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ドリーム・アン・ヒーロー(仮称)  作者: ゆっき/Yuyu*
メリーちゃんと電話
3/10

03

 少女の悲鳴が上がりながらも、周りの家などから誰も出てこなかったりと不自然なことはあるが、とりあえずいたずら電話の主――仮にメリーちゃんとしておこう。

 メリーちゃんを確保した僕は、熱中症などの心配もあるので近くの公園にある、でかい桜の木の影に腰を下ろした。メリーちゃんはおとなしく肩に担がれてくれた。


「それで、何でこんなことしてたんだ」

「それがわたしの役目だから」

「イタズラ電話をかける役目ってなんだよ……」

「メリーさん!」


 駄目だ。話が通じない。この状態で、今後はこんなことしちゃいけませんよ。なんて言っても、絶対に本気に受け取らないと思うんだよ。いやね、僕は別に悪いことをした子供を叱りたいわけじゃ決してないんだ。ただ、妙に僕の携帯にしつこく電話かけてくるからやめさせないと、またかけてきかねないなって思うことから。そう、つまりは先を読んで対策をとることを今しているんだよ。


「……そうだ。お嬢ちゃん」

「なに?」

「お兄ちゃんがお小遣いをあげようじゃないか」

「えっ!? やったー!」


 完全に怪しい人である。

 だが、その間にまだ返してなかったスマホの中身を確認してみる。幸いにも、タッチすれば開く初期設定のスマホだった。

 だが、そのスマホを飛来た瞬間に、僕の予想を。いや、人間の予想を範疇を超えたナニカが画面から飛び出てきた――。


 ワレ、ココニアリ。

 ヒトナラザル。ユエニヒトデアリツヅケル。

 神人にて、死人であるべき、生と静を生き続けるモノ。

 混沌のダシ、闇のカルドがギニアの聖杯を満たし続けル限り、人の叡智の時はコぬ。


「うわああっ!?」


 思わず、スマホを落としてのけぞってしまう。そのまま、桜の木に頭をうって、ものすごく痛い。


「だ、大丈夫?」

「え? あぁ、うん。大丈夫だ」


 さっきのはなんだ。理解できない何かが、目から頭に入ってきた。

 僕の脳はそれをかろうじて理解させようと、言語化してたはずなのに――さっぱりわけがわからない。さっきのは何だったんだ。というか――。


「このスマホ返すよ」

「は、はい!」


 笑顔でそのスマホを受取るメリーちゃん。いや、奪ったのが僕だからこの笑顔に、何かの感情を抱いてはいけないわけだけど、それ以上に気になる。

 メリーちゃんはこのスマホを使っていてもなんともない。この違いは一体何なんだ。


「お兄さん、名前はなんですか?」

「ん? 不柴水都だ。水の都って書くんだぞ」


 なんとなく、年齢もわからないので近くの樹の枝を拾って、地面の砂に漢字を書く。


「水の都! すごい、綺麗な名前ですね!」


 ものすごい目をキラキラさせてそう言われてしまった。そんなこと妹にしか言われたことがないぞ。しかも、小学校時代のピュアで漢字を習ったばかりだった。


「うん……ありがとう」

「うにゃっ……な、なんで撫でるんですか」


 無意識に頭を撫でてしまっていた。いや、すごい高さ的にもちょうどいいし、撫でたくなっちゃうことはあるだろ。


「それで、お嬢ちゃんの名前はなんて言うんだ?」

「メリー! メリー・スチュアラ・フォートです!」


 すごい長い。えっと、メリー・スチュアラ・フォートか。


「メリーちゃんでいいか?」

「まあ、それでいいです」


 ここに来て、若干の妥協した感じ。先程までのピュアはどこにいったんだ。


「じゃあ、メリーちゃん……とりあえず、僕にやたらめった電話をかけてくるのはやめてくれないか」

「だ、だって、普段と違ったんですもん」

「普段と違った?」

「普段は電話をかけて少し話せば、その人の後ろに移動できるんです」


 何だその、ホラー現象。移動する本人すらホラーを感じちゃうんじゃないか。


「うん、まあよくわかんないけど。とりあえず、普段と違う以前にいたずら電話をするのを、やめないかな?」

「いたずら電話じゃないです。わたしの生きがいです」

「……自分の知らない番号に電話をかけるのが?」

「そうです」


 どうしよう。この子にいたずら電話が何かという、小学生以下に説明するようなことを言わなければいけないのか。それなら、むしろ着拒したほうが利口な気がしてきた。ていうか、僕はここにくるまでに着拒の存在を忘れていたんだろう。

 ――そうか、着拒する相手がいないのが当然と思っていたからだ。あれ、目頭が熱くなってきたぞ。


「それなら、そうだな……」

「…………」


 僕の続きの言葉を待ってる様子のメリーちゃん。ぶっちゃけ僕はヒーローとか、主人公なんかになるつもりはないんだ。僕に被害がなければそれでいい。

 こういうのは逆に考えればいいんじゃないか。知らない相手にかけるのを生きがいにしているなら、こちらから教えてしまえばいい。


「メリーちゃん、僕を連絡先を交換しないか?」

「へっ!? いいんですか?」


 おっと、予想外の反応だぞ。僕はここで、そんなことしたら今後電話できなくなるからダメです――みたいなのを予想していた。だが、答えはとても嬉しそうに、本当にいいのか今一度聞いてくるという反応だった。


「い、いいに決まってるじゃないか! 人類みな友達だって言うだろう!」

「そうですね! 人類みな友達です!」


 とりあえず、赤外線という便利機能を使ってプロフィールを送り合うことにする。


「えっと、これでいいのか?」


 僕は送信側で初めてこの機能を使って送信してみる。すると画面に『2件送信完了しました』と表示される。


「では、つぎはわたしが」

「ついでに私も」


 ん。今なにか声がひとつ多かったぞ。画面には『メリーを登録しますか?』と表示されて、はいのボタンを押す。その後、続いて2件目の――神宮寺わかなを登録しますか。という表示を見た瞬間に、隣にいつのまにか増えていた気配の主を確認・認識した。


「うおっ!?」

「また、そんな反応」

「だ、だって、てっきりあそこで別れて、家に帰るなり目的に向かってるかと思ったから」

「小さな女の子に背後から近づいていく、同級生をそのまま見逃すと思うのかしら?」

「…………」


 そういえば、あの状況なら絶対に見えますよね。


「だけど、犯罪に手を染めたりしてるわけじゃなさそうだったから。今日は私の番号も登録することで許しておくわ」

「そ、それは、ありがとうございます?」


 ――よくわからないが、神宮寺わかなという超人気者の番号とメールアドレスを、僕はゲットすることとなった。

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