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第四章)煌めく輝星達 デモンストレーション

過去分の編集を手がけています。

また、1話あたりの容量を増やしていきますので、更新が遅くなります。


なんとか3日ペースを守りたいと思いますので、宜しくお願いします

■四校戦②


 リュオの協力でエティウの生徒が協力してくれたお陰で、なんとか市場の混乱も落ち着いてきた。

実際には現場でバタバタしている僕達よりも、各国の用心やエウルの王族と打ち合わせを続けている教師陣の方が大変だったと思うが。


 四聖杯では、エウル、エティウ、ノスマルク、コールの四学校から、代表各30名の生徒が参加する。

基本的には魔王討伐や軍事行動などを意識した種目を三日間かけて争い、総合得点で優勝が決められる。

 三龍戦から二ヶ月近く、エウル各地に滞在した他国の貴族が、祭り納めと言わんばかりに集まり、またその財布から金を引き出そうとする商人たちが集まり、商人たちと取引するために小作や冒険者が集まる。

金が動くところにはならず者も集まり、その警備のために軍や警備隊も集まる。

全てが人の動きに繋がり、空前絶後の活気を見せる。


「さあ、いよいよ四校戦です。選抜に選ばれた生徒もそうでない生徒も、ホスト校として恥ずかしくない振る舞いをお願いします。彼らは争い合う敵ではなく、競い合うライバル達です。敬意をもって接するように。」

