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第九章)最後の魔王 魔眼の王

▪️破滅の序章③


「よお、派手にやってるみたいだな、アロウ」


 突然、頭の中で響く豪快な声に目が覚める。

繋魂(コネクト)の術式は、連絡を取り合う分には大いに役立つが、こちらの都合など構わず受信してきまうのが難点だ。


「……おはようございます、リュオさん。すみません、今具合悪くて。こっちも水晶出すのでちょっと待っててください」

「お、なんだ悪かったな。大丈夫なのか?」

 普通に起きているときならば、受信の前に起こる事前波長で身構えることが出来るのだが、就寝時にはなかなか察知しきれない。

まして今は、体調が最悪だ。

こうした応答ですら頭の中にわんわんと響き、胃の中が荒れ狂う。


「すみません、一度切ります」

 傍らで休んでいるリリィロッシュに、偽・繋魂(コネクト)用の水晶を取ってきてもらい、自身の魔力を移し込む。

水晶での通信は、貯めておいた魔力を利用して魔法使いでなくとも念話ができるだけでなく、こうして魔力を同調させることで、自分に来た念話を水晶で受信することもできる。


「……あ、リュオさん。すみませんでした」

「お、きたか。どうした、顔も赤いな?」

 水晶に映るリュオさんが心配そうに顔を大きくする。

思わず苦笑する。

恐らく、向こうの水晶に映る僕を覗き込んでいるのだろう。


「顔、近いです。えぇ、数日前から体調を崩していて、熱がだいぶ高いんですよ。それでも落ち着いてきた方なんですけどね」

 ドレーシュの一件以来、暫く体調がおかしかったのだが、ここ数日の間、高熱にうなされている。

色々と無理を推して来たせいなのか、この体になって以来、これほどに体調を崩したのは初めてのことだ。

ノガルド解体以降、各地で治安が悪化し《砂漠の鼠(デザート・チュウ)》含め冒険者ギルドは、連日満員御礼状態なのだが、僕達“反逆者(リベリオン)”は、ルコラさんに無理を言って休暇をもらっている。

元より、街道警備や旅行者の護衛など、Sランクが動くほどの高難度依頼は、さほど多くないというのも理由の一つではあるが。

事のついでとばかりに、ラケインとメイシャは南国(ノスマルク)方面へ新婚旅行に出かけている。

僕も体調が悪くてダウンしているとはいえ、久しぶりにリリィロッシュと二人きりの生活を楽しんでいるというわけだ。


「そりゃあ間の悪い時に連絡しちまったな。すまん。だが、どうしてもお前さんに聞きたいことがあってな」

 片目をつぶり茶目っ気たっぷりに片手を顔の前で立て詫びるリュオさんだったが、あまり得意ではない偽・繋魂(コネクト)を持ってくるあたり、余り状況は良くないのだろう。

それを踏まえ、リュオさんからの次の言葉に身構える。


「アロウ、木や物を傷つけず、国単位で生物を滅ぼせる兵器に心当たりはあるか?」

「ち、ちょっと、リュオさん、待ってください」

 全身が総毛立つ。

続く言葉を待つまでもなく、まずは念話を切る。

内容の真偽はともかく、戦略級の破壊兵器についての会話だ。

魔法使いではないリュオさんだから仕方ないのだが、普通の繋魂(コネクト)回線で話す内容ではない。


 実の所、念話というものは、精神間で通じるだけに秘匿性が高いと思われがちだがそうではない。

精神世界に時間も場所も関係ないとはいえ、実際には物理的な距離を念話が飛んでいる。

かなり高度な術式にはなるが、その念話を傍受する術もまた存在している。

ましてリュオさんは、西国(エティウ)最強の将軍である。

どこの誰がマークしていてもおかしくはない。

こういった話の場合、実際に会うか、かなり秘匿性を上げた特別な念話術が必要となる。


「……リュオさん、突然繋魂(コネクト)を切ってすみません。ですが、通常の念話では、盗聴の恐れがあるんです。そちらに信用のできる高位魔法使いはいらっしゃいますか?」

