夏至
「あっつぅ~」
高校2年の井野嶽桜が、教室で、机にへばりついて溶けていた。
「今日は梅雨の中日だからね。蒸し暑くなるのは、ある意味当たり前かも」
同級生の山口鈴が、桜の前の席に座って、答える。
「そういや、今日って夏至だったね」
二人に話しかけてきたのは、豆見加多古だ。
「そうそう、新聞に書いとった」
さらにそこへ陽遇琴子もやってくる。
いつもの面々だ。
「そういや、夏至って何だっけ。一番昼間が長くなる日だっけ」
桜が鈴たちに聞いた。
「そうやで。つまり、いっちゃん太陽が高く上がる日でもあるんや。まあ、細かいことはええんやけどな。この日は、ヨーロッパの方やったら、お祭りになっとるんやで」
「お祭り、いいなぁ」
ホンワリとした口調なのは、豆見だ。
「ここから先は、冬至に向かってどんどん日が短くなるばかりよ」
鈴が言った。
「寒いのは嫌だなぁ」
また、豆見がこぼす。
「いいじゃない。それも楽しいわよ」
桜が、そう言って、あいかわらず机にへばりつきながら、みんなに言った。