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ハイパーなスーパー

作者: 灯宮義流
掲載日:2008/01/13

 遠い遠い未来の話。

未来のスーパーには、様々なものが求められていた。

時計、テレビなんていうのは序の口で、今や世間は派遣社員やブルドーザーなどを求めるようになっていた。

もはや、日常に使う生活品を売るだけのスーパーなど時代遅れ、それどころか経営すら危ない。

そんなわけでどこのスーパーも、『ハイパー』になることを強く求められていた。

そしてここは、こういった事情から改革を目指し始めた一軒のスーパーの話である。



 ある日、朝早くの時間から、中年男性がのっそりとやってきた。

しかし首だけはしきりに右へ左に動かしていて、何か探していますということを身体全体でアピールしていた。

流石に見てられなくなった店員の一人が、男性の方へと近づいた。


「いらっしゃいませ、何をお求めでしょうか?」

「おお店員さんすみません、いいですか?」

「勿論、何でしょう?」

「実は警察手帳を失くしてしまいまして……」

「こちらで失くされたんですか?」

「いや、そうじゃなくて、失くしたから買いにきたんだ」

「あーなるほど、そういうことならこちらになります」


 店員は『手帳』のコーナーへと男性を案内した。

そこにはたくさんの手帳が並んでいて、警察手帳もしっかりと並んでいた。


「おお、これだよこれ、ありがとう」

「それはあくまで外観のものだけですが、もし失くした手帳の中身がなければ偽造サービスをすることも出来ますが」

「はい是非! お願いします!」


 男は救われたような顔をした。


「かしこまりました、少々お待ちください……免許や保険証はお持ちですか?」

「はい、保険証ですが」

「お預かりいたします」


 店員はそう言うと、レジの後ろにある機械の方へと移動して、何か操作し始めた。

そして、保険証を機械にかざすとあら不思議、あのドラマかなんかで見る警察手帳の中身が出てきたではないか。

どうやら男の個人的な情報がたくさん書き込まれているみたいで、かざすだけでこれだけのことが出来る未来の世界を窺い知れる。


「……はい、終わりました、こちら合わせて2000円になります」

「いやあ助かったよ、これでマスコミに叩かれなくて済むってもんだね」

「ありがとうございます、またお越しくださいませ」


 男は苦笑いして、もうこの用件では来たくないねというと、そそくさと去っていった。

その翌日、二人の願い叶って、男は始末書と辞表のテンプレートを買いに、真っ青な顔でまた店にやってきた。



 一週間後、違う客がやってきた。

今度はかなり高齢の年寄りだったが、その足取りはやたら軽快であった。

というより、下手な引きこもり青年や運動不足になっている昨今の連中より、ずっと軽い身のこなしをしていた。

老人は何かを探していた、店員はそんな元気ハツラツな老人を見ていてウキウキしたおかけか、見かけるとすぐに声をかけた。


「いらっしゃいませ、何をご注文ですか?」

「すいませんが、若返りの薬はありませんかね?」

「はい、ございますよ、お客様は運がよいですね、あと三つしかないところでしたよ」

「おおそうですか、いやあ今日は朝の占いだって私の双子座が一番でしたからねえ」


 老人はそう言いながら金を渡しつつ、若返りの薬を店員から受け取り、一気に飲み干した。

するとどうだろう、あんなにシワシワな梅干よりも酷いような見てくれだった老人が、まるで大学を出たての新入社員みたいに若くなってしまったではありませんか。


「よーし、これでまた十年は頑張れるぞ!」

「はい、また十年経つと血流が異常に早くなって心臓に多大な負担がかかりますのでご注意くださいね」

「ああわかったよ、ありがとう」


 元老人は、意気揚々と店の出口まで歩いていくと、自動ドアのあたりでバッタリと倒れた。

彼は、この薬を使ってから患っていた心臓病の発作によって、その場で死んでしまったのだ。

しかしその顔はとても幸せそうで、その笑顔に誰もが涙したという。



 一週間後、今度はやけにいそいそとした客が店にやってきた。

店員も少し怪しい視線を向けながら仕事をしていたが、そんな店員の目も気にせずその客は店員の元へと走ってきた。

やけに慌てている、というより何故か息が荒い男で、少し怪訝な顔をしつつも店員は声をかける。


「ど、どうされましたか?」

「あの、すいません、人の死体ってありますか」

「……えっと、人の死体ですか」

「ええっ、今すぐちょっと必要でして」


 そういって男は自分の真っ赤に染まった手を店員にチラッと見せた。

店員は少し目を瞑って考えていたが、すぐにその質問に答えた。


「申し訳ございません、今ちょっと死体はきらしてるんですよ」

「そうなんですか……」


 男は心底残念そうな顔をして、店員に背を向けた。

そのまま店を出ようとする男だったが、そんな彼を店員は慌てて呼び止めた。


「あ、お客様! お客様!」

「……はい? どうかしましたか」

「今店に在庫はありませんが、今すぐに死体はご用意できます」

「おお、本当ですか?!」

「はい! では少々お待ちくださいね、すぐに済みますから……」


オチが読めるというオチシリーズ? 自分の勤務先にくる客に対する毒が混ざっています。

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― 新着の感想 ―
[一言] ネタの発想がおもしろかったです。 文章のテンポもよく、刑事さんやおじいさんのオチもしっかりとあるところが、いちいち笑えました。しかし1番よかったのは、彼らの言動の描写が生々しいところです。(…
[一言] はははははは。これはおもろい。警察手帳も若返りも死体も全部好き。 個人的に、最後の死体を作る描写もやっちゃうとよかった。しつこいかな? 思い切って客を殺して「あ。これじゃ意味ない」とか。 ボ…
[一言] とても面白かったです オチが予想がついても楽しめました
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