかに笑う。
「いや、年上ですし、Sランクの冒険者ですよ。流石にそんなに砕けては。」
ラケインじゃないけど、昨日はテンションが高すぎておかしくなっていたが、目の前の人物は、一国の将軍であり、冒険者の頂、そのものなのだ。
本来なら気安く声をかけることすら難しい。
「はっ。昨日のお前達はそんなこと考えてやしなかっただろ。飯を一緒に食って、剣と剣を交えて、しかも、俺と互角にやり合える。どこにそんなに気遣いが必要なんだ。」
しかし、そんな遠慮は無用だとばかりに、心底嫌そうな顔で肩を竦める。
「そう、言ってくれるなら遠慮なく。改めて、お疲れです、リュオ。」
「おお、お疲れ。まったく、あのお嬢ちゃんには驚かされたよ。とんだ伏兵がいたもんだ。」
リュオは、頭をガシガシとかいて苦笑する。
「お前さん達4人に気を取られていたら、あの爆発みたいな一撃だ。あれは、プロムでラケインと一緒にいた娘だったな?」
「はい、反逆者のメンバーでメイシャです。」
ラケインが少し誇らしげに言う。
まったく、ほんとに素直なやつだ。
「メイシャ、か。ありゃパワーだけなら俺でも負けるな。ラケイン、頑張れよ。」
リュオが突然神妙な顔つきでラケインの肩を掴む。
「ラケイン、頑張れ。」
僕も乗っかってみる。
「が、頑張る?お、おう。任せておけ。」
よく分からないまま頷くラケインをみて、僕とリュオは笑いあったのだ。
「それにしても、獲物がこいつとはな。」
リュオが、鞘ごと剣を弄ぶ。
僕達は今、競技場の正門前で、待機している。
その手に持つのは規格品の訓練用の剣だ。
刃は薄く鉄も柔らかいものが使われている。
「僕達の方にも朝に説明がありましたよ。なんでも、昨日の戦闘がハイレベルすぎて、安全面から攻撃力をおとす意味で練習用の武器を支給されたみたいですよ。」
僕の方も、練習用の小さな魔杖が配られている。
母さんからもらったステッキを思い出すな。
「はっ、どうせどこかの国のお偉いさんからの差金だろ。全く、切れない刃物ほど危険なものはないってのに。」
実際に安全面を考えるなら、普段の剣の方が余程安全だ。
使い勝手が違うのはもちろん、研ぎ澄まされた剣の方が、傷を負った時にも治りやすい。
これだけ高レベルの治癒術者が待機しているならなおさらだ。
恐らく、現役の軍人であるリュオのアドバンテージを少しでもなくそうと、物言いが入ったのだろう。
リュオがボヤいたのは、そういう意味だ。
「まぁボヤいていても、仕方ない。じゃあ、競技場で。今日は負けないからな。」
そう言ってリュオは人混みの中へ消えていく。
そう、今日は個人戦。
組み合わせ次第ではリュオと直接剣を交えるのだ。
入場して驚く。
なんと、競技場の形が昨日とは変わっているのだ。
平面の石畳だったはずが、四方の四箇所がせり上がり、正方形の闘技場になっている。
こった装飾こそないが、闘技場の四隅には燭台が立っており、炎が灯されている。
どう見ても大地系魔法の手によるものだと思うが、全く、魔法の無駄遣いもいいところだな。
「皆様、お待たせいたしました。それでは、四聖杯、第二種目の競技を始めます。二日目の競技は、トーナメント予選、“騎馬戦”です。」
アナウンスが流れる。
騎馬戦というのは、文字通り騎馬に跨り、相手の胸元につけている飾りを落とした方が勝ちという競技だ。
しかし、ここに馬はいないし魔法使いもいる。
ということは、
「今日の前半、後半の2回、計8組の勝ち抜け戦です。選手には紀章が配られますので、胸か肩に付けてください。紀章を奪われるか場外で失格。各組一人となるまで戦い抜くこと。勝者四名が明日の、決勝へ出場できます。」
なるほど、各組は15人。
その中で、紀章を取り合えという事か。
組み合わせ次第では予選敗退もありうる。
「一応、予選では、ばらけたみたいだな。」
ラケインが組み合わせ表をみて呟く。
「ラケインが2組、マーマレードが3組、僕が4組。メイシャが5組でメイサンが7組だね。」
「それと、リュオが8組、か。」
ラケインが不敵に笑う。
昨日の競技で、四人がかりでなんとかしたと言うのに、強気なことだ。
まぁ、気持ちはわかるけど。
「それじゃあ、決勝で!」