「む、そうだったか。それはこちらの不注意だな。じゃあジーンを呼んでおくから今夜また通信することにしよう」

 そう言って、念話を切る。

だが、生物だけを滅ぼす兵器、か。

いくつかの可能性はあるが……、まさか……。




 その夜、水晶にリュオさんからの秘匿通信が入る。

傍らにはリュオさんの相棒であるジーンさんが映っている。

個人でのSランク冒険者、“白刃(ホワイトファング)”のリュオ、そして同じくSランクの“氷主(ブルーエレメント)”。

もう数年来の付き合いになるが、この世界で最強の戦士と魔法使いのコンビである。


「待たせたな」

「いえ、ジーンさんもお呼びだてしてすみません」

 リリィロッシュとジーンさんによる秘匿回線の念話だ。

余程の間違いがない限り、外部からの傍受は出来ないだろう。


「さっそくだが、昼間に話していた件だ」

 そうだ、前置きを話している余裕はない。

もし、万が一、限りなく低い可能性として、魔王としての記憶の片隅によぎったあれ(・・)が使われたのだとしたら、状況は最悪だと言える。


「その事ですが、まず前提として、国が滅びるレベルの事件が実際に起こった。そういう認識で間違いないですね?」

「ああ、その通りだ。一週間前の話だ。言ってもわからんかもしれんが、エティウ領内のエニウス王国が滅んだ。軍の諜報員も確認済みだ」

 エニウスという名には心当たりがある。

南国(ノスマルク)西国(エティウ)の間にあるオウコ大砂洋。

そのすぐ北側にある、言わばエティウの南端に位置する小国だ。

この大陸に作った魔族の拠点、魔王城は、オウコ大砂洋にあるため、魔族の侵攻時にはまず始めに攻め入る国の一つである。


「エニウス王国なら知っています。ですが、大規模な戦闘や小魔王の侵攻という事はないのですか?」

 大きな街程度の規模しかない小国とはいえ、それが全滅しているもなれば、その手段は限られる。

一番に有り得そうなのは、“密林の蛇王(ナーガロード)”クラスの集団による略奪か、活動的な小魔王による破壊、または大規模な魔物の突然発生などなのだが。


「いや、ありえないな」

 だが、リュオさんからは否定の言葉が発せられる。

その言葉は重く、被害が尋常のものでは無いことが伺える。


「国ひとつ滅んだんだ。どれほど過小評価しても異常事態だ。だが、そんな当たり前(・・・・)の状態じゃない。街も、木も、湖も傷一つなく、街には生活の痕跡が残ったまま、人と動物だけが消えた。食べかけの料理や干しかけの洗濯物が残ったまま、人がいなくなった。死体さえもない。本当に、いなくなって(・・・・・・)しまったんだ。そんな悪夢のような話、人間(おれたち)には聞いたこともない」

「……っ」

 本当に人が消えた(・・・)のか。

だとすれば、考えたくもないが、ありえないはずの可能性が高まる。


「一つだけ。あれが持ち出される可能性なんてほとんどないはずなんですが、そんなことを引き起こせるのは、僕の知り得る限り、あれ一つだけしかありません」

「知ってるのか! あの、元凶を!」

 リュオさんが食い入るように近づく。

いつもおおらかで、飄々として、豪快な彼ではない。

あまりの奇異さに、僅かながらに恐怖の色を伺わせる、その声に、気迫に、水晶の映像越しにも圧倒される。


「封印された兵器。昔の『魔王()』ですら、使うことを諦めた太古の兵器があります。……破戒級広域殲滅兵器、『魔眼の王(バロール)』。あれが持ち出されたのならば、その意味はひとつ。旧魔王軍、その本隊の侵攻が再開されます」

何度もサブタイトルを魔眼の王にしては後回しにしていましたが、やっと使えました。

話のテンポと説明が上手くありませんね

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