エレナ先生がそう皆に言い聞かせる。

特にノスマルクでは亜人種が社会で活躍していると聞くが、ここエウルでは、亜人の身分は低い。

特に貴族の多い学園では、なお更にその傾向が強いのだ。

先生たちが目を光らせてるとはいえ、心配だな。

そんな心配をよそに、四校戦が始まる。


「それでは、各校のデモンストレーションです。」

 アナウンスが入る。

四校戦は、単なる腕試しの場ではなく、卒業後のアピールの場でもある。

この為、一日目の競技は午後からとして、午前中は、デモンストレーションの時間となる。

また、このデモンストレーションは、各校の実力を分析する、士気を高める、相手を威圧するなどの駆け引きとしての側面もある。


 まずはエティウ校。

流石に王国軍の将軍でもあるリュオが指揮するだけあり、入場からして迫力が違う。

一人一人を見ると、一見には、ただ歩いているだけのようにも見える。

しかし、全体として見れば、隣との感覚は一定に保たれ、視界や動線が被らないように配慮されている。

これは入場ではない、行軍だ。

先頭のリュオが、片手を上げる。

その僅かな動作で、30人全員がピタッと止まる。

上げた手を払う。

全員が散開、そしてすぐ様に陣形を取る。

 リュオを起点として、四人一組フォーマンセル、計八個の小隊が三角形に並ぶ。

組の配置も考え尽くされているようだ。

前列には、戦士3人と魔法使い1人の近接重視組が。

後列には、戦士2人と魔法使い2人の支援重視組が配置されている。

リュオは、自らを入れて30名もの人間を、僅かな合図で意のままに操る。

エティウ校の選抜メンバーは、個々の実力もあるだろうが、リュオを要とした一つの生き物のように訓練された軍団なのだ。


 次にノスマルク校。

入場して気付く。

2/3程は魔法使いなのではないだろうか。

そして、戦士組もその多くは魔法剣士であるようだ。

魔法大国とも名高いノスマルクだけあり、選抜メンバーも他校と比べると魔法使いの比率が多い。

やや時間をかけそれぞれが配置につく。

中央に6人、四方に4人ずつ4組、22人の魔法使いがそれぞれ円形になり、戦士らしい8名は、護衛という立ち位置なのか、中央付近に散開する。

 周囲の四組が魔力を高める。

足元に魔法陣が浮かび上がる。

描かれる図形は召喚系。

それぞれに2m以上はあるだろう人形ひとがたが浮かび上がる。

それぞれフレイウォルタアースウィンドの四属性をもつ精霊を召喚した。

ぼんやりとした発光体ではなく、定形のそれも人形ともなればかなりの力を持つ上位精霊だ。

その力は、冒険者ギルドで言うところのBランク魔物にも相応する。

召喚魔法とは、魔法陣を通じて世界の改変を行う秘術である。

通常の魔法以上に精密な魔力操作が必要であり、また、召喚した対象を使役する性質上、その実力も相応のものが求められる。

上位精霊を喚び出せるとは、かなりの実力者だ。

 しかし、そんな彼らを脇役とする中央の6人。

彼らもまた召喚魔法の準備をする。

感じられる魔力は、六名の一人一人が周囲の4人組に匹敵する。

魔力の流れによって現れる魔法陣の図形から、その効果を読み解く。

これは、虚無の大精霊!?

火、水、土、風の四属性に、その裏である闇属性。

それに純粋な魔力である無属性を組み込んだ、本来なら有り得ない“六属性複合魔法”。


 はっきり言おう。

こんなの、魔王ぼく以外に見たことがない。

かつて、勇者パーティの戦士と魔法使いの攻撃を受け止めた“崩壊する虚無カタストロフィ・ゼロ”がそれだ。

 複合魔法は、混合する属性の数によって難易度が跳ね上がる。

それを、無属性を含めて6。


 本来なら秘匿情報級の術式である、大精霊の召喚魔法に六属性複合魔法。

確実に魔法使い、フラウ=クリムゾンローズ、いや、ロゼリア=フランベルジュ導師の手引きだ。

彼女の魔王ぼくに対する執念は、既に常軌を逸している。

その彼女が作り上げた精鋭と戦うことになる。


 3番手はコール校。

クルス聖教の総本山だけあり、僧侶、つまり治癒術師がメインとなる。

だからといって、攻撃力にかけるかと言えばそうでもない。

母さんやメイシャがそうであるように、膨大な魔力を扱うには肉体の鍛錬も必要だ。

まして、知癒術師は肉体の構造について深く造詣ぞうけいがある。

よって、自らの肉体を“使いやすいように”鍛えることも可能だし、相手を“壊しやすく”攻撃することも可能だ。

優れた知癒術師は、潜在的に優れた格闘家でもあるのだ。

 コール校の選抜メンバーもそうであるらしい。

制服なのか、それとも本職なのか。

全員がクルス教の僧服を着ている。

もし僕の考えが正しいなら、コール校は、30人全員が“魔法闘士”ということになる。

人数が少なくとも「当たれば大きい」魔法使いが、闘士として小回りが効くようになり、しかも全員がそのレベルにあるとしたら…。

背筋が寒くなる。

 コールの生徒達が展開する。

2人の生徒が中央に立ち、残りの生徒が後方に円陣を組む。

一糸乱れぬ動きで、どちらも魔力を練り上げる。

やはり全員が魔力持ちなようだ。

中央の2人が行ったのは、ありふれた召喚魔法。

推定でCランクの魔物が召喚され、他のメンバーの方へと襲いかかる。

 対して28人の生徒が行ったのは、“光属性”による殲滅魔法。

本来、光という属性は存在しない。

四属性がそれにあたり、その反対存在として闇属性がある。

それでは、光魔法とは、四属性の複合魔法か?

