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ドリーム・アン・ヒーロー(仮称)  作者: ゆっき/Yuyu*
メリーちゃんと電話
9/10

09

 次に目覚めたのは――

「んっ!? ……生きてる?」

 起き上がって、周囲を見渡す。見たこともない屋敷だった。和風の畳の上に寝かされていたらしい。僕は手で自分の顔を確認する――待て、

「手が戻ってる……?」

 くそ、わからないことだらけだ。

「あ、起きた?」

 ふすまを開けて、ひとりの女性がこの部屋に入ってくる。

「えと……」

「あぁ、無理はしないでいいよ。しかし、ごめんね、間に合わなくて、ここまで深く巻き込んじゃって」

「へ? あの、えっと、もしかして?」

 目の前の女性に見覚えはあまりない。小さな黒い翼が生えている、ショートの茶髪で少なくとも僕よりは年上の雰囲気の女性。だけど、その声はなんとなく――

「ミナさんですか?」

「その通りよ。というか、わかってなかったか」

「いや、だってこの前あった時は」

「あれはちょっといろいろあってね……あはは」

 頭を掻きながらミナさんはいう。最初見た時は戸惑ったけど、なんとなく今のほうがイメージというか雰囲気と服装とかが一致してる気は確かにする。

「あら、起きたの?」

「あ、うん。みなみん、この人がこの前言っていた本物の賢者」

「こんばんは。境界ノ御霊です」

 そう名乗ったその女性は、どうみても賢者というよりは巫女にしか見えない。

「ミタマさん……? えっと、不柴水都です。ってそうじゃなくて、あれ? えっと何から聞けばいいんだこれ」

 戸惑いつつも礼儀として名乗るが、どうしても状況な掴めなくなっていく。

「まあわたくしから説明しましょう」

 ミタマさんはそう言うと、そばに座る。

「とりあえず、まずは巻き込んだことを謝らせて頂戴。今回はごめんなさい」

「あ、いえ……結局協力したのも僕ですし」

「そう言ってくれると助かるわ。それで、そうね……まずはあの狩人のことからかしらね」

「は、はい……なんなんですかアレ」

「あれは簡単にいえば、世界に対して現れた修正力が具現化したものと言われているわ」

「修正力?」

「ゴムは伸ばせば元に戻ろうとするでしょう? それと同じように、この世界は、バランスを壊しかねない存在が現れるとそれを修正ないし排除しようとしてくるの」

 なんとなく、ラノベとかにありそうな設定だな。だけど、今の僕ならそれも受け入れられるぞ。あれだけのことがあったんだしな。

「普通に生活しているならば、それに関わることはまずはないわ。だけれど――」

「僕はメリーちゃんと関わった?」

「そうね……最初はわたくしもそう思っていたの」

「何か違ったんですか?」

「少し思っていたこととは違ったわ。メリーちゃんに修正力が働くのは、まず間違いのないことなんだけど、よく考えると早すぎたのよ――まだ、現れてそこまで時間が立っていないのだから」

「じゃあ、なんでその狩人が現れたんですか?」

「わたくしの仮説になるけれど、ひとつは修正が即時必要とされるものがこの周辺に現れたというのが有力ね」

「修正が即時必要な大きなこと……」

 思い当たる節は正直存在しない。ただ、僕の場合はそれが当たり前のはずだ。

「そのひとりが君なのだけれどね」

「へっ?」

「メリーちゃんの携帯をみた時に、なにか入ってこなかった?」

「……そういえば、たしかにわからないですけど、何かが入ってきました」

 ミタマさんの携帯という言葉に若干、年齢への疑問が浮かんだが、ひとまずおいておく。

「まあ、それがかなり厄介なものだったという感じだったのよ……わたくしも気づくのがおくれてしまったわ」

「じゃあ、狩人が狙っていたのって」

「メリーちゃんだと思っていたけど、もとよりあなたを狙っていたようね」

「そうだったんですか……」

「ミナにはその対処をしてもらっていたけれど、情報にも少し齟齬ができちゃっていたみたいでね……」

 そういうことだったのか。だからメリーちゃんを見ていてほしいって話に――

「待ってください。でもそれなら、僕が死んでない理由ってなんなんですか?」

「そこも今から説明するから待ちなさい……まずはメリーちゃんの携帯についてだけれど、あれにトラップを仕掛けた奴がいたの」

「トラップを?」

「そう。メリーちゃんにかけようとしたんだろうけれど、それは発動しなかったみたい。調べてみると人か幽霊や怪異みたいに、存在が10に確立してる必要があったみたいでね」

 そうか、メリーちゃんは狭間の存在だったから。

「そこで人間純度10の君はスマホを見て、発動してしまったみたい。そのトラップを仕掛けた奴がまた、厄介な神様のひとりでね。自分が見て笑えればそれでいいやって、そういうの投げ置いていくのよ」

「そうなんですか……って、ことはつまり」

「まあなんとなくわかると思うけど、今の君は人間だけでなく、神などの超常的な部分が3わりほど存在しているは。それで怪異とくらべて存在しては行けない神にたいしての修正は大きなものになっちゃうの」

「世界の根底からひっくり返しかねないとか?」

「そういう奴もいるわね。とはいえ、今は別の問題が起きちゃってるけれど」

「別の問題?」

 そう言った後、ミタマさんはなくなったはずの手を指差した。

「修正力で神的な部分は消え去ったのだけれど、君は人間として追い出された3割が戻ってきていないの。その結果、君の境界と呼ばれるものの幾つかが壊れてしまっている」

「境界?」

「そう。人間関係も老いも病気などもすべては境界が正常だから起きているのよ。だけれど、そのバランスが今崩れてしまっているの。具体的には、生命の境界が壊れてしまっているわ」

「そ、そうなるとどうなるんですか?」

「今回の君の場合は死ねなくなるわ。心臓を壊されないかぎり。いくら痛みを得ようと傷は治るし、意識を失うこともできない。多分、あなたが狩人にやられた時に気を失ったのは、境界がこわれたのが原因だと思うわ。大きすぎる負担でね」

「それって、もしかして睡眠がとれなくなるとかそういう?」

「……ふふふっ」

 何故か、僕の質問にたいしてミタマさんは笑い出した。

「僕は結構真剣なんですけど!?」

「いや、だって。まさかそんな事を気にしてくるとは思ってなかったから……ふふっ、ごめんなさい。えっと、それはないわね。あくまで痛みなどで本来意識を失うことで、ストレスなどの負担を減らす機能が壊れるって話だから」

「そ、そうですか。それって元に戻るんですか?」

「なにもしないと無理だけれど、わたくしは名前の通りの境界に関わるものよ。時間はかかるけど任せなさい」

「よ、よかった……」

 僕はほっとすると、ミタマさんは立ち上がって目の前の空間をなぞるようにする。すると、その空間が開いて、僕の家の前の道に繋がる。

「傷は治ってるしもう大丈夫よね。あれから、まだ1時間位しか立っていないから、心配させる前に家に帰りなさい」

「あっ、はい……えっと、ありがとうございました?」

「正直、わたくしにも今、この時に正しい挨拶は思いつかないわね」

 立ち上がって一礼して僕は、その道に入った。そして空間が閉じる前に。

「それと、もうひとつだけ頼まれごとをしれくれないかしら?」

「いいですけど?」

「それじゃあ――」


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