第三章)新たな輝星 三龍祭一日目
だんだん乗ってきました♪
ほのぼの日常編にするよりもドタバタ喜劇の方が書きやすいですね。
もう書き始めて二月も経ちました。
これからも頑張ります( *˙ω˙*)و グッ!
■学園祭②
三龍祭が始まる。
今日から3日間、外部の客も招き入れて出店の出来栄えを競う。
生徒単位で出店しているが、その評価を寮ごとのポイントにするのだ。
そうして4日目の最終日に優勝旗の授与とプロムが行われる。
仮にも冒険者としても活躍する生徒達が、準備期間も含め約1週間も拘束される。
しかし、それでも行われるのは、単に周辺地域の経済効果だ。
既に先週のうちから近隣の貴族を始め、国外の要人や王族も、園付近の宿屋に陣取っている。
それもそのはず。
高レベルの冒険者が総力をあげて作る店が、ただの出し物で終わるはずもない。
討伐だけでも苦労するような魔物を素材とした宝飾品や料理。
奇抜な発送を元に作り上げられた新たな魔法の術式。
戦闘経験に基づく戦術や武器デザインの発表。
または、配下に加えるための下調べなどなど、彼らの目的は多岐に及ぶのだ。
「お食事はこちらへ~♪赤牛バーガーですよー!翼をさずけてくれるくらい美味しいよー。」
「さぁ、見てくれよ、この大きな角!ドルトゥスの森で俺が仕留めたんだ!Cランクの大物、速い、硬い、強いのヨーシ牛だぜ!」
各店、それぞれに一押しの品で客寄せをしている。
その中でもとりわけ人垣を集めているのは、
「さぁさ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!この夏、王都で流行間違いなしのドレスだよー!青粘魔のフリルで快適に!甲羅蜘蛛の糸で軽くて丈夫!素材の特性と加工技術で高品質と低価格を両立!時代を先取りできるのはここだけ!さぁ、見てってねー!!」
イーグレス寮一押しの服飾店だ。
先陣を切って売り込んでいるのは、情報収集と行動力の申し子。
ムードメイカー、ダンテ。
イーグレスにおいてもそのリーダーシップを遺憾なく発揮しているようだ。
正面で売りこんでいる品物はサマードレス。
染料や加工は、ギルドが協力しているのだろう。
色合いは爽やか、機能性とデザイン性、通気性も考えられている。
フリルに使われているスライム生地は目新しいものではないが、すぐに干からびてボロボロになってしまう点を、極小の水魔石をドレスの柄に取り込んで改善してある。
貴族だけでなく国外の要人が多い今年の特徴をよく掴んだ商品だ。
娘さんや奥さんにせがまれて、身なりのいい紳士が店に吸い込まれていく。
そうすると今度は男性用のアイテムが店内でずらりと待ち構えているのだ。
押せ押せのアピールを苦手とする男性の心理をよく付いた作戦だ。
「ふっふっふ。去年はリオネットの炒飯店に遅れをとったが、今年の優勝は貰ったぜー!」
ダンテが人目もはばからずに付近の店を挑発する。
しかし、当然ほかの寮も負けていない。
昼頃になると、次第に客数を伸ばす店が現れてきた。
「お店巡りにお疲れになったらこちらへどうぞ~♪癒茶と水棲椰子オイルのマッサージ店です~♪」
「絶品の珍味、究極の美味を極めたい方は是非こちらへ!おひとり様限定一品のみ!幻の宮廷料理、毒王鮭料理を食べる機会は今だけですよ!」
青色の看板で向かい合うように作られた屋台は、ホーエリアの出店だ。
ホーエリアは女性向けの喫茶店と高級料理の二枚看板で攻めてきた。
このチョイスは間違いなくメイシャの差し金だ。
癒茶は、王都で流行っている嗜好品で、回復草と茶葉の配合、最後にかける治癒魔法が決め手となり、味もさる事ながら疲れをとるのにピッタリだ。
そこに美味しい甘味とメイド服を着た治癒術師の生徒がフットマッサージを行う癒しのコンセプト。
これで女性はもちろん男性にも人気が出ないわけがない。
そして、毒王鮭料理は、謳い文句の通りかつては宮廷料理として出された究極の一品。
その名にあるように強力な毒を持つ毒王鮭だが、その毒こそが強い旨みを持っている。
これを調理するには、体に害がないギリギリまでの繊細な解毒魔法が必要だ。
だが、ホーエリアには、強力な治癒術師が2人いる。
寮生長のマーマレード=グランテと、期待の新星アルメシア=ブランドールだ。
家業で旅をしていたメイシャは、調理素材の解毒術に長けていて、遠征時の食事には助けられていたが、まさかそれを宮廷料理の復活に使われるとは。
「メイシャ、解毒の調整はしっかりね!給仕係は、お客様が二回以上食べないように食事済みの魔術刻印を忘れないでね!」
「大丈夫です、おねーさま!みんなたくさん張り切ってますから!…私も、今は敵同士だけどラク様にいっぱい褒めてもらうんです!!」
