第四章)煌めく輝星達 マギ・ゴリアース
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■四校戦⑤
「守護魔法・魔装強化!」
そのキモは、肉体そのものに守護させるのではなく、体の表層を覆うように守護させることにある。
理論上では魔力効果が数倍に跳ね上がるはずだ。
「ぬぅうぇりゃぁぁぁ!」
リュオの大剣が迫る。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ラケインが吠える。
袈裟斬りに振り下ろされるリュオの大剣を
ラケインがフルイーターを切り上げに向い打つ。
ズガァァァッ!
おおよそ金属同士の衝突には聞こえない。
雷鳴の如くの衝撃。
剣を弾かれ、たたらを踏んだのは、なんとリュオだった。
あの翠王亀の首を一撃で落とす斬撃を、しかも下から打ち返したのだ。
「ぐぅっ!?」
「なっ!?」
これには、打ち返されたリュオはもとより、当のラケインも戸惑う。
強化効果が半端じゃない。
「…ひとつ、考えがある。」
試合直前、ラケインが発案した作戦は脅威のものだった。
「俺が、リュオを抑える。」
エティウ校の強さは二本柱だ。
最強の武人であるリュオ。
そして、リュオに鍛えられた、軍隊並みの統率力だ。
しかし、僕らノガルドにも統率力に代わる、一体感では負けていない。
なら、あとはリュオの攻略だけだ。
「いや、気持ちは分かるし考え方は正しいかもしれないが、気持ちだけで実力差は変わらないぞ。」
メイサンがラケインを窘める。
普段は暑苦しい程のメイサンだ。
本当は、この提案に喝采を送りたいだろうことは分かっている。
だが、今はノガルドのリーダーとして冷静にならなければならない。
だが、ラケインは首を横に振る。
「自分の実力の程は弁えています。勝算、というか考えがあります。」
ラケインが僕に振り返る。
「アロウ、俺は魔法について疎いから、無理なら笑ってくれていい。あのドラゴリアスの強化と補助の魔法、俺にかけられないか?」
驚愕する。
確かに、通常の強化魔法に比べて、ドラゴリアスの操作・強化の魔法は格段に魔力効率がいい。
ラケインは、漠然と強力な守護系魔法くらいのつもりで提案したのだろう。
「無理よ。」
そう言ったのは、ホーエリアの寮生長、マーマレードだ。
「他人の魔力は馴染みにくいのよ。守護魔法なら無理やり作用させて効果を出すけど、あれは体の外側に作用してるもの。たとえ効果があっても一瞬で弾かれるわ。」
確かにそうだ。
しかし、それに僕が反論する。
「なら、効果のある一瞬に作用させればいい。」
これは魔法としては全く新しい、そして、最も古い術式だ。
これは魔王の術式。
魔王の魔力によって、魔族が強化されるのと同じ要領だ。
もっとも、あれは膨大な魔力量によって勢力圏内を満たし、常に体の周りを覆い常に作用させている状態だが。
「つまり、攻撃や防御、移動の一瞬に、適した属性魔力を選択し、適した部分に発動させようというの?そんなの、それこそ同一人物でもなければ無理よ!」
「…アロウなら。俺とアロウのコンビならやれます。」
ラケインが呟く。
まさかの無茶振りだ。
いや、本当に僕なら出来ると信じているのだろう。
「アロウ、出来るのか?」
メイサンが疑うように、そして期待するように、僕を見る。
自信はない。
けれど予感はある。
「はい、ラケインとなら出来ます。」
そう言い切る。
「ふふふ。マム。後輩にここまで言い切られたんだ。なら、俺達が尻込みしている場合じゃないよな。」
メイサンがマーマレードを見つめ頷く。
「ちょっと!勝手にやるって決めないでよ。…はぁ、わかった。やってやるわよ。せめてゴリアテに使った意識共有の魔法を併用させてよ。あれで成功率が上がるわ。」
そうして何度かの試験を行い、新型の強化魔法、魔装強化が完成したのだ。
「おいおい、お前達。なんて代物を作ったんだよ。」
リュオが冷や汗ともに歓喜の笑みを作る。
魔法に詳しくない、自分にもわかる。
あれは、既存の魔法技術の先を行く代物だ。
目を凝らせば、2人の戦士の周りに魔力が漂うのが見える。
そして、剣と剣が交わるその一瞬に魔力が膨れ上がるのだ。
Sランクである自分と拮抗するレベルの戦い。
そんなハイレベルの戦いにも関わらず、戦闘の流れを先読みして、必要な部位に必要な魔力を選択する魔法技術。
明らかな規格外だ。
無論、強化があってとはいえ、自分と斬り結べるラケインともう1人の戦士のバトルセンスにも脅威を覚える。
「いい。いいぜ!ラケイン、アロウ!!想像通り、いやそれ以上だよ!」
今一度大剣を握り直し、咆哮するのだった。
もう何度、窮地を凌いだろう。
リュオの一撃一撃は、その全てが必殺の威力を持っている。
メイサンの剣を弾き、ラケインの剣を撃ち落とす。
あらゆる方向から襲い来る猛威。
同じ大剣使いとはいえ、ラケインの剣とは、かなり趣が異なる。
卓越した剣技の延長にあるラケインの剣を、変幻自在に形を変え、全てを飲み込む激流の大河とするならば、リュオの剣は、圧倒的な暴力を体現し、触れただけで打ち砕かれる暴風のようだ。
いくら魔法で底上げしようと、未だ僕達の実力は遥かに届かない。
そして、実際に剣を受けるラケイン達はもとより、永遠にも思える一瞬の連続のなか、極限の集中力を続ける僕達にも疲労が現れ始める。
「ここで決めるぞ!アロウ!」
「踏ん張りどころだ!マム!」
戦士組の叱咤により、唇を噛み締めながらも魔法に集中する。
幸い、攻勢はこちらがやや有利だ。
次第にラケインとメイサンのコンビネーションが噛み合ってきており、リュオを追い詰めつつある。
しかし、その優性も僅かな失敗で覆ってしまう。
そんな綱渡りのような戦いを既に30分以上続けているのだ。
リュオが攻めあぐねているのを見て、エティウ校の面々が浮き足立つ。
いくら軍隊並みの統率を持つエティウと言えど、司令塔であるリュオを抑えられては、ただの学生に過ぎない。
ついに、副リーダーらしき学生が合図を送り、エティウ校が進軍を始める。
それは二回戦でノガルドが見せた、全員攻撃。
リュオと僕達4人が不在の今、残る全戦力で雌雄を決するつもりのようだ。
1匹の猛獣のようになったエティウ校が、ノガルドの陣に襲いかかる。
確かに、その判断は間違いではなかった。
単純な人数としても、29対26。
ほぼ同数とはいえ、若干の有利。
また、リュオ仕込みの全体行動は、本人不在でも乱されることなく、完璧な連携を取っていた。
そして、ここで勝負は付いた。
「うぉりゃぁぁっ!見ててくださいね!ラク様ぁっ!!」
巨大な爆発音。
エティウの誤算は、でたらめな破壊力を持ち、大雑把な物理攻撃が得意な僧侶が1人、守備陣営にのこっていたことだ。
完璧な連携が仇となり、大ぶりのメイスによる一撃にまとめて粉砕された。
全くの予想外の事態に、リュオも僕達4人も唖然とする。
その隙に綱を引ききるゴーレム。
「勝者、ノガルド校!」
アナウンスを背景に、仁王立ちでブイサインをするメイシャがにこやかに笑っていた。
このバトル。
オチだけは決めてありました。
いやぁ、ここまで持っていくのがながかった。
反逆者メンバーの伏兵、メイシャさんバンザイです。ヾ(●´∇`●)ノ




