海を旅するは
ぷくぷくぷく。
ぽこぽこぽこ。
流れに任せ進む。
いや、正しくは『任せるしかなかった』だけだ。
木から川へ落ち、赴くままに海へ出ることになってから、ただただ流されここまで来た。
どこへ行くのか、終着点が見えない旅が始まって久しい。
自ら止まることは不可能で、最早元いた場所へは戻れない。
しかし、不運だとは思わない。
広い世界を知ることは、とても楽しいことだからーー。
◇◆◇
ちゃぷん。
(今はどこを移動しているんだろう)
温かく透き通った水中からするに、南の海だろうか。
周りでは魚達が気持ち良さそうに泳いでいる。
(大きな生き物も、小さな生き物も、たくさんいるなぁ)
今まで見て来た中で一番大きいのは真っ白い生き物。
一番小さいものは見えるか判らないぐらいの生き物。
形は様々、印象もそれぞれ違う。
(色も鮮やかだったり、暗かったり。同じ魚なのに不思議だなぁ)
派手な見た目から地味なものまで。
見ているだけで面白い。
(でも、そろそろ海面に浮き上がりたい)
海の碧も良いが、空の蒼も好きだ。
『あお』と一口に言っても色味に違いがあるということを知ったのは、大海原へとこの身が流されてから。
ーー終わりが見えない旅。今も流され、次の場所へと思いを馳せる。
◇◆◇
ぷくぷくぷく。
ぽこぽこぽこ。
ゆらゆらと流れに身を任せるは、果実。
これは、果実が海を旅をする物語。