答えは否だ。

四属性の複合は、所詮は同時発動という枠になる。

それを、統合して一つの上位属性へと進化させたのだ。

現れたのは、神の使いである羽根を持った人形ひとがた、天使の幻像ビジョンだ。

光が収束し、爆ぜる。

一瞬のうちに魔物が消滅する。

光魔法は、無属性以外の全てのものに絶大な威力を持つ。

闇属性には相対するものとして、四属性には上位属性として、だ。

そして、先ほどのノスマルクのように、人工的に作り出さなければ、無属性は自然には存在しない。

つまり、光魔法とは、現存するあらゆる物質に対して有効な猛毒なのだ。

まったく、恐ろしい博愛の力もあったものだ。


 最後に、大トリは僕達ノガルド校だ。

正直、ほかの三校のレベルが高すぎる。

生徒達の演習どころか、完全に国家秘密クラスの秘術がバンバン出ている。

よく見れば各国のお偉いさんたちは、顔が青くなったり、自慢するのに興奮したりで忙しそうにしている。

まぁ、インパクトでいえばうちも負けていないと思うが。

 エティウは、リュオの指揮の元による連携。

ノスマルクは、優れた魔法技術。

コールは、治癒魔法から発展させた光魔法を見せた。

では、ノガルドの強みとはなんだ?

そもそもノガルド連合国とは、中小数10もの国々がほかの大国に対抗するべく、より集まっている。

その中で盟主として最大規模の国力を持っているのが、ここエウルだということなのだ。

そして、ノガルド育成学校においてもその縮図は適応される。

様々な国から人材が集まり、寮も三つに分かれてそれぞれに特色を持つ。

そして、冒険者にとって、何よりも大切なのは、個人の実力ではなく、パーティの連携なのではないか?

そう、僕達ノガルドの強みは、一芸に頼らず、長所を生かし短所を補い合える仲間達だ。



 リュオは、考えていた。

どうもこの四校戦は、きな臭い。

コール、ノスマルク共に国家機密とも言える技を披露している。

自分たちの精強さを見せつけるため?

相手を萎縮させるため?

いや、いくら学園側の手動とはいえ、そこまで自由を許すことは無いだろう。

タイミングにも疑問が残る。

30年ぶりに開かれたというが、最近は大人しいが新たな魔王達も活動を続けている今、学生とはいえ国の精鋭を他国に揃って派遣するメリットがない。

そして、そのタイミングで学生として自分が参加させられている。

全てが偶然だろうか?

技術交流?それこそまさかだ。

暇さえあれば、隣国を責めることしか興味の無い王族達の考えは嫌というほど知っている。

 気づかなければただの祭りだ。

しかし、一度疑い始めれば怪しさしか見当たらない。

実は密かにジーン達には、四校戦について、調べてもらっている。

こちらは中から、ジーン達は外から、というわけだ。

それでも、この場にいるからこそ、こうして血の滾る思いをさせて貰っているのだ。

願わくば、俺の杞憂であって欲しい。

同時に、何か起こっても欲しい。

そうして、他国の演舞を見ていたが、思わず頭を抱えてしまった。

「あんのやろぉ、また面白いことしてるなぁ。」



 僕達の最大のウリは、三龍祭でもお披露目した、龍骸巨兵ドラゴリアスだ。

三龍祭を見てきたものは、訳知り顔で周りに説明し、初見のものは、その威容に驚嘆の表情を浮かべる。

しかし、そのまま出したのではただの二番煎じだ。

まずは、僕のドラゴリアスを先頭に入場する。

その手には、新たに大剣と盾が握られている。

 そしてその後に続くのは、ドラゴリアス同様に搭乗式の鎧巨兵・鉄鬼巨兵ゴリアテの軍団だ。

イーグレスの自由な発想が、骨ではなく最初から武装を積んだ鎧武者を選んだ。

ホーエリアの研究と研鑽で、その部品を最適化し、操作性も格段に上がった。

そして僕ほどに魔法と剣を扱える生徒は少ないが、それは戦士と魔法使いのセットで登場することで解決した。

リオネットの熱い魂は、エティウの軍隊行動にも劣らない連携を持つ。

戦士の動きのイメージを思念として捉え、ゴリアテを操作する。

特殊な念話魔法を使ったが、それでもこれを成功させるのは、味方ながら流石としか言いようがない。

 こうして、ドラゴリアスとゴリアテの軍団、ティタノーンのお披露目は完了したのだ。

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