姫のドレスと、吟遊詩人。
おくれてすいません。もうしわけございません。ほんっとすいません。
「ねぇルー。」
「なんでしょうマリアンヌ様。」
「今度の夜会で私が着るドレス、誰が作るの?」
「私がお作りいたします。誠心誠意、魂込めて、寝る間をもおしみ会場で一番のドレスを作ってごらんにいれましょう。」
「色は?」
「ご注文通り、黒です。」
「そうよねぇ・・・。」
これは、少し前の私とマリアンヌ様の会話です。
そして、いま私が作っているのは。
「白のドレス・・・。」
マリアンヌ様は、さるご令嬢に喧嘩をふっかけられたことをお話ししてくださいました。黒のドレスは完成していたのですが、私とマリアンヌ様は喧嘩を買い、ご令嬢を返り討ちにするべく、白のドレス制作にかかったのです。
お金と時間をかけた黒のドレスは、別の方にきてもらうとおっしゃっていました。誰ですかね?
白のドレスは、もっと、もっーーと手間暇かけて作ります。
あまりごちゃごちゃしたのはマリアンヌ様は好まれないはずなので、真っ白で質のいい生地に金糸で刺繍を施し、真珠をそれにあわせて縫い付けます。
ちいさなダイヤをちりばめ、輝きをプラス。
いいですねー、我ながらいいですよ。完成が楽しみです。
私は、女の子には優しいですけど・・・。
マリアンヌ様の敵には容赦しませんよ?
私、この王宮神殿社会のせいで敵味方の判別に厳しくなったんですよねぇ・・・。
マリアンヌ様に害なすものは、なんであろうと排除します!
だいたいなんであんなめんどくさいしきたりがあるのかは知りませんけど、鬱陶しいですよねー。
5,60人がくる舞踏会で、ドレスの色がかぶらないことってあります?ていうか主賓と客がかぶったら終わりですよね!
ですのでなんか、打開策として、主賓は夜会前日に、全員のドレスの色がかかれた紙が使いのものより届きます。前日じゃ、間に合わないに決まってるんですけど、一応主賓ですから。
あと、この「ドレスの色かぶったらいけませんよ法」(私命名)にはもう一つのルールがあるそうです。
ドレスのかぶりが減るように。
主賓は、色がかぶっている二人のどちらかに、前日のうちに手紙を送れるんです。今回誰も着ない色のカードを。
送るか送らないかっていうのは主賓の気分しだいなので、かぶっている人はご令嬢のなかでハブられます。主賓に嫌われてるってことですから。
囲みに、このルールができたのは、昔、三十人の女性全員がピンクのドレスで会場に押し掛けたからだそうです。やっぱガッツがありますよね。
主賓は確認に大変、お客は探りあいと主賓のご機嫌伺いに大変、私たちは準備に大変。
いいことないじゃないですか夜会!!
そんなことを考えていると、
「やあ。」
と若い男の声が、窓から。
聞いたことがない声→窓の横は庭園→庭園には入れる人は限られている→限られている人の声は全員知ってる→聞いたことがない声→不審者!!→捕獲!
とっさに持っていた針を声の方向になげ、食器棚のフォークをなげ、包丁とフライパンを持って応戦しようとすると、ものすごく間抜けな声がしたので、ため息をつきます。
「わわわわ、ちょ、まっ、まって!確実に殺ろうとしてるよね!?」
「当たり前です今すぐ逝ってください。」
「逝きたくないです!待ってよー、落ち着こうよー!」
「氏名年齢住所職業出身地、親の名前と小さいころのあだ名を言いなさい。」
「最初はともかく、最後の二個ナニ!?」
「言えないのなら・・・」
「いう言う言う言う言います言います!ぜひとも言わせていただきます!!」
「・・・・。」
なんか、弱そうです。暗殺者とかではなさそうですね。いやいやいや、油断は大敵です。でもでも、ひ弱な感じがします。ああ、でも庭に侵入したのなら実力者?
「名前はティーク!19!神殿に住み込みで働いてる吟遊詩人、出身は・・南の国、親の名前は・・・ラーナだ!小さいころのあだ名は・・・サンフール?」
「サンフール・・太陽の愚者・・。つまり、明るいアホ!」
「いうな!それ言ったらだめ!心が折れちゃうから!」
変なあだ名ですよねー・・・。
私のとおんなじくらい悲惨・・。
「仲間だ!」
「なんでだ!」
おともだちが、できました。