「あぁ、決勝で!」
そう言って、僕達はそれぞれの舞台へと別れる。
「まぁ、こうなるよねー。」
少し呆れながら呟く。
僕は第4組の集まる闘技場に立っている。
他の14人、全員がこちらを向いているのだ。
そもそも魔法とは、魔力の練り上げ、術の構築、そして発動というプロセスを経る。
そのために、当たればでかいが、隙が大きく運用が難しいという欠点がある。
それが、昨日の試合であれだけ目立ってしまったのだ。
となれば、“強いやつはみんなで叩け”作戦となってしまうのはしかないことなのかもしれない。
「恨むなよ、デアクリフ!」
「ふっふっふ、骨は拾ってやるからな!」
何人かうちの生徒も混じっているようだ。
まったく。
少ぉしだけ、本気出しちゃおう。
「それでは、第一試合、始め!」
アナウンスと同時に、戦士組が詰めかける。
魔法使い組は後方で魔力を練り上げている。
遅い。
別に試合開始まで何もしてはいけないなどと言われていないのに。
戦士組にしても、あんな遠くから駆け寄るなら、最初から近くにあればいい。
魔法使い組も、やることがないなら、待機時間に魔力を練っておけばいいのだ。
魔杖を構え、左手を差し出す。
体内で練り上げていた魔力を解き放つ。
「烈風系魔法・嵐風障壁。」
迫る戦士達を風の障壁が阻む。
「ぐあっ!?」
「くっ、卑怯な!」
何人かは風に巻き込まれて弾かれたらしい。
しかし、全員で取り囲んでおいて卑怯も何もないと思う。
「ちぃ、魔法使い組、何とかしてくれ!」
焦れたように戦士組が魔法使い組をせっつく。
「ふん、威張ったところで何も出来なくセに。まあ、いい。風の弱点は土だ。石礫!!」
先頭に立つ魔法使いの合図で、何人かが大地形魔法を放つ。
確かに、風系魔法は大地系魔法に弱い。
質量を持たない風は、土によって蹴散らされるのだ。
ちなみに、火は水に、水は風に、風は土に、土は火に弱い。
しかしそれは、共にレベルが同じだったらの話だ。
パンっ!パンっ!
軽い音とともに、石の弾が破砕される。
「ばっ、ばかな!?」
相手の魔法使いたちに動揺が走る。
当然だ。
向こうが使ったのは、第一領域の石。
こちらは、第三領域の嵐だ。
「それじゃ、これで、おわりっ!」
杖を持った右手を突き出す。
新たな魔法を使った訳では無い。
風の障壁に魔力を送り、前進させただけだ。
ただし、闘技場いっぱいの広さで。
「うわっ、風が!迫ってくる。」
「押せっ!押し返すんだ!」
「石弾が粉々になる風だぞ、バカを言うな!」
「ちくしょー、もう後ろがない!」
壁が闘技場の端まで行ったことを確認して魔法を解除する。
「第4組、終了!」
アナウンスが流れる。
そこに立っているのは、僕だけだ。
「さて、と。」
他の3組へと目をやる。
もう、どこも大勢は決しているようだ。
第1組は、ノスマルクの魔法剣士。
第2組は、ラケインが残るだろう。
しかし、第3組。
ここで思わぬ強者が現れる。
「はぁ、冗談も程々にしてよ。」
ボロボロになったマーマレードが愚痴る。
舞台上に立っているのは二人だけ。
マーマレードとノスマルクの魔法使いだ。
どちらが優勢なのかなど、ひと目でわかる。
圧倒的な火力を持つ魔法使い相手に、治癒術師のマーマレードが、何とか凌いでいるに過ぎない。
攻防一体の魔法。
その身に紅蓮の炎を纏い、あらゆる攻撃を無効化し、その差し出す掌からは、全てを燃やし尽くす炎の剣を放つ。
申し訳ないが、あれは、マーマレードじゃ無理だ。
なぜなら、あの魔法を使えるのはただ1人。
“紅帝”と呼ばれ、勇者パーティとして戦った魔導師だけのはずだから。
普通に考えれば、目をかけている弟子なのだろう。
しかし、なぜかそうは思えなかった。
憑依なのか、それとも分身か。
いずれにせよあれは、ロゼリア=フランベルジュ、その人だ。
その後も試合は続き、明日のトーナメントへ残る8人が決定した。
ノガルドからは、アロウ、ラケイン、メイシャ、メイサン。
ノスマルクからは、氷の魔法剣士ウォリス、炎の魔法使いフレイヤ。
エティウからは、最強の騎士リュオ。
コールからは、武闘僧侶リサが出場する。
今回は、大幅な改訂、申し訳ありません。