張りきる聖女見習いの声と、それに呼応する生徒達の掛け声がこだまする。
イーグレスのサマードレスに、ホーエリアの喫茶店と宮廷料理。
それぞれに賑わう中、それとはまた違う熱気をもった店が待ち構える。
通りを赤一色の出店で揃え、その奥に陣取るようにして構える巨大な食堂。
そう、去年の覇者。
リオネット自慢の炒飯店だ。
魔法使いが火魔法で炎を操り、風魔法でその火をゴォッと舞いあげる。
その火の中で大鍋を振るうのは、むさ苦しくも猛々しい、歴戦の戦士達。
「はっ!はっ!はぁぁぁっ!!!」
ガコッ!ガコッ!と鍋と米が舞い踊る。
荒々しい炎に負けぬようにと気合いも十分に鍋と格闘する。
その傍らでは、同じく激しい炎にあぶられ、巨大な肉塊がクルクルと回っている。
そして表面が焼かれるとそれを薄く削ぎ落とし、炒飯と一緒に提供される。
給仕をするのは、ボディラインにフィットした、大胆なスリット入りのドレスで艶やかに彩られた女子生徒たちだ。
激しい炎と戦士達の舞踏のような調理パフォーマンス。
そして回転焼きの肉塊から落ちる豊かな肉汁が炎で弾け、音と香りで客を際限なく呼び寄せる。
これが視覚、聴覚、嗅覚に訴えかけるリオネットの究極兵器だ。
「大鍋隊、炎に負けるな!皆で心を合わせて、魂を込めろ!魔法隊、遠慮はいらん!鍋も米も燃やし尽くす気で火を集めろ!」
寮生長メイサンの号令の元、次々と料理が運ばれる。
さらに、周囲を自寮の出店で固めたことで、スープや小鉢などのサイドメニューも充実だ。
「…どこも去年より凄いぞ…。」
出品の内容を検討した結果、初日は出店巡りを優先することにした僕とラケインは、あまりの活気に呆然とする。
「大丈夫さ、ラケイン。僕たちの作品なら勝てるさ!」
そう、はっきり言って自信作だ。
空元気でも虚勢でもなく、本心でそう言った。
ともかく、今日は敵情視察も含めて、学園祭を楽しむことにしよう。
リオネットの熱気に充てられて、気分を落ち着けようと、まずはイーグレスのエリアに訪れる。
サマードレスだけではない。
他にも個人で出店している屋台にも面白い品は盛りだくさんだ。
どこも賑わうなか、まるで人払いの結界でもあるかのように、無人の屋台がある。
「あ~、アロウ君、ラケイン君。来てくれたのぉ?」
エレナ先生のクラスにいる同級生で、どこかで聞き覚えのある間延びした喋り方をする少女だ。
華奢な体つきでいかにも魔法使いの様な可憐さを持っているが、これでも戦士系の冒険者だ。
見た目以上のパワーで、大盾とハンマーを軽々と扱う。
彼女の名前は、カーレン=ダイパ。
なんとこの見た目で、リオネット寮長のゴーワンさんの娘なのだ。
この世界は何かが間違っているな。
「こんにちは、カーレン。来たというか、今から順にめぐろうと思っただけだけどね。ここは、えっと…研究発表の屋台か。」
自由を特徴とするイーグレスは、リオネットのように一致団結したり、ホーエリアのように作戦を練ったりすることがない。
その分、各自で奇抜な研究を行うものも多いのだ。
「うん、発表だけで地味だからねぇ。あんまり人目につかないんだぁ。」
あんまり、というよりまったく、といった感じだが、こののんびりとした少女はまったく気にした様子もない。
そもそも研究肌の学生に多いが、専門の学者達とは違い、研究成果が人目に付くことに、あまり興味を持たないのだ。
研究とは自己の中で完結され、研ぎ澄まされるものであり、それが他者に影響を与えたり引き継がれることには無頓着だ。
「なんの研究なのかな?なになに…、えっ?これ割と凄くない?」
「…ホントだ。ギルドなら大金出すぞ、これ。」
ラケインと僕は、その内容をみて唖然とする。
体力や魔力を回復する薬は、冒険者にとって必需品だ。
カーレンの研究は、これまで回復草とひとまとめにされていたものを、種類や産地、鮮度事に細かく分類して、その抽出方法に最適なものを調べている。
さらに、それぞれの薬草をブレンドすることで、新たな回復薬を見つけていた。
これは、回復薬製造の大手、《永遠なる眠り》の上級薬にも劣らない効能だ。
「カーレン、これ、学園祭終わったらとりあえず1ケース売って。まじで。」
「…魔力薬もな。メイシャがうるさいぞ。」
「わ~い、ありがとー。アロウ君もラケイン君も大好きー。」
これは、伝を使って広めるべきか、密かに温めておくべきか迷うな。
これまでの投稿分の改定案として、
①追憶の項を、独立させて短編小説にする。
②各話の題名を、数字の連番ではなく、個別に付ける。
以上を考えています。
本編について、改訂について、ご意見お待ちしています。
感想、レビューほすぃ(*´д`*)ハァハァ




