朝のひと時、侍女のおどろき。
「ただいま。」
あ、マリアンヌ様です。
「おかえりなさいませ。」
よっし、完璧なタイミング!ちょうどパンが焼けたところです!
「・・・ルー。」
「なんですか?」
物憂げな御顔で、ぽつりと。
「お腹・・・空いたわ・・・」
えーとですね、今マリアンヌ様は朝食をお召し上がりになられています。ぱくぱく、ぱくぱく。一時たりとも休みません。
「マ、マリアンヌ様・・・。そんなに急がなくても、ご飯は逃げないと思います…。」
おずおずと申し上げると、
「何を言っているの、ルー。おかわりが冷めてしまうじゃないの!」
おかわりすること前提ですか・・・。
マリアンヌ様はよく食べます。すごく食べます。おかわり三杯は軽く食べます。
食べているときのマリアンヌ様は、ものすごーーく幸せそうです。
「おいしーーーい・・・!幸せだわーーー!」
かっ、かわいい!可愛らしすぎますっ!女の子ーって感じです。
ぱくぱく、ぱくぱく・・・。
コンコン。
「姫巫女様。王宮から宰相様が、謁見に来られています。」
「分かったわ。すぐに向かいます。」
きりっとした声で答えるマリアンヌ様は、たとえパンで口をもごもごさせていたとしても、かっこよかったです。あ、むせた。
「ル、ルー!お水お水!ごほごほっ!」
「どうぞ。」
ごくっごくっごくっと一気飲み。
「ふー、死ぬかと思ったわぁーー。」
「え、謁見は・・・。」
「えー、嫌よぉ。人と会うなんて、疲れるもの。」
姫巫女様ーーーーーー!?
「はいはい。ちゃんと行くわよ。」
ほっ。
「一緒に来てね?」
え。なんで。私、一侍女なんですが。
「はぁ・・・。」
姫様は、素晴らしいですが、すっごく素晴らしいですが、人間嫌いでした。
コツ、コツ、コツ。
「謁見の間って、遠いですよね。」
「そうねぇ、遠いわ。」
私は無表情で、姫様は微笑しながら、絨毯を歩いています。
遠い。
足が疲れるんですよね、というか後ろの神官様たちが怖いです。無言って、これだけの距離を無言って。これって私の顔のせいですか。違いますよね、違うといってください!神官様ってもっと優しいんじゃないんですか!。誰か和やかな雰囲気をくれませんか・・・。
しょうがないので、ひそひそと姫様としゃべっていました。
「宰相様って、何の用でしょうか?」
私の記憶によると、いまにもポックリいきそうな、よぼよぼのお爺さんだったと思うんですが。神殿と王宮は対立しているというほどでもないですが仲が悪く、つながりは必要最低限のはず。そうとう大事な用があるはずです。しかも、姫巫女様に用って・・・なんでしょうか。
「うーん、分からないわ。」
ま、そうでしょうなぁ。でもでも、気になります。
謁見の間です。宰相様は・・・っと。
そのとき、ずっしりした声が聞こえてきました。
「姫巫女よ。」
「はい。」
王様ーーーー!!!?
なんでなんで!?宰相様と立会人だけじゃないんですか!?宰相様いないんですけど。王様とフードかぶった見るからに怪しい不審人物しかいないんですけどーーー!?
「このたび、宰相職の人物が変わった。」
えーー。あ、あのお爺さん。天に召されたんですか。それはそれは、お悔やみ申し上げます。で?誰ですかその不審者は!
「まあ、とうとうお逝きになられましたの?」
「違う!引退しただけだ。」
なんだ、そうでしたか、びっくりしちゃいましたよ。で、誰なんですか、その人!あーもう、顔くらい見せたらどうですか!!!
不審者は、バサッとフードをのけ、にっこり笑いました。
そこにあった顔は。
「ナイト=エリアスです。どうぞよろしく。」
知り合いだーーーーーーー!!!